はじめに
 
 当委員会は、地方分権推進法に基づき、政府による地方分権推進計画作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する機関として、またこの地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視する機関として、平成7年7月3日に発足したが、平成10年11月までに5次にわたる勧告を内閣総理大臣に提出した。
 このうち第1次から第4次までの勧告に対応するものとして、平成10年5月に地方分権推進計画が閣議決定され、この計画の内容を踏まえ、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(地方分権推進一括法)がとりまとめられ、本年4月1日から施行されるに至った。
 また、第5次勧告についても、第2次地方分権推進計画が平成11年3月に閣議決定され、その一部は政府の平成12年度予算にも反映されている。
 政府における地方分権推進計画及び第2次地方分権推進計画の作成並びに地方分権推進一括法及びそれに関連する政省令などの作成に当たっては、当委員会において、監視活動の一環として、政府から検討状況などを聴取しつつ意見交換を行ってきた。また、特に、国庫補助負担金の整理合理化と当面の地方税源の充実確保策、法令における条例・規則への委任のあり方、個別法に関する諸点等については、当委員会としての考え方を関係省庁に示しつつ意見交換を重ねてきた。
 これまでの監視活動の結果を踏まえ、現時点において特に政府にお願いをしたい点について、地方分権推進法第10条第2項に基づき、内閣総理大臣に対して意見を述べるものである。
 政府においては、この意見を尊重し、適切に対処されるよう要請するものである。
 
 
 
第1章 国庫補助負担金の整理合理化と当面の地方税源の充実確保策について
 
T 国庫補助負担金の区分の明確化と整理合理化について
 
1 国庫補助負担金については、地方分権推進計画において、当委員会の第2次勧告を踏まえ、「地方公共団体の担う事務について、国が経費の全部又は一部を負担する場合又は補助できる場合は、国庫負担金と国庫補助金の区分を明確にすることが特に重要と考えられる」とした上で、この国庫負担金と国庫補助金の区分に応じて、積極的に整理合理化を進めることとしている。
  この場合、「地方財政法第16条に基づく国庫補助金については、a 国策に伴う国家補償的性格を有するもの、地方税の代替財源の性格を有するもの、b 災害による臨時巨額の財政負担に対するもの、c いったん国において徴収し地方公共団体に交付する形式をとっているが、地方公共団体の事務に付随する収入で地方財源の性格を有するものを除き、原則として廃止・縮減を図っていく」こととしている。
  他方、「負担金としての性格をもつ国庫補助金については、地方財政法第10条、第10条の2又は第10条の3への位置付けを図る」こととするとともに、経常的国庫負担金についてはその対象を真に国が義務的に負担を行うべき分野に限定し、また、建設事業に係る国庫負担金についても国家的プロジェクト等広域的効果を持つ根幹的な事業などに限定することなどとしている。
 平成10年度から平成12年度の予算編成においては、現在施行が停止されている財政構造改革法に基づく区分によって、補助金等のうち制度等の見直しを行うことにより削減又は合理化を図ることとされているもの以外のもの(いわゆる「その他補助金」。平成12年度の地方公共団体向けのものの総額は1,934億円)を削減するという取り組みとなっている。
 こうしたことを踏まえ、平成11年3月26日の第2次地方分権推進計画の決定に当たって発表した地方分権推進委員会メッセージにおいても、「国庫補助金及び国庫負担金の区分について、関係省庁間で十分な調整を行い、平成12年度予算編成作業の過程でその明確化を図るとともに、必要な措置を講じられたいこと。」を指摘したところである。
 
2 当委員会は、その後も政府に対して、国庫補助負担金の整理合理化の前提となる国庫負担金と国庫補助金の区分の作業を急ぐように要請してきたが、今般、政府においては、関係省庁間の調整を経てその取りまとめを行ったところであり、その調整状況について、当委員会としても報告を受けた。
  その内容は、全ての国庫補助負担金について、その位置付けについて改めて検討を行い、国庫負担金と国庫補助金を区分しようとするものであり、当委員会としては、その基本的な考え方を是とするとともに、一部未調整と報告されたもの(注)についても第2次勧告を踏まえ当委員会として検討を行い、別紙1〜3のとおり国庫負担金と国庫補助金を区分すべきものと考える。
 
(注) 「一部未調整と報告されたもの」については、所管省庁は、政策的にも必要であり、その性格上も、基本的には国庫負担金として区分・整理されるべきとしているが、当委員会としては、国庫補助金と判断するものである。なお、これらの国庫補助金については、法令の整備の目処が示されれば、その時点において区分について検討すべきものが含まれている。
 
3 政府においては、この国庫負担金と国庫補助金の区分を適切な方法で明記するとともに、その区分に応じて地方財政法や関係法令の規定等の必要な整理を速やかに行うべきである。
 
