この「議事録概要」は自治日報紙(平成11年6月18日号)に掲載されたものです。
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【総括質疑】(5月25日衆議院行政改革特別委員会)
伊吹文明氏(自民) なぜ改革をするのか。
小渕首相 明治に確立した内閣制度を改革しなければならないということで、省庁再編の一つの大きな仕事が残されている。地方と国との関係では、いわば中央集権的な形で地方との関係があったが、これからはもっと中央、地方が横の関係、相強力して国民に対する政策を遂行するものに変えていかなければならない。
伊吹氏 この法案は(一部に)不完全だとの認識もあるが、この法律のもとにいろいろな法律が整備され新しい地方自治の形が出てくる、と理解しているが。
野田自治相 いろいろな評価があることはやむを得ないが、少なくとも今日まで、地方自治の必要性が論じられてきたが、こういう形で一括して具体的に前進することはなかった。また、一括法案と中央省庁の改革法案を併せ審議することは、明治以来の国、地方を通ずる行政システムをどう改革するか、相互、密接不可分の関係にある。
伊吹氏 地方の有権者にサービス提供するには財源が要る。自主財源といわれるが、税目を移しても偏在がある。それから、地方の行政を担う人材が確保できるかどうか。
野田自治相 交付税をも含めた一般財源、自主財源をどう確保するかに今腐心している。それから、受け皿としての事務遂行能力をどうするか。最近は、職員の共同採用などが増えているが、市町村自身の規模が大事だ。二〇〇万を超える市もあれば二〇〇人の村もあり、同じ仕事をやっていけるか。市町村合併もあわせ考えなければならない。
伊吹氏 市町村合併はぜひ推進してほしい。地方事務官問題だが、労働組合の利益はともかく、命とか健康にかかわることは北海道でも沖縄でも同じ扱いを受けるべきで、年金とか雇用対策は国家公務員として行うのは当たり前だ。
宮下厚相 厚生年金とかは国が保険者として経営責任を負っている。また、全国的規模の事業体として一体的な事務処理が必要だ。地方事務官を廃止し、厚生事務官として国の保険行政、医療行政等について一元的に処理することが妥当だ。
甘利労相 (職業紹介など)国民の基本的な生活にかかわることは国家が一元的に同じ行政サービス水準を行うべきだ。
伊吹氏 法定受託事務については国は強権的な権限を発動するのではないかとの批判がある。しかし、真の地方自治と国家と相いれない不法な地方自治とは区別しなければならない。国の命令権は当然担保されるべきで、それに不服な場合は裁判に訴える道が残されている。国がそれを乱用しないかどうかは、国会議員が監視のため選ばれている。
野田自治相 国と地方自治体の関係は、対立関係でとらえず、国民福祉のために国と自治体が相協力して達成するというスタンスで理解すべきだ。この点で、国が自治体に対して助言・勧告という関与を行うことは有益であると同時に必要でもある。ただ、国の関与が強大になりすぎると自主性・自立性を損なうので、自治事務と法定受託事務の区分に応じて関与の基準と手続を整理した。
小池百合子氏(自由) 地方分権は、中央に権限、お金、人、すべてが集中してたのを地方に分権し、地方に主権を与えようとすることだが、今度は地方が効率よく機能体として活動する地方に変えていくには市町村合併は大きなテーマだ。自由党は、(市町村を)まず三〇〇にしようと訴え、その前段階として全国を千に集約しようとしている。自治大臣は、合併促進にどんな措置を考えているか。
野田自治相 国と地方の役割分担をはっきりさせ、住民に身近なものは自治体自らの責任で自主的に決定していくことが大事だ。
この際、市町村が合併し、それなりの財政力をつけることも大事。政策誘導を用いながら積極的に進めなければ地方自治の受け皿が育たない。本法案で合併特例法の改正が入っており、法案が成立すれば、直ちに合併推進のガイドラインを地方自治体に示したい。特に、都道府県に対し、市町村が合併を検討する際の参考・目安となる合併パターンを作成、積極的に取り組むよう要請する予定だ。(三〇〇という数は頭に置きつつ)政府として今、数だけ追い求めるより、合併が住民のためプラスだし必要だということを理解してもらう努力をし、支援策を講じて積極的に進めたい。なお、戦後一万あった市町村が二〇年代の再編で今日の姿になってきたことも一つの参考になる数字かなと思う。
