この「議事録概要」は自治日報紙(平成11年7月9日号)に掲載されたものです。
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【参考人質疑】(5月28日衆議院行政改革特別委員会)
高島委員長 参考人各位から意見を述べさせていただき質疑したい。
諸井虔氏(地方分権推進委員会委員長) 地方分権は明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革との認識のもと、国と自治体とを上下・主従関係に置いてきた中央集権型行政システムを改革し、国と自治体とを対等・協力の新しい関係に転換させることが最大の課題と判断。まず中央集権型行政システムの中核をなしてきた機関委任事務制度の廃止を勧告、また新しい国と地方の関係確立のため、自治体に対する国の関与について法定主義の原則等を明らかにするとともに、国・地方との間の係争処理の仕組み創設などを勧告した。法案は、勧告の趣旨に沿ったものと評価する。
明治以来の我が国の中央集権型行政システムの変革は世紀転換期の大事業だが、一括法案が一日も早く成立するようお願いする。
北村喜宣氏(横浜国大助教授) 一括法案は、憲法で保障された地方自治の本格的実現のための法案審議との認識が必要だ。改正自治法案では、二条に立法・解釈の基本理念を規定しているが、重要な規定であり一条に位置づける必要がある。法定受託事務のメルクマールは法律レベルで対応すべきであり、また今後の立法で法定受託事務が乱造されないよう法的歯止めが必要だ。自治事務に対する条例も余地を拡大すべきで、自治体の独自判断で追加・削除できることを法律に書くといい。自治体担当者は、条例がどこまでできるか、できないか、おっかなびっくりが現状だ。
自治事務に国が是正要求するのは勝手だが、それに従うべき義務を明示的に法律で書いてあるのは行き過ぎだ。たとえ規定する必要があっても、要件はより厳格に考えられなければならない。
坂田期雄氏(西九州大教授) 機関委任事務の廃止は画期的だが、これで地方分権が進むのかというと、変わらないのではないか。というのは、現在、地方は法令・制度面と同時に、何千という国庫補助金で縛られているからだ。補助金の配分は、中央省庁の担当者のさじ加減で決まる。これが大きな権力の基になる。上下・主従関係を生むのはこの補助金だ。補助金にメスを入れ、将来、国から地方に税源を移譲し、補助金を廃止するという大改革が行われて、初めて機関委任事務の廃止の改革は生きてくる。
今回の改革では、受け手である市町村・住民が盛り上がっていない。これは、分権推進委に枠がはめられ、国からまず府県に分権を図る、市町村が主役からはずされ白けたのではないか。また、国民からは国と県との権限争いにしか見えない。そこで、今後は、住民に身近な市町村に権限・財源を与え、住民との間でサービスと負担のシステムをこしらえ、住民がチェックする、こういう地方分権の全体像を国民に示す必要がある。それから、地方分権を進めるには政治の強いリーダーシップが絶対必要だ。
白藤博行氏(専修大教授) 自治法改正案の第一条の国と自治体の役割分担だが、「住民に身近な」が取られており、市町村優先の原則に配慮しない形での改正かと思う。また、法定受託事務の定義だが、勧告までの国民の利便性配慮の定義に比べ、国が自由に定められる印象を受ける。条例制定が法定受託事務にも可能となったのは評価するが、条例制定を禁じない限り条例制定を広く認める法解釈が可能であればと思う。
自治事務に代執行が許される規定になっているほか、都市計画法では自治事務にしながら同意を要する協議という権力的関与と変わらない関与が残ってる。最大の問題は、是正要求という関与が法制化されたこと。しかも、内閣総理大臣だけだったが、今回の法案では「各大臣」となっている。もう一つ、国の利害に重大な関係がある建築物に関し必要があると認めるときは直接執行までいく。国の関与縮減との関係でいかかがなものか。国・地方間の係争処理は評価するが、審査の申し出をするか直接裁判所へ行くかは自治体の自己判断にゆだねるべきだ。
砂田圭祐氏(自民) 首長がそれぞれ力を持つが、恐ろしい部分がある。その抑止力をどう考えるか。
諸井氏 そういう問題がこれから発生する可能性は否定できない。だからといって、中央省庁がすべてを指揮監督することが正しいのか。地方は住民に近いわけで、住民が監視し注文をつける形になりやすい。住民が行政に参加する形で、地方行政は透明、公正になりやすい。
砂田氏 自治事務に対する国の関与、是正要求の必要性については。
諸井氏 国の包括的指揮監督権をなくしたので、その後、国が法令違反と考えた場合、なんら打つ手がないのでは不十分だ。今回、国の是正措置要求に不満があれば、自治体は係争処理委・裁判に持っていけるなど、唯々諾々と従わねばならぬ従来とは大変違っているのではないか。
北村氏 瑣末なことをやる役人的関与ではなく、建設的な関与であるべきだ。
坂田氏 市町村職員は、国のマニュアルに従ってやることに慣れているのが実態。市町村職員の意識改革が行われ、まず自分たちで考えてやろうという芽を出していくことが必要だ。
白藤氏 自治法で関与が法定化されることは望ましいが、その際、自治権を踏まえた上での法定でなければ、形式的法定主義となる。
伊藤忠治氏(民主) 分権は、権限と財源と人間が三点セットでおりないと実らない。現在の(国・地方の)税収割合を一対一に変えてはどうか。
