世界地方自治憲章(仮訳)

 この憲章の当事国は、

 国連人権宣言において認知された、人民の意思がすべてのレベルの行政の基礎であるという原則を想起し、また、地方における民主主義が基本的な権利であることを認識し、

 アジェンダ21及びハビタットアジェンダにおいて明示されたように、多くのグローバルな問題や持続可能な発展が、地方レベルにおいて取り組まれなければならず、また、国家・州レベルの政府と地方自治体の緊密な対話と協力なしには十分に解決されないことを認識し、

 地方自治体は政府の最も緊密なパートナーであり、アジェンダ21及びハビタットアジェンダを実行するに当たって不可欠な存在であることを認識し、

 これらに基づきこの憲章の当事国は、

 世界的に認識されている自由、人間の尊厳や持続可能な発展といった目標を実現するため、地方自治体を強化する必要性を確信し、

 公的な職務及び責務は市民に一番近い行政によって行使されるべきであり、また、このサブシディアリティの原則は民主主義や市民参加型の開発の基礎であり、職務及び責務の配分はこの原則を守らなければならないことを確信し、

 民主的な地方自治体を通じて地方分権を推進すること、また、地方自治体の財政的・組織的な能力を高め、財政上の継続力及び自らへの信頼を保障することを明言し、

 男女の機会均等と性の平等が、地方における民主制及び統治における女性の強い役割と並行して進められなければならないこと、また、これらの目的は相互に補いあうものであることを確信し、

 都市における貧困、障害を持った市民及び原住民の利益の実現、彼らの社会への包摂、人種間の平等並びに民主的な統合には地方レベルにおける市民参加の強固な構造が必要であることを確信し、

 さらに、決定過程並びに人間居住に係る戦略・政策・計画の実行及び監視における、人民とコミュニティ組織の広範囲における参加及び所有権を促進しまた権能を付与することを明言し、

 自由選挙によって選出された地方自治体を通じた地方における強固な民主主義が、専門化された水準と十分な地方における統治と相まって、公共のアカウンタビリティ及び透明性を促進し、また、汚職に対して我々の社会を強固なものにする手段を提供するものであることを確信し、

 明確な役割及び責務並びに透明で参加型の手続に基づいた適当な資源を与えられた強力な地方自治体の存在が、効率的で市民に身近なサービスを保障し、また、社会的・経済的な発展を促進することを確信し、

 以下のように合意した。

第1条 すべての締約国は、以下の条項について、この憲章の第14条にある方法及び範囲で拘束を受ける。

[第1編]

第2条 地方自治の憲法的・法的根拠
 地方自治の原則は、国・州の法律により認知され、また、実際に憲法で保障されていなければならない。

第3条 地方自治の概念
 地方自治は、住民のために自らの責任のもとで、法の範囲内で、自らを発展させる権利を含む地方行政を運営・計画する自治体の権利、権力、能力をいう。
 この権利は、秘密・公平・直接・平等・普通選挙で選ばれた構成員からなる合議体によって行使される。合議体は、執行機関とそのための職員を有する。

第4条 地方自治の範囲
 地方自治体は、法律により自らの権限から除外されている事項または他の行政主体に付与されている事項を除いて、地方行政に係る事項について自らの発意に基づいて行動する自由を有する。
 地方自治体の基本的な権能・義務・責務は、憲法又は法律に規定されなければならない。しかし、この規定は特定の目的のための権限及び責務の地方自治体への帰属を除外するものではない。
 行政の責務は一般的に市民に一番近い行政主体によって行われるべきである、ということを意味する補完及び近接の原理に基づき、地方自治体の責務の中央政府等他の行政主体への移転は、技術的・経済的な効率性の要請に基づくものであり、また、市民の利益により正当化されるものでなければならない。
 権能及び責務は、通常、完全・排他的な形で地方自治体に与えられ、他のレベルの行政主体と権能を共有することは避けるべきである。それらは、侵されてはならず、法による規制及び指針以外によっては、中央政府等他の行政主体によって制限されてはならない。
 中央政府又は地域政府から権限の委任を受けた場合には、地方自治体に、地域の実情を踏まえた権限行使ができる裁量が与えられなければならない。
 地方自治体は、適当な時機に適当な方法で、自らに関係するすべての事項の計画及び決定過程に関与させられなければならない。
 中央政府、地域政府及び地方自治体間で事務が重なる場合、または、双方の利害が衝突する場合、和解、調和又は調整が必要であるが、すべての調停は本憲章の第2条に規定される地方自治の原則を尊重して行われなければならない。

