第3章 個別法に関する諸点について
 
  当委員会は、これまで第1次から第5次までの勧告を内閣総理大臣に提出してきたが、それぞれの勧告事項は、政府の作成する地方分権推進計画に反映され、着実に実施に移されるよう、具体的でありかつ実行可能な内容とした。また、そうした観点に立って、個々の事務ごとに、機関委任事務制度の廃止後の事務区分のあり方、国の関与のあり方などを、個別具体的に整理をしている。
  しかし、一部の事務については、国際協定等との関連に加え、制度全体にわたる見直しが近く予定されているため、暫定的に法定受託事務として位置づけ、制度全体の見直しの際、改めて事務区分を行うこととした。また、国の関与のあり方などについて、その取扱いを決定せず、関連する制度全体の見直しの中で検討することとした事務も存する。
  当委員会としては、これまで監視活動の中で、こうした事務に関する政府における検討状況を、制度全体の見直しの内容も含め、関係省庁から聴取し、意見交換を行ってきた。政府においては、基本的には、勧告の趣旨に沿った対応がなされているところであるが、政府において今後さらに適切に対応していただく必要があると考えられる点について、以下意見を述べることとする。
 
T 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正について
 
  当委員会の第4次勧告は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に関し、「国の責任の下で廃棄物の適正処理と施設の円滑な設置を可能とする仕組みの構築に向けて、国は問題解決の前線に立ち率先して解決処理に当たるなど、国の役割や責任の強化を内容とする抜本的な制度改正が遠からず不可避であるように思われる。」との認識に立ち、「廃棄物処理行政における国と都道府県・市町村の間のそれぞれの責任分担を明確化する方向で、この抜本的な制度改正の際に基本的な見直しが行われるべきであり、恒久的な事務区分の整理もこれを踏まえて結論づけられるべきものである。」としたところである。
 
U 漁港法の改正について
 
  当委員会の第2次勧告は、漁港法に関し、「漁港制度は、漁港の指定、漁港の整備計画の策定など国の直接執行事務が多く、また、漁港修築事業に係る大臣許可、維持管理に係る各種の規制など国の関与の度合いが強い体系となっている。」との認識に立ち、「漁港の指定制度(5条)、漁港の整備計画制度(17条)等のあり方については、地方公共団体が漁港の管理者として主体的かつ効率的な整備・維持管理ができることとするとの観点に立って、国民への水産物の安定供給、水産資源の適正管理等の観点にも留意し、水産行政全体のあり方の検討の中で、現行の漁港整備計画の計画期間内に検討し、抜本的に見直すこととする。」としたところである。また、地方分権推進計画においても、「漁港の指定制度、漁港の整備計画制度等のあり方については、地方公共団体が漁港の管理者として主体的かつ効率的な整備・維持管理ができることとするとの観点に立って、国民への水産物の安定供給、水産資源の適正管理等の観点にも留意し、水産行政全体のあり方の検討の中で、平成12年3月までに検討し、抜本的に見直すこととする。」とされている。
  こうした勧告や計画を踏まえ、今回、漁港法の一部が改正され、漁港の指定制度については、原則として、第一種漁港は市町村が指定(自治事務)し、第二種漁港は都道府県が指定(自治事務)することとされるなど、従前の制度に比べてより地方分権の推進の観点に立って制度改正が進められたことは評価に値する。また、農林水産大臣が漁港の整備計画を定めるにあたって、あらかじめ関係地方公共団体の意見を聞かなければならないとされたところである。
  しかし、漁港の整備計画制度のあり方については、昨年12月にとりまとめられた水産基本政策大綱を受けて、公共・非公共の諸事業の一体的・有機的な実施のための事業全体の再編・見直しが行われる中で、地方公共団体がさらに総合的かつ効率的な漁港等の整備・維持管理ができるよう、国は漁港等の整備に係る基本方針と長期の目標及び事業量を定め、個別の漁港の整備計画については漁港管理者である地方公共団体が主体的に定めることとすべきであり、そうした観点に立ち今後適切な時期をみて制度を抜本的に見直すべきである。
 
