この「議事録概要」は自治日報紙(平成11年7月30日号)に掲載されたものです。
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【締め括り総括審議】(6月10日衆議院行政改革特別委員会)
山口俊一氏(自民) 法定受託事務の定義に、国民の利便性・事務処理の効率性の文言がなくなり、国の適正処理の確保という文言が加わった。これで関与が強まるのではないか。
野田自治相 「国民の利便性」等は、分権推進委での(機関委任事務廃止後の)国と地方の事務の振り分け作業に必要な基準だったが、地方団体の処理が決まったので、今回の定義から外れた。一方、「国の適正処理」等は、法定受託事務の適正処理の確保について、国は自治事務に比べより高い責任と関心を有するという性格を表現したもの。定義の文言の変更で国の関与が強くなるという批判は当たらない。
山口氏 自治事務に対する是正の要求の規定を設ける趣旨は。
野田自治相 自治事務の処理が法令に違反し著しく適正な執行を欠き、かつ明らかに公益を害している場合、本来、地方団体自ら改善すべきだが、是正されず放置することで自治体の行財政の運営が混乱・停滞し、著しい支障が生じた場合、国は放置できず実行性ある措置を講ずる必要がある。自治事務の関与を考慮し、是正改善の具体的措置内容は地方団体の裁量に委ねるなど必要最小限とする。是正の要求に不服がある地方団体は係争処理手続で争うこともできる。
山口氏 今後の地方分権の推進について総理の決意を改めて伺う。
小渕首相 今後も地方分権推進計画等を踏まえた事務・権限の移譲や地方税財源の充実確保に積極的に取組みたい。法案成立の暁には、ぜひ地方も自ら立つという精神を持ち、国と地方も横・協力の関係を持って、ともに国の発展に寄与してほしい。
岩國哲人氏(民主) 地方分権の推進にはインフラ整備を首長等の手に委ね、国会議員の数で東京と島根の格差を埋める時代を終わらせねばならない。法案では、財源を渡す項目は見えず、依然、中央が金で地方をコントロールする構図が残っている。
小渕首相 地方団体の財政基盤の充実強化は重要だ。今後、分権推進計画を踏まえ、政府の対応を検討する。ただ、自主財源だけで運営すると、日本全国に格差がある。交付税制度は大きな役割を果たしており、そのよき点は残していかねばならない。
岩國氏 (財政危機宣言するなど)東京、神奈川、大阪は、まさにTKO。こういう状況に地方財政は置かれているが、(法案には)財源的手当て、見直し期間さえ書いない。一方、産業界には公的資金投入が報道されている。自治体に対する公的資金投入の方が先ではないか。
宮沢蔵相 地方分権推進計画に、国と地方の税源配分のあり方検討を言っている。これは政府の方針だ。他方、国税収入は異常事態にある。したがって、日本経済が正常な軌道に入ったら、直ちにこの問題には取り組まねばならない。
中桐伸五氏(民主) 法定受託事務の限定化、法定受託事務に係る処理基準の一般的基準化、自治事務に対する代執行について、総理の見解を。
小渕首相 法定受託事務は将来にわたって厳に抑制すべきと考える。法定受託事務に係る処理基準も一般的な基準として定めるもので、新たな事務の義務づけや関与を定めるものではない。今後の法令立案に当たり自治事務に対する代執行の規定を設けることは考えていない。
中桐氏 地方分権の重要な課題が税財源の地方移譲との認識について。
小渕首相 経済状況や国、地方の財政状況を踏まえ、将来の税制の抜本的改革の方向を見極めつつ総合的に検討すべきものと考える。
中桐氏 国と地方の税財源の配分を見直す場合、中央に集めたものを分散する集権的分配システムを抜本的に見直す必要がある。
野田自治相 地方税で賄えるのが一番理想であり、今後、税源の偏在性の少ない課税の仕組みを考えねばならない。それにしても、自治体間の財源調整という交付税の仕組みは必要不可欠だ。それが結果として、指摘のような入りと出の間のアンバランスに現れている。かけ離れた姿にならないよう歳入面で担保できる努力をしたい。
中桐氏 地方事務官の国への身分切り換えでは、国民年金の適用促進の事務停滞でサービス低下が指摘されている。市町村の法定受託事務にすべきだ。
宮下厚相 市町村の事務軽減、分権推進委第三次勧告で廃止するとされたので法定受託事務は適当ではなく、市町村の同意を得にくい。今後とも市町村との十分な連携協力のもとに進めたい。