小池氏 地方自らの財源をどう確保していくか。このお金の面ではどう考えるか。
野田自治相 地方の自主性・自立を保障していくには、財政的な基盤、裏付けが伴わなければ、現実問題としてうまくゆかない。その点で、地方税が一番大事だ。ただ、地方税には偏在があり、地方交付税で補完している。いま一つは補助金の問題。個別補助金を統合補助金にするなど、極力一般財源化する方策を考えねばならない。
小池氏 国も火の車だが、地方も大変な状況に陥っている。都知事がバランスシート方式の取り入れを発言したが、問題解決には、問題がどれくらい根が深く広がりがあるかの把握が必要。会計制度の見直しについて。
野田自治相 自治省では既に六〇年ごろから検討しており、オーソライズしたものを作りたいと考えている。行政評価システムと並んで、バランスシート、企業会計的発想を取り入れることは大事なことと考えている。
小池氏 地方分権法案をCD−ROM一枚にまとめ、今後はホームページからロードダウンできるようにするということで、コピー代と輸送費五、〇〇〇万円が一気にコスト削減できた。新しい行政制度として使ってほしい。
鳩山由紀夫氏(民主) 日本全体が、依存心から離れ、それぞれ国も地方も、国民一人一人も自立する心を持って歩き行動できるようになるか、これが今一番問題になっている。国と地方も、今までは国が地方に優位的な立場から法的に大変な規制をかけ、補助金で地方をがんじがらめにしてきた。これを国と地方が対等、協力の関係になるべきだというのが一括法案の要旨ではないか。
さらに、地域主権の国づくりを提唱したい。国も地方もできる話であれば、基本的に地域が行うくらい、地域の自立性を高めることが大事だ。むしろ地域のことは地域に任せようという方向で大胆に変えていくことについていかがか。
野田自治相 国という体系の中で、地域住民の自治に委ねることがふさわしいものは地域にお願いし自己責任で処理することが必要。このため、自治事務と法定受託事務に分け、都道府県では七対三ぐらいになっている。
鳩山氏 国の関与がむしろ強くなってしまっている。県や市町村がすぐれた行政を進めているにもかかわらず、地方に任せると危ない、だから国が守るという形で国が管理していかないといけないという思いが奢りの中からでている。
野田自治相 圧倒的に地方自身に全てを任せるという形でつくるべきだと思うが、中に、非常事態など、国が何らかの形で助言・勧告する道はあった方がいい。そういう場合でも、地方のことは基本的に自治体みずからが自主的・自立的に判断し、処理する体制を強化したい。
鳩山氏 国より地域の方がさまざまな改革路線を進めているにもかかわらず、国の改革がここまで遅れた原因は。
野田自治相 政治家自身が論議はするがアクションがともなっていないことがなかったか。
太田総務庁長官 政治主導が十分でなく行政主導であったことが改革が遅れた原因だ。
鳩山氏 一方、地域の財政危機、解決の道が見いだせる確信を持っているか。
野田自治相 地方財政危機について、一括法案で応えている形にはなっていない。それは、この法が国と地方の間の役割分担を明確にすることに重点を置いたからだ。そこで、地方の自主性、自立性を担保、裏付ける基礎としている財政基盤をどう確立するかは、別途やっていかねばならないテーマの一つと考える。地方税を充実強化することは極めて大事なことであり、同時に、交付税を含めた一般財源をどう充実するか、補助金のあり方も考えねばならない。自主財源充実のため努力したい。
鳩山氏 機関委任事務の廃止などその方向の一つの戦術になるが、根本的解決にならない。原因は財源に関して全く手がつけられていない。補助金行政をこのままにしている中で、地方分権の議論をどこまで一括して行えるか。本来なら、国から地方により財源を求めるシステムを作って初めて、安心して権限委譲も進んでいく議論になる。