V 道路運送法の改正について
 
  当委員会の第1次勧告は、地域交通に関し、「過疎地や一部の都市地域などの交通空白地帯において、地方公共団体がバス事業を自ら行う場合又はバス事業者に委託して運行させる場合は、地方公共団体の意向を尊重して、申請どおり直ちに許可することとするとともに、地方運輸局から陸運支局に事務を移管することとする。また、近々、規制緩和の観点から、バス事業そのものの規制のあり方を見直すに際しては、上記の場合の許可制の廃止をも含め検討することとする。」とした。また、地方分権推進計画においても、同趣旨の内容が盛り込まれたところである。このたび、道路運送法の一部改正がなされ、需給調整規制の廃止により事業者間の適正な競争を促進する観点から、道路運送法第4条の一般旅客自動車運送事業の免許制度については許可制に移行(以下「4条許可制度」という。)するなどの措置が講じられた。一方、地域住民の日常生活に必要な交通を確保するため、この法律改正にあわせ、関係地方公共団体、関係事業者、国等からなる地域協議会を開催することにより、生活交通の具体的なあり方について、地方公共団体が中心となって検討を進めていくという新たな枠組みが構築されることとなった。
  上記の勧告や計画に関連する部分としては、道路運送法第80条第1項の有償運送の許可制度(以下「80条許可制度」という。)については制度の廃止は行われず、地域協議会での協議の結果地方公共団体が運行することとなった区間について、当該地方公共団体が最初に運行を開始する際に許可を受ければ、その後の区間の追加について個別の許可を不要とする包括許可制度が新たに導入されることとなっている。
  80条許可制度の廃止が行われなかった理由としては、本来、他人の需要に応じ、自動車を使用して旅客を運送する事業については、道路運送法の4条許可が必要であり、地方公共団体によるバスの運行を80条許可制度により認めてきたという運用は法制度上議論があることから、許可制度自体を廃止したり届出制度にすることは道路運送法上取り得ないことなどがあげられている。
  包括許可制度の導入により、実質的に許可制度の廃止に近い形での取扱いがなされることとなるため、地域協議会での協議の結果を踏まえて、関係地方公共団体がこれまでに比べてより主体的な判断のもとにバスの運行を行うことが可能になったことについては、評価することができる。しかし、80条許可制度の下で法制上の明確な位置づけのないまま運用上包括許可制度をとることは、これまでの運用の法制度上の疑義を依然として残したままの処理にしか過ぎず、また、国と地方公共団体との関係を不透明な行政指導のもとに引き続き位置づけることにもなるものであると言わざるを得ない。
  このような問題点を解決するための法制度上の措置としては、概ね次の3つの手法が考えられる。
 @ 路線を設定して定期的に旅客を運送する行為は、本来80条許可制度の対象ではなく、4条許可の対象事業としてとらえるべきであるという考え方にたち、地方公共団体が交通空白地帯においてバスを運行する場合には、地方公共団体の主体性を尊重するため、届出制度等による規制の弱い新種の事業を4条許可制度の例外として法律上位置づける。
 B @Aいずれかの手法をとることを基本とするものの、このような制度の導入に検討が必要であるとすれば、当面の対応として、今回運用上導入されることとなった包括許可制度を、80条に基づく許可の要件ないし手続として法制上明確に位置づける。
   以上の3案のいずれかによって、今後適切な時期をみて制度を抜本的に見直すべきである。また、その際には地方公共団体がバス事業者に委託してバスを運行させる場合にも同様の制度となるような方向で、制度を見直すべきである。
 
おわりに
 
 地方分権推進法は、5年間の時限法であり、本年7月2日にその期限が到来することとなっていたが、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律が本年4月に施行される一方で、わずか3ヶ月後の7月に地方分権推進法が失効することになると、地方分権推進委員会の監視活動が十分できないこと、また、引き続き検討を要する課題もあること」(地方分権推進法の一部を改正する法律案の提案理由説明)から、このたび地方分権推進法の有効期間が1年延長され、これに伴い、当委員会の任期も1年間延長されることとなった。これを受けて、当委員会としては、延長された期間を活用して、引き続き監視活動に取り組むとともに、必要な課題について検討を行うこととしたい。
 中間報告でも述べたとおり、地方分権は、身のまわりの課題に関する地域住民の自己決定権の拡充を図り、あらゆる階層の住民の共同参画による民主主義の実現を目指すものである。地方分権推進一括法が施行されたが、こうした地方分権の真の目的、理念からすれば、現在は、その出発点に立ったに過ぎないと言わざるを得ない。当委員会がこれまでの勧告において提唱しそして地方分権推進一括法において構築された新しい分権型の行政システムのもとで、各関係者が、地方分権の理念を十分理解し、それぞれの立場において積極的な取り組みを進めることにより、はじめて分権型社会の到来が現実のものとなりうるものと考えている。
 政府と地方公共団体の関係者は、今後とも、国と地方公共団体との対等・協力の関係を築き上げる真摯な努力を続けられることを、また、地域住民の皆様が、地域において積極的に参画されることを強く期待するものである。
 これまでの委員会の活動にあたり、多大なる御協力をいただいた関係者の方々すべてに、心から感謝申し上げるとともに、引き続き地方分権の推進にご理解とご協力を賜るようお願いしたい。当委員会としては、与えられた任務の遂行に全力を傾注していく決意である。
 
 

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