中桐氏 国地方係争処理委員会には、係争ケースは多発するとは思えない。一番係争が起こるのは国が都道府県に指示し、都道府県がその指示を市町村に指示するケースだ。この係争を処理する自治紛争処理委員は事案が発生したときに自治大臣が任命するが、設置場所はどこか。また、会合はどこで開催されるのか。
野田自治相 (設置場所は)自治省となる。具体的な場所の選定は自治紛争処理委員の裁量に委ねられ、事安によっては当事者である都道府県・市町村の区域で審査が行われることもありうる。
中桐氏 国が都道府県を通じて指示を出し、その是正の指示が係争ケースになった場合には国の関与がそのもとにあることをまず確認したい。
野田自治相 国から都道府県に対する指示について、都道府県が問題だということなら、この段階で係争処理機関にかけてもらう。その上で、その行為を都道府県がやるということは、自らの主体的な意思決定行為だから、都道府県から市町村に対する関与がもう一つ自治紛争処理委員に委ねられていくという手順になる。
中桐氏 それは違う。国の指示が実際上市町村に行ったところで相互の利害対立、意見の違いが出てくる。その前に都道府県で、市町村が利害関係でそごを起こす可能性があることを見越して国との関係で係争する、これは現実の係争ケースとしてはひねり過ぎの答弁だ。
野田自治相 そのようなこともあろうかということで、委員の構成を過半数が同一の政党その他の政治団体に属すことがないようにする、あるいは積極的政治活動を禁止するなど国地方係争処理委員会の委員に関する規定を準用している。
中桐氏 委員の選び方に疑義があるわけではない。係争が起こってから事案ごとに委員を任命するが、委員を任命する自治大臣が関与する場合もあるわけで、自治大臣が任命した委員に事情聴取を受けに自治大臣が呼ばれる。この点で、承服できない。
野田自治相 ありうる話しかもしれないが、実際問題、私は、そういうような紛争になることを自治省の仕事の中で想定できない。都道府県の市町村に対する関与の争いは、国が関与する争いと違い、地域の実情が反映されるケースが圧倒的に多いのではないか。それから、都道府県の関与の機会は国の関与より多く、あらかじめ特定できない。それに機動的に対応できるよう、事案ごとに適任者を委員に選任する形をとった。迅速な係争の解決が地域として要請されており、委員を国会に諮らねば任命できないことでは仕事が停滞する。
若松譲維氏(公明) 法定受託事務は、社会経済情勢の変化に即応して事務区分を見直す、また新規事務は極力自治事務とし法定受託事務は抑制すべきだが。
野田自治相 法定受託事務は厳に抑制すべきと考える。また、今回の事務区分は適切と考えるが、見直しは不断に行われるべきで、今後、当然ありうる。
若松氏 地方への権限移譲には、対応した税財源を移譲すべきだ。
野田自治相 今後、地方分権推進計画を踏まえ、税源の偏在が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築に努める、国税からの税源移譲も検討する。
宮沢蔵相 我が国の経済成長が回復軌道に乗ったら、徹底的に地方行財政への再配分をしなければならない。そのときは、戦後最大の抜本的な再検討になるのではないか。
若松氏 自治事務に対する是正の要求が法的に認められているが、発動は基本的にあってはいけない。
野田自治相 そのとおりだが、異例のケースとして、違法な事務処理が行われ、その事態が放置され是正されない場合、自治事務といえども、明らかに公益を害し放置を認めるわけにはいかない場合に初めて、例外的な形で国が自治体に対して是正の要求を行う。その場合でも、関与の仕方は個々具体的なケースではなく、一般的なできるだけ具体的処理は自治体自身に委ねる形を考えている。
若松氏 分権推進法が平成一二年七月に失効するが、その後の地方分権推進体制をどうする。
野田自治相 来年七月の存置期間までは分権推進委員会の活動を見守るべきと考える。期限切れ後の体制は、その時点の状況を踏まえ判断すべきと考える。
若松氏 社会保険関係の地方事務官について、将来の手当てを確保するため、独自の共済組合設立を認めることが必要ではないか。
宮下厚相 独自の共済組合設立も考えられる。