第5条 地方自治体の境界の保障
 地方自治体の境界の変更は、関係する地域共同体への意見聴取を伴ってのみ行われる。

第6条 地方自治体の適当な行政構造及び資源
 地方自治体は、内部の行政機構を、地域の必要に合わせ、効率的な行政を行うため、できる限り決定することができるべきである。
 地方自治体は、管理・技術・経営に関する能力、そして信頼でき、透明で、説明能力がある構造の発展について、他の行政主体の支援を受け得るべきである。
 地方公共団体の職員の労働条件については、法で定められるように、最良の仕事、職業的な能力及び経験を有する質の高い職員の、性による平等等すべての差別の除外に基づいた、採用及び保持ができるものでなければいけない。以上の目的のため、適切な研修の機会、給与及び昇進の見通しが、地方自治体が高い質の仕事を達成し、また、市民に最高のサービスを提供するために提供されなければならない。

第7条 地方レベルでの責務が行使される条件
 選挙で選ばれた代表の職務の条件として、その機能の自由な行使のため、安全と十分な管理が保障されなければならない。
 そのような条件は、議員の活動について、当該執務の執行において発生した費用の適当な弁済を保障するものでなければならない。また、社会的に適当で可能な場合には、収入の減少への補償並びに行われた仕事及び社会的な保護に見合った報酬も含まれる。
 地方議員の官職と相容れないすべての職務及び活動については、法で特定されなければならない。

第8条 地方公共団体の業務の監督
 地方自治体は、自らの業務及び住民に選ばれた代表による統治について監督・監視を行う権能を有する。
 地方自治体に移行された活動を含む地方自治体の活動について、すべての監督は、憲法又は法に定められた場合に定められた手続でのみ行われ、合法性の保障のみを目的としなければならない。
 その執行を地方自治体に委任された職務に関して、上位レベルの行政主体による監督は、国家としての一貫性及び国家の政策の一致を保障するため、合法性の判断のみにとどまらない。
 地方自治体への監督の範囲は、保護するべき利益と対応するものでなければならない。
 憲法又は法律で地方議会の解散又は首長の停職あるいは解職が許されている場合には、それは、正当な法の手続に基づく調査の後にのみ行われなければならない。それらの存在、機能及び権能は、法の規定に基づきできる限り短い期間で現状復帰されなければならない。

第9条 地方自治体の財源
 地方自治体は、自らの業務と責務を実行するため、様々な財源を有しなければならない。地方自治体は、自らの権能の枠組みの中で使用する、自らの、又は自らに移転される適当な財源についての権能を有しなければならない。
 地方自治体の財源は、業務と責務に対応したものであり、また、財政の持続性と信頼を保障するものでなければならない。国によるすべての業務・責務の移転は、対応する適当な財源を伴うものでなければならない。
 地方自治体の財源のかなりの割合は、地方税、手数料又は負担金の枠組み(税率階層)又は立法による調整にかかわらず、提供するサービスの費用を賄うため、自ら率を決定する権限を有する地方税、手数料又は負担金によるものでなければならない。
 地方自治体が賦課する権限を有する税、又は割当を保証されている税は、業務と需要に対応したものであり、かつ、地方自治体の担う責任に見合っていけるよう、十分に一般性、伸張性、柔軟性を備えたものでなければならない。
 脆弱な地方自治体のため、財政の持続性を、垂直的(国と地方自治体間)、水平的(地方自治体間)又はその両方であるとを問わず、特に財政調整制度により保護しなければならならない。
 垂直的・水平的な均等化を含む財政調整制度のルールを決める過程への地方自治体の参加を、法律で保障しなければならない。
 できる限り、地方自治体への財政配分は地方自治体の優先事項を尊重し、また、特定の事業を指定することのないようにしなければならない。交付金の支給は、自らの司法権の範囲内で政治的行動の自由を行使する地方自治体の基本的な自由を妨げるものであってはならない。
 設備投資のための借入のため、地方自治体は国内及び国際資本市場を利用できなければならない。

第10条 住民の参加とパートナーシップ
 地方自治体は、憲法又は法の規定により、意思決定及びコミュニティのリーダーシップに係る地方自治体の役割の行使に係る住民参加の適当な形を規定する権能を有しなければならない。これは、社会の社会的又は経済的に弱い分野や人権等における少数派からの特別な意見の表明を含む。
 地方自治体は、NGO、コミュニティ組織などの市民社会のすべてのアクターや民間部門などとのパートナーシップを確立し発展させる権能を有しなければならない。

第11条 地方自治体の連合
 地方自治体は、共通の利益を防御しまた促進する、また、構成団体に特定のサービスを提供する、などのために連合組織を形成する権能を有しなければならない。これには、地方自治体とその職員のために訓練・計画・調査の機関を創設し発展させることを含む。
 中央政府、州等は、地方自治体に関係する立法を行う際には地方自治体の連合組織の意見を聞かなければならない。