4 また、国庫補助負担金全般について、第2次勧告の趣旨に沿って、この国庫負担金と国庫補助金の区分に応じた整理合理化を平成13年度予算編成から積極的に進めるべきである。
  このうち、国庫補助金として区分されたものについては、第2次勧告において既に述べたとおり、a 国策に伴う国家補償的性格を有するもの、地方税の代替財源の性格を有するもの、b 災害による臨時巨額の財政負担に対するもの、c いったん国において徴収し地方公共団体に交付する形式をとっているが、地方公共団体の事務に付随する収入で地方財源の性格を有するものを除き、原則として廃止・縮減を図ることとすべきである。
  また、第2次勧告及び地方分権推進計画に基づいて、制度的に検討すべきものを除いた国庫補助金を対象とした国庫補助金削減計画を策定し、一定期間、各年度の国庫補助金の削減率を定めることにより、国庫補助金の廃止・縮減を行うとともに、国庫補助金の総件数についても、これに準じて縮減を図るべきである。
  この場合における制度的に検討すべき国庫補助金の範囲については、当委員会の第2次勧告の趣旨等を十分に踏まえ、必要最小限度のものにすべきである。なお、統合補助金及び地方道路整備臨時交付金については、第5次勧告及び第2次地方分権推進計画において、それぞれ基本的な性格・仕組み及び運用改善のあり方が明記されているところであるので、その趣旨に沿った運用の徹底を図るべきである。
 
U 維持管理費に係る国直轄事業負担金の見直しについて
 
1 維持管理費に係る国直轄事業負担金については、地方分権推進計画において、当委員会の第2次勧告を踏まえ、「同種の地方公共団体の行う事業に対する国の負担との均衡、建設事業費と維持管理費の均衡、維持管理の形態、地域の受益と広域的効果等を総合的に勘案し、段階的縮減を含め見直しを行う」こととされ、また、第2次地方分権推進計画においても、第5次勧告を踏まえ、「段階的縮減を含め見直しを行う」こととされている。
  
2 これまでのところ、こうした地方分権推進計画及び第2次地方分権推進計画に基づいた具体的な取り組みが十分に行われているようには見えないので、政府においては、維持管理費に係る国直轄事業負担金の段階的縮減を含めた見直しについて、上記の計画に述べられた諸観点等を総合的に勘案して、積極的に具体的な見直しに取り組むべきである。
  また、見直しの状況については、負担金の内容とともに、積極的に公開していくべきである。
 
V 国庫補助負担金の運用等についての改革措置について
 
1 地方分権推進計画においては、当委員会の第2次勧告を踏まえ、「各省庁は所管する国庫補助負担金の予算の適正執行について所要の点検を行うのみではなく、運用・関与の在り方についての総点検や目的の達成状況、効果、超過負担の実態調査等を適時に行い、これに基づき具体的な改革措置を講ずる仕組みとする」こととされている。
 
2 従来から関係省庁においては、超過負担の解消のため毎年度いくつかの補助金等について共同実態調査を行い、その結果に基づき必要な措置を講じるなどの努力を行っているが、各省庁自らがそれぞれ所管する国庫補助負担金の運用等の実態を把握し、早急に具体的な改革措置を講じる仕組みとすべきである。
 
W 法人事業税への外形標準課税の導入について
 
1 地方税に関し、地方分権推進計画は、当委員会の第2次勧告を踏まえ、「生活者重視という時代の動向、所得・消費・資産等の間における均衡がとれた国・地方を通じる税体系のあり方等を踏まえつつ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築について検討する」とし、こうした観点から、「平成10年度においては、事業税の外形標準課税の課題を中心に、地方の法人課税について総合的な検討を進める」としている。また、この法人事業税への外形標準課税の導入問題については、政府税制調査会の平成12年度の税制改正審議においても議論され、年度答申では「外形標準課税の導入は、地方税のあり方として望ましい方向の改革であり、景気の状況等を踏まえつつ、できるだけ早期にその導入を図ることが望ましい」とされた。さらに、平成12年7月に同調査会がまとめた「わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択−」(いわゆる「中期答申」)においては「景気の状況等を踏まえつつ、早期に導入を図ることが必要」とされている。
 