若松氏 (地方事務官が)今後も都道府県の職員組合に加入し役員を担うことができないか。これは切実な要望でもある。
野田自治相 一万三千人が地方公務員法上の職員団体に加入している。円滑な制度移行、現在の組合運営に及ぼす影響等から、現在、与野党間で経過措置について検討中と承知している。
若松氏 法案では行政書士会会則の必要的記載事項の報酬規定を削除するが、九八士業等の公的資格制度の規制緩和とあわせ検討すべきではないか。
野田自治相 行革推進本部の規制改革委員会での議論の動向を踏まえ対処したい。
若松氏 二一世紀の地方自治のあり方として、道州制議論もあるが、基礎的自治体をミニ政令市にすると多くて千以下。すると都道府県は一層に近い調整機能となる。この一層方式がこれからの自治体のあるべき姿と思うが。
堺屋経企庁長官 経済戦略会議に出されている二〇一〇年のあるべき姿の中で、道州制、府県合併も視野にいれて議論していくが、現段階ではまず市町村合併が先行すべきではないか。
野田自治相 いずれ都道府県の合併も中長期的に検討すべきことは分権推進委員会でも議論いただいたが、当面、国と地方の行政の簡素効率化、自治体自身が自主性、自立性を高めるためにも市町村合併の推進を急ぐべきではないか。
若松氏 先日の地方公聴会では、市町村合併は地元に任せてくれとの意見だが、合併をさらに推進する施策について。
野田自治相 一括法案に合併特例法案を盛り込んでいるが、都道府県の協力・指導が平行して行われないと現実には進まない。(法案成立後)できるだけ早期に都道府県に市町村合併のガイドラインを示し、具体的な対応をお願いしていきたい。
堺屋経企庁長官 市町村は明治の約三万が(昭和の)戦前は一万二千になり、戦後は三千六百に減った歴史をみると、何らかの機能・仕事ができたときに市町村が合併している。終戦直後の減少は新制中学校をつくることと関係があったが、今度の分権法で、今までの行政の一部がNPOとかコミュニティーの世界に戻り、国のやっていたことが地方に行く、その中で市町村合併が進むのではないか。県は百年続いているが、その合併・道州制も視野にいれて検討すべき時期が近づいているのではないか。
春名真章氏(共産) 自治事務に各大臣が是正要求を出すことができる、個別法での代執行が地方自治法の一般ルールで入っている。削除してほしい。
小渕首相 自治体が違法に事務処理を行い、行財政運営が混乱し著しい障害が生じている場合、国が関与し、適正・円滑な行財政運営を維持するための実効性ある措置を講ずることが必要と考えた。なお、自治事務の中で代執行の対象となる事務はなく、今後も、法令立案に当たり代執行の規定を設けることは考えていない。
春名氏 自治事務の中で代執行の対象となる事務はなく今後もないと明言しているが、個別法には代執行規定がある。どちらが本当か。
野田自治相 代執行ではなく、直接執行、並行権限の行使の話しではないか。
春名氏 自治事務として新しくなるのに、個別法の中に並行権限、直接執行をそのまま残していいのか。減らす努力をすべきだ。
野田自治相 「自治事務に関し、国民の利益を保護する緊急の必要がある場合、国は、法の定めにより、直接事務を執行できる」というのが地方分権推進委の勧告で、それに即して整理した。具体的には、教員免許状の大臣権限の行使を削除するなど、必要な見直しはされている。
春名氏 国民の生命や安全を守る上で緊急やむを得ない場合は理解できるが、(建築基準法一七条では)国の利害に重大な関係がある建築物に関し指示し、従わなければ措置できるとの規定が入っている。この条文で住民の利害という中身がない。国の利害だということで、建設大臣が判断し、原発や防衛施設で住民が反対して大変で、自治体に言って措置しない事態になったとき、直接執行の道が開かれるのではないか。
関谷建設相 国の利害に関係することは国民の利害に直結、表裏一体のことと認識している。それと、国の直接執行が多くなり過ぎるとの考えがあるようだが、そのような部分はごくわずかだ。
春名氏 自治事務だが、自治体が言うことを聞いてくれないと直接やる、その中身が国の利害に重大な影響を及ぼすという規定で住民利害は何もない。
野田自治相 自治事務であることを大義名分に法令違反の状態を正当化することは許されない。建築基準法の問題も、都道府県・市町村の建築主事の処分が法令に違反している場合というのが大前提であり、いきなりなされるものではない。