第12条 国際協力
 地方自治体が連合する権利には、地方自治体の国際的な連合に属する権能も含む。
 地方自治体は、法律又は国際条約により、他国の自治体(国境を越える自治体を含む。)と協力する権能を有しなければならない。
 地方自治体は、パートナーシップの精神により、地方自治体の役割と責務に関する国際的な活動計画の協議及び実行に参加させられなければならない。

第13条 地方自治体の法的保護
 地方自治体は、財政及び行政の自治を保障するため、また、地方自治体の機能を決定し利益を保護する法律の遵守を保障するため、司法による救済に訴えることができなければいけない。

[第2編]

第14条 義務
 各締約国は、この憲章の第1編のうち少なくとも30項(そのうち以下の項から少なくとも12項)の拘束を受けるべきことを約する。
 (a) 第2条
 (b) 第3条 第1項、第2項
 (c) 第4条 第1項、第2項、第4項
 (d) 第5条
 (e) 第7条 第1項
 (f) 第8条 第3項
 (g) 第9条 第1項、第2項、第3項
 (h) 第11条 第1項
 (i) 第13条
 批准書又は加入書を寄託した各締約国は、第1条に従って選択した条項を国連事務総長に報告しなければならない。
 すべての締約国は、いつでも、第1条に基づいて適用を受けていなかった条項について拘束を受ける旨を国連事務総長に報告することができる。
 その後の約束は、批准又は加入に必要な部分であると考えられ、事務総長が報告を受け取った日から30日後に発効する。

第15条 憲章が適用される自治体
 本憲章が規定する地方自治の原則は、当事国の領域内に存在するすべての種類の地方自治体に適用される。しかしながら、批准書又は加入書を預託したすべての当事国は、地方自治体又は広域自治体の種類を特定して、憲章の適用範囲を制限し、あるいはその適用から除外することができる。いくつかの種類の地方自治体を除外するすべての特別な理由は、国連事務総長に示されなければならない。各当事国は、国連事務総長に対する事後の通告により、さらなる種類の地方自治体又は広域自治体についても、憲章の適用を受けるものとすることができる。

第16条 情報の提供
 すべての締約国は、国連事務総長に、この憲章の条項に対応するために取られた立法や他の政策についての情報を定期的に報告しなければならない。

第17条 監視
 憲章の履行の状況の評価をするため、国際監視委員会が参加国によって作られなければならない。この委員会は、地方自治体の代表も含まなければならない。委員会の事務局は、国連により用意される。

[第3編]

第18条 署名及び批准
 本憲章は、すべての国の署名のため閲覧に供される。
 本憲章は、批准を必要とする。批准文書は、国連事務総長に供託される。
 本憲章は、すべての国家の加盟に対して開かれている。加盟文書は、国連事務総長に供託される。

第19条 発効
 本憲章は、20番目の批准、あるいは加盟文書が国連事務総長に供託された日から30日目に発効する。
 これより後に批准又は加盟した国については、本憲章はそれぞれの国が批准又は加盟した日から30日後に発効する。

第20条 地域条項
 すべての締約国は、署名時又は批准若しくは加盟文書の寄託の際に、本憲章が適用される地域を特定することができる。いくつかの地域を除外することを正当化する特別の理由及びそれらの編入予定は、国連事務総長に示さなければならない。
 すべての締約国は、時期にかからわず、その宣言により本憲章の適用を除外された地域について、国連事務総長に対する宣言により適用を拡大することができる。その地域については、本憲章は事務総長が当該通知を受理した日から30日後に効力を発する。
 前2項に基づき行われたすべての宣言は、その宣言により特定されたすべての地域について、事務総長に通告することにより撤回することができる。撤回は事務総長が通告を受理した日から30日後に効力を発する。

第21条 廃棄通告
 締約国は、国連事務総長への書面による通告により、本憲章の廃棄通告を行うことができる。廃棄通告は、事務総長が通告を受理した日から30日後に効力を発する。

第22条 通告
 国連事務総長は、本憲章の受託者として任命される。
 国連事務総長は、国連加盟国に対し以下の事項を通告する。
 a) すべての署名
 b) すべての批准又は加盟文書の供託
 c) 19条に基づき本憲章が効力を発するすべての日付
 d) 第14条第2項及び第3項の規定の適用について受理するすべての通告
 e) 第15条及び第20条の規定の適用について受理するすべての通告
 f) 本憲章に関するすべての行為、通告及び連絡

第23条 認証謄本
 本憲章のアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語による本文はすべて等しく真正であり、その原本は国連事務総長に供託される。
 その証拠として、以下の全権大使は、各政府から正当に権限を与えられて、本憲章に署名した。

 

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