2 地方分権の時代における地方税制は、住民の受益と負担の対応関係が明確で、地方公共団体の財政面での自立性・自主性の基盤として必要な税収が確保されるだけでなく、地方公共団体が地域における住民の日常生活や産業活動を支える公共サービスを安定的に提供する必要があるため、できる限り安定的で税収変動が少ないものであることが望まれる。
  このような観点から、我が国の地方税制を見れば、市町村税においては、最大税目の固定資産税が、応益原則に基づき、自立性・自主性に富む、安定性にも優れた独自税源として存在している。これに対して、都道府県税においては、その最大税目は法人事業税であるが、法人事業税は、原則として国税である法人税の課税標準に準拠した法人の所得を課税標準としており、その税収は景気変動の影響を受けやすく極めて不安定な状況となっている。このことが都道府県の財政運営に少なからぬ影響を与えている。
  このような観点から、法人事業税に外形標準課税を導入し、税収の安定化を図るとともに、都道府県の基幹税においても自主性を高めることは、地方分権を推進する上で極めて重要な課題である。
  また、外形標準課税の導入は、地方公共団体が産業の振興のみならず人的サービスなどの多様な行政サービスを提供し、地域の経済活動の活性化を図り、その成果、すなわち経済活動量の増加に応じて安定的に税収が増加するという関係を構築していく観点からも期待できる改革である。さらに、外形標準課税は、応益課税としての税の性格の明確化につながるとともに、地方公共団体の提供する行政サービスによって受益を得ている法人が薄く広く税を分担することを通じて、税負担の公平化につながることとなる。納税者から見ても、経営努力等により利益のあがっている企業の事業税負担が相対的に軽減され、法人全体で薄く広く税負担を分かち合うことにつながることから、より多くの利益をあげることを目指した事業活動を促し、経済の活性化、経済構造改革にも資するものである。
 
3 このように、法人事業税への外形標準課税の導入は、地方税のあり方として望ましい方向の改革であり、具体的な課税の仕組みや外形標準課税の導入に伴う税負担の変動、中小法人の取扱いなど導入に当たっての諸課題等について、具体的な検討を進め、景気の状況等を踏まえつつ、早期に導入を図ることが必要である。
  なお、各都道府県ごとに独自の対象業種や課税標準を設定して外形標準課税の導入を図った場合には、企業活動に対する税制のあり方等の面で問題もあることから、外形標準課税の導入は、地方税法を改正し、全ての都道府県において共通に実施することが適当である。その場合、地方分権の進展を踏まえ、行政サービスの受益と負担との関係を各地方公共団体において判断し地方公共団体が自主的・主体的に行財政運営を行うことが必要であることから、各都道府県が法律に定められた標準税率に一定の範囲で税率を上乗せできる仕組みとすることが適当である。
 
 
 
 
第2章 法令における条例・規則への委任のあり方について
 
1 現在、法令においては、その具体的な内容等の一部を地方公共団体の法規等に委任し、地方公共団体の判断に委ねているものが存在する。その形式としては、   
  ア 地方公共団体の条例に委任しているもの
  イ 地方公共団体の規則に委任しているもの
  ウ 「‥については都道府県知事が定める」等のように、法形式を特定せず地方公共団体の執行機関に委任しているもの
 等様々な事例が見られる。
  これらの中には、機関委任事務であることを理由として条例に委任せず、規則や執行機関に委任することとしたものもあると考えられるが、機関委任事務制度の廃止に伴い、規則や執行機関に委任することの合理性を改めて検討する必要がある。
  また、改正地方自治法第14条第2項では、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定しているが、この「法令に特別の定めがある場合」が立法論としてどのような場合を想定しているのか、必ずしも十分な整理がなされていないのではないかと考えられる。                   
  当委員会としては、このような問題意識に基づき、政府に対し、各個別法において地方公共団体の規則等に委任している事例について見直しを行う必要があるのではないかという問題提起を昨年11月に行ったところである。
 
2 当委員会の問題提起を踏まえ、政府においては、内閣内政審議室が中心となって地方分権推進連路会議の場等を通じ、今回の立法論に関する考え方について各省庁の合意を取りまとめ、これについて、当委員会としても報告を受けた。
  政府の基本的な考え方の主要な点は、別紙4のとおりである。その内容は、個別の法令により権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方公共団体の法規に委任する場合にも、規則等ではなく条例に委任することを原則とし、例外を機動性という観点から規則等に委任することに合理性がある場合等に限定しているものとなっている。
  また、政府においては、この考え方に基づき、所要の法令改正作業を進めるとのことであり、当委員会は、この政府において取りまとめた考え方を基本的には是とするところである。
  なお、「都道府県公安委員会の規則等への委任については、公安委員会制度のあり方にも関わることから、別途検討するものとする。」とされているところであるが、個別の法令により権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方公共団体の法規に委任する場合には、規則等ではなく条例に委任することを原則とするとの考え方を十分に尊重すべきである。
 
3 当委員会としては、政府において取りまとめた基本的な考え方に基づく所要の法令改正を速やかに行うべきであると考えている。政府は、平成13年の通常国会に所要の法律案を提出することを基本として改正作業に取り組まれたい。また、この法令改正に当たっては、できる限り−括化し、網羅的に行うべきである。
  この法令改正を受けて、地方公共団体は条例制定作業を行うことになるが、その際には、十分な準備期間を置くとともに、適時、適切な情報提供を行うべきである。  

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