春名氏 生活保護担当の現業員の充足率が減っているが、必置規制が見直され標準化すると、定員充足の努力が放棄される懸念がある。
宮下厚相 必置規制の最低の配置基準緩和は、弾力性を確保することで、手厚く福祉事務所で生活保護世帯にアプローチしたい点はいささかも変わっていない。
畠山健治郎氏(社民) 自治大臣は、国の関与で非常事態には国は何らかの助言・勧告の道があったほうがいいとの発言があったが、ガイドラインや有事立法を想定した発言とも受け取れるが。
野田自治相 (自治体の)事務処理が法令に違反しているときや、自治体が自律的に是正できないような異常な事態が発生した場合、これは異常事態・緊急事態と申し上げたので、ガイドラインの緊急事態とは違う。
畠山氏 機関委任事務が増大の一途をたどっているが、法定受託事務も同様な歴史をたどる可能性がある。今後、法の制定・改正で法定受託事務の増大をどう抑制する。今後、二〜三年ごとに定期的に見直しする必要もある。
野田自治相 法定受託事務の創設は厳に抑制されるべきと考える。法定受託事務の定義を明確にしたほか、国会審議の参考に資するため地方自治法別表に網羅的に掲げることにした。事務区分の見直しは不断に行われるべきで、常にチェックすべき必要性はある。
畠山氏 今後、地方分権の状況を定期的に国民に明らかにする必要がある。地方分権白書を毎年策定・公表すべきではないか。
小渕首相 地方団体に適切に情報提供することは地方分権推進の上で意義があり、今後検討すべき課題と考える。
野田自治相 意義あることと考えており、十分検討させていただく。
畠山氏 今後の分権を展望した場合、地方税財源の強化のための改革プログラムを示さなければ地方分権の基本的基盤は整ったといえない。いつ示すのか。
宮沢蔵相 非常に急ぐ課題ではあるが、今の経済の異常な状況では将来がつかめないので、つかめるようになったら直ちにしたい。
畠山氏 地方自治体の基本的原理と制度的原則を定め、地方自治の本旨を明示する地方自治基本法の制定を検討すべきではないか。
小渕首相 現行の地方自治法は、まさに地方自治に関する基本的法律であると考えている。地方自治法の内容を充実することが、地方団体の健全な発展を保障することにつながる。

高鳥委員長 これにて本案の質疑は終局した。これより原案・修正案を一括して討論に付す。
三沢淳氏(自由) 自民党、自由党を代表し賛成討論する。機関委任事務制度の廃止、関与の抜本的見直しは国と地方団体を対等関係にし、権限移譲は分権の理念に即したもの。市町村合併など地方行政体制の整備は分権推進に必要不可欠な内容だ。法案は分権推進の第一歩を踏み出したと評価できる。
藤田幸久氏(民主) 賛成討論する。基本的枠組みは評価するが、問題点も少なくない。審議で法定受託事務新設の抑制、代執行もどきの直接執行制度の歯止め、税財源移譲も経済状況が正常化した暁に再配分にとりかかるとの総理の決意表明をいただけた。この意味で、本日合意した五会派共同修正による附則追加の意義は大である。
佐藤茂樹氏(公明) 公明党・改革クラブを代表して賛成討論する。法案は分権推進に不十分だが、新たにできる法定受託事務も抑制する方向が示され、自治事務に対する是正の要求発動には自治体の自主性・自立性配慮が確認された。さらに地方税財源の充実確保に必要な措置を行うことが確認された。社会保険の事務処理体制・職員の安定確保も図られた。
平賀高成氏(共産) 反対討論する。自治事務に対し是正の要求という権力的関与を法定化し、戦争に国民と自治体を動員する仕組みがつくられようとしている。統制手段である通達行政も温存され、地方交付税、補助金による財政面での統制の仕組みに何ら手がつけられていない。必置規制の緩和、強制的合併推進、議員定数削減の押しつけは地方自治を形骸化する。政府案は分権どころか地方統制法だ。
畠山健治郎氏(社民) 賛成討論する。機関委任事務制度の廃止は評価するが、自治事務に対する国の関与、議員定数上限制、住民投票制の消極的態度、地方税財源の不十分性、中央主導色の強い市町村合併など今後に大きな課題も残した。とはいえ、法案は地方分権推進の一里塚、地方分権の始まりの始まりとしなければならない。
高鳥委員長 これにて討論は終局した。これより採決に入る。起立多数。よって本案は修正議決すべきものと決した。