諸井氏 仕事は二対一で、税収は逆に一対二というアンバランスは、やはり中長期的にみたら改善すべき問題だろう。
桝屋敬悟氏(公明) 今回の法改正を実効あらしめるには坂田参考人のように次なる課題にすぐ着手すべきだが、所見を。
坂田氏 一たん国に入って地方へお金が来る。このお金を配る、お金をもらうところで上下・主従関係が生じる。今後の方向としては、地方が使う財源は最初から地方に与え、補助金は将来なくす。これは強い抵抗があり、一挙にできないが、それが今後の地方分権の一番の基本だ。
桝屋氏 市町村合併については。
坂田氏 地方分権を進めるには、受け皿となる市町村が小さいままでは中央、国民の理解も進められない。合併はぜひ必要だ。合併すれば財政その他でメリットを与えるような格好で国が誘導していく。力で上から合併をすべきではないが。
桝屋氏 これからの国と地方の関係は、わがままな自治体がでるかもしれない、しかし心配して余り国は関与してもらいたくない。このバランスをどうするか。
諸井氏 まだ体制が整っていないと言っていると、いつまでたっても進まないので、多少のことがあっても、やはり(身の回りのことは地方に持っていく)方向へ進めていくことが基本だ。係争処理委員会に地方の不満、異議が申し立てられ世の中に伝わる。最終的には、国民が両方の主張を見て、これは国がやり過ぎだ、地方がエゴではないかという議論がおこり、落ちつくところに落ちつくのではないか。 
桝屋氏 係争処理がどれくらい出てくるか分からないが、国の行政機関として置かれること自体に非中立性を感じざるを得ない。
北村氏 中立性確保は大事だが、パートナーシップはトラブルを一つ一つ克服してこそできるもの。むしろ恐れるのは、係争処理をさせないような形でことが進むことだ。
春名真章氏(共産) 現行の総理の是正措置要求の解釈と、改正自治法の中に一般的な関与として各大臣が是正要求できることについて。
白藤氏 現行の総理の措置要求は、非権力的関与の一態様と了解している。是正の要求が違法に行われたとき、国と自治体が対等で、かつ関与が非権力的関与なら、それに従うか従わないかは自治体の自由裁量に任されるべきだ。今回、違法な是正要求だと自治体が考えた場合、まず文句があるなら係争処理委員会に申し出なさい、その勧告に不満なら裁判で決着つける仕組みができた。ということは、行政事件訴訟の取消訴訟と同じように、決着がつくまでは是正要求があたかも適法かのような様相を呈して一人歩きする可能性がある。これまでの総理大臣の措置要求とは異なるレベルでの権力性が付与されている。各大臣に広がったが、地方自治法に直接基づいて関与できる仕組みになった点を見逃してはいけない。
北村氏 問題は関与できる場合をどう考えるかだ。国が要求、指示する場合の、真に要件に合致しているかという立証責任、国の方でしっかり説明する義務がある。
春名氏 今回の法改正で自治体への通達行政は改善するか。
白藤氏 法定受託事務に関しては、通達行政を排除するため処理基準によることとなったが、条文上、全くフリーハンドに近い形で処理基準の制定権が与えられてしまう。結局、通達の内容がそのまま処理基準にゆくとしか理解できない。もう少し法的な統制、法的基準がない限り、通達行政と同じ効果を持ちうる危険がある。
春名氏 地方事務官問題で、勧告は国の直接執行事務としたが、その理由は。
諸井氏 保険や職業紹介も、現時点では本来国が処理するのがよいのではないか。
春名氏 今後、どう税財源の移譲をすすめるべきか。
坂田氏 国税から地方税へ移して地方税の比重を高め、相まって補助金を廃止することだが、政治の力ですすめなければできない。
畠山健治郎氏(社民) 法定受託事務の概念が拡大している。
諸井氏 (分権推進委の)各委員が各省庁と膝詰めで議論を積み重ね、両方が合意したものであり、今の時点ではこれでいいのではないか。これからの方向として、自治事務の領域が広まってくるのではないか。
畠山氏 今後の活動の力点はどこに置くのか。
諸井氏 この法律が通っても、その後、政省令、条例も整備しなくてはならない。新たな法がどう整理されていくのかなど、チェックすべきことはまだ多々ある。新しい仕事をどうするかは、最終的な結論は出していない。自治体がどういう考えなのか、各省庁がどうなのか、有識者がどういう考えなのか、いろいろな点を勘案した上で結論を出したい。
畠山氏 自治事務に対する中央政府の直接執行の規定さえあるが。
諸井氏 個別法で関与を全て排除すると、いろいろ問題が出てくる。分権の方向に大きなマイナスとは考えていない。
畠山氏 法定受託事務の概念について。
北村氏 本来は自治事務に含まれてよさそうなものが法定受託事務に入っている。法定受託事務の定義だが、分権計画では国民の「利便性」「効率性」という言葉が入っていたが、これがなくなっている。(法案)修正の候補かと考える。法定受託事務の概念のあいまいさが自治事務のあいまいさにつながっているが、自治事務をぴしゃりと書けば、どちらにも入らないものが出てくる。
畠山氏 自治事務にも許可基準など詳しく規定されているが。
北村氏 自治事務に同意を要する協議があり、拒否権が結果的に持たれて自治事務にした意味が生きてこない。同意権とか補助金の裁量権をちらつかせて自治体の意思決定に影響を与えることがあってはならないので、防止する規定・確認的な答弁などで明確にする必要がある。
高島委員長 これにて参考人質疑は終了する。