小渕首相 財源について一括して提案していないことは指摘のとおりだ。今回提案を裏打ちしつつ財源を強化していくことについては、できる限り早く国会にも提案しなければならぬ問題と認識している。
鳩山氏 地方自治法における国の関与だが、現行法では非権力的な関与にとどまっていたが今度は、九つに増え、しかもその中に命令行為が含まれていて、権力的な関与もできる。是正要求の中にも代執行の中にも国の関与が強まる懸念がある。これは必要だから強化したのか。また、自治事務は八割あるいは基本的に自治事務となる話があったが、六割程度に圧縮された。自治事務の方向が流れだと取り扱ってほしい。
野田自治相 機関委任事務に係る包括的な指揮監督権を廃止し、自治事務には是正要求どまりだ。一方、法定受託事務に関しては代執行を行う。これは当然のことだ。これから新たな立法がなされる場合も基本的に法定受託事務は制限しなければならないのは当然だ。
鳩山氏 是正要求に対し自治体が従わなかった場合、違法と解釈せざるを得ないという。となると、例えば神戸市の非核証明書などは、いままでは自由に出せたが、今度は是正の話になったとき、それを拒むことができなくなる。
野田自治相 是正要求は、自治法に基づく制裁的な規定はない。それぞれの事務についての根拠法令に基づき運用していくわけだ。高知の問題(非核証明港湾条例)は、港湾法の運用の中で適切な行政であるか否かということが問われた。いわゆる制裁的な背景はない。
石田幸四郎氏(公明・改革)
 (地方事務官について)本来は都道府県職員になるべきだが、当分の間、そういう措置にすることで四〇年も続いている。今までの経過では学校の先生も地方事務官だったが、今は完全に地方の職員になっている。国でもう一度国家公務員を明確にして、その影響を受ける市民にメリットがあるのか。地方事務官が地方公務員になっても何の実害もない。
宮下厚相 国の年金業務、社会保険事務所でやっている厚生年金と政管健保等で、これは国が一体的に運営しており、この経営的な努力その他責任があるし、全国的な視点でやらなくてはならない。この視点から、国の業務として行うことが適当ではないか。
石田氏 教職員が地方公務員になって大きな誤りがあったか、不便性があったかというと、全くない。その横並びも考えてしかるべきであり、社会保険行政に対する地域住民の様々な要望等があり、自治体議会でも議論されている。国の直轄となればその辺の議論が低下、国民の声が中央に吸い上げられない現象もあることを銘記の上、議論を継続させてもらう。
 地方の財政は非常に厳しい。地方財政の基本、地方税、交付税、補助金、起債の四つの仕組みが行き詰まっている。これを改善せずして地方自治体が新しい時代に向かうことはできない。本格的な税制を含めた国と地方のあり方(の検討を)、早く始められないか。
宮沢蔵相 わが国のこのような財政状況は長く続けられない。少なくとも、わが国の経済成長率が年二%程度ぐらいが続けていけることになったとき、どうしても財政の根本改革をいたさねばならないが、その時には税制も、中央と地方との関係、財政的な関係だが、これも一緒にやらないと二一世紀に対応した形ができない。特に、行政の方がこういうふうに改革の道が開いたので、次は財政が一緒に行わなければならないと思い、早い方がいいことは無理もないことだが、経済の姿がもうちょっとはっきりし成長路線に乗ってということになれば、早速それに取りかかるべきではないかと思っている。
春名直章氏(共産) 自治事務に国の統制の仕組み、とりわけ是正の要求が持ち込まれていることを重大視していく。現行の自治法では自治体に対する国の是正措置要求は内閣総理大臣一人だが、今回の改正でどうなるか。高知県では、非核港湾にしようと条例改正を提案したが、政府・外務省は圧力をかけた。この圧力は現時点では強制力を持たず、従わなくても違法にならない。今度の法改正では、非核条例制定を止めなさいという是正の要求を所管の運輸大臣も外務大臣も出せるようになった。いったんはその要求を出すとそれに従わなければならなくなる。
野田自治相 知事が港湾を管理する基本法は港湾法であり、港湾の適正な管理・運営を図る観点から港湾管理者としての地位に着目しての権限行使にとどまる。その権限行使の結果、国の外交関係に不当な影響を与えることはその権限を逸脱している。この法令に基づき、是正措置の要求を運輸大臣が港湾法に基づき行うことは、当然ありうる話だ。ただ、これは法定受託事務ではないので、いわば是正の指示や代執行を、そこまでいける事務ではない。
春名氏 自治事務では代執行はできないことは、当然だ。しかし、改正案の自治法二四五条の五の第一項では、総理大臣ではなく各大臣全部が、自分の担任事務なら是正の要求を出せる。その是正の要求は強制力を伴うものになる。これは現行法にはない。
野田自治相 個別法では国の関与を規定する場合、行政事務を分担管理する各大臣の権限とするのが一般的であること、個別法に基づく関与をできるだけ廃止・縮小しようとしたことから、その主体を総理大臣でなく各大臣とする方が適当と考えた。同時に、係争処理機関を新たに設けた関係からも、各行政の所管大臣が対応する方が現実的との判断に基づくものだ。
それから、現行の自治法には(総理大臣が行う)是正措置要求の規定があるが、今回、各大臣の是正措置要求を受けたとき「是正・改善措置を講じなければならない」と規定したが、これは是正措置要求の効果をより強めたものでなく、是正の要求、是正の勧告という関与のあり方をルール化されたことの方が、かえって地方分権の趣旨にのっとっていると理解する。
春名氏 今度の是正要求は、自治体に是正改善すべき法的義務を負うのか負わないのか。
野田自治相 自治体は、是正の要求を受けた場合は是正改善する義務を負う。同時に、是正の勧告は尊重すべき義務を負う。
春名氏 法定受託事務には最後の手段としての代執行が残されている。新自治事務の中に、今度は是正の要求、個別法では可能だという表現で、できるだけしてはならないとなっているが、代執行という言葉もはじめて自治法に登場する。包括的指揮監督権がなくなったが、その後、こんなになっている。関与が縮小されたと言えない。
小渕首相 関与の基本原則で、できる限り代執行を設けることがないようしなければならないことを規定している。
春名氏 もう一点、米軍用地特別措置法の改悪が盛り込まれている。米軍用地を確保するためにはその事務をなりふりかまわず国が直接執行しようとするものだ。
野呂田防衛庁長官 分権推進委勧告が、これを引き続き自治体が担う事務とすることは、首長に自治体の代表者と国の地方行政機関としての二重の役割を負わせる。むしろ国は安全保障上の義務に全責任を負い、首長は自治体の代表者の役割に徹すべきだというもの。この勧告に沿って法整備したもの。
畠山健治郎氏(社民・市民連合) 分権一括法案の評価を聞きたい。
小渕首相 今や実行の段階を迎えた地方分権は、二一世紀にふさわしいわが国の基本的行政システムを構築するもので、今国会でぜひ成立させていただき、地方分権を具体的に進めたい。
畠山氏 地方分権推進法に定める課題が未達成の法案といわざるをえない。今後、推進法が定める課題をどう達成するか展望を聞きたい。
野田自治相 税財源の、いわば自主財源と言った基盤強化、この辺の改革は今回は不十分なままで、これも当然満たして行かねばならない。今回の分権一括法がこれで完了という部分ではないのであって、これが一つの大きなステップである、引き続いて完成に向けて努力していかねばならない課題であると考えている。
畠山氏 分権推進法の効力は来年七月で期限切れを迎える。分権推進委員会の欠員も当然補充すべきと考えるが。
小渕首相 地方分権推進法の期限切れの後の体制については、現時点でその状況を踏まえて判断すべきことと考えている。(補充は)できる限り早く、ふさわしい人がなるかどうかも含めて、検討させていただく。
畠山氏 分権がこれで終わったのではなく、始まりの始まりと言わねばならない。分権推進法の延長は当然考慮されるべき課題と考えるが。
小渕首相 これを持って完結ということではない。まず本法案を通過させていただき、もろもろの問題については、さらに考慮していくべき課題だ。