世 界 地 方 自 治 宣 言

−1993年6月トロントにおけるIULA評議会により採択されたもの−

 

地方政府の世界的な組織である国際地方自治体連合(IULA)は、1993年6月13日〜17日に開催した第31回世界大会において

1985年9月第27回世界大会で採択し、宣言された世界地方自治宣言を想起し、

1985年以後、世界の多くの地域で全体主義国家が崩壊し、そして、長い間抑圧された国々において、自由で民主的な社会へ向かう流れが強まるなど、国際社会における政治的、経済的な大きな変化が起きていることを認識し、

国連環境開発会議やアジェンダ21に引き継がれて明示された多くの世界的問題は、地方のレベルで扱わなければならないとの視点に立って、

国際組織が、地方自治体を社会、経済開発計画及び活動における有効なパートナーとみなす傾向が強まっていることから見て、

民主的な地方自治体の基本的な性質並びに世界中のあらゆる社会の住民に対して社会的、経済的及び政治的な公正さを保障するというその重要な役割を促進し、広めるための新たな運動をおこすことを決定し、

国家組織の不可欠な部分である地方自治体は、住民に最も身近な政府であり、それゆえ、居住条件に関する決定に住民を参加させることや開発促進における住民の知識能力を利用することの両面において、最良の立場にいるということを考慮し、

世界人権宣言第21条において承認された、人民の意志が統治の権力の基礎であるということを想起し、  

1985年にヨーロッパ評議会において採択されたヨーロッパ地方自治憲章が、現在までに19のヨーロッパの政府により署名され、15のヨーロッパの政府により批准された事実及び中央・東ヨーロッパのいくつかの政府によって新しい地方政府の法律を準備する際の主要なガイドラインとして用いられている事実を歓迎し、

住民が帰属意識と責任感を感ずることができる調和のとれた地域共同体の建設のために最良の条件を提供できるのは地域レベルであることを考慮し、

地方自治体を強化することは、より効果的で民主的な公の政策を保証することによって、国全体を強化することであることを強調し、

地方へ移譲された意思決定は中央の混雑を減少させ、政府の行動を改善し、速度を早めること、地方のイニシアティブを刺激すること、創造的で革新的なエネルギーを誘発し、新しい団体に活力を与えること、そして、いったん確立すれば、サービスと快適さが維持され、拡大される可能性が増加することを考慮し、

より効果的で民主的なプロセスの達成とそれによる人々の社会的経済的幸福の向上を望むすべての国にとって、規範となる世界地方自治宣言を、次のとおり宣言する。

第1条 地方自治の原則

 地方自治の原則は、憲法又は政府組織に関する基本法において承認されなければならない。

第2条 地方自治の概念

1. 地方自治とは、地方自治体が自らの責任において、地域住民のために公共的な事項を管理・運営する権利及び職務をいう。
2. この権利は、定期的に行われる平等・普通選挙によって自由に選出された個人及び代表機関によって行使される。主要な行政官は、同様に選挙によって選出されるか、又は選出された機関の参加により指名される。

第3条 地方自治の範囲

1. 公共の責務は、市民に最も身近な地方政府の基礎的団体により行使されなければならない。この責務は、各国の慣行に従い、中間的又は地域的なレベルにおける地域団体が行使することができる。
2. 地方自治体は、他の官庁が独占する権限や地方自治体の権限から明白に除外されたものを除いたすべての事項について、自らの意思に基づき活動する一般的な権利を有する。
3. 地方自治体の基本的な責務及びこの権限を変更するための手続きは、憲法又は法令に規定されなければならない。
4. 地方自治体に賦与された権限は、通常、十分かつ独占的でなければならない。中央官庁又は広域官庁が、地方自治体と共管する事項に介入する権限を憲法又は法規により与えられている場合、地方自治体はイニシアティブをとり、決定する権利を保持する。
5. 中央官庁又は広域官庁が地方自治体に権限を委任する場合においては、地域の状況に応じて法を施行する裁量が地方自治体に与えられなければならない。
6. 地方自治体は、地域に関係する他の政府の意思決定に関し、合理的かつ効果的な方法で参加しなければならない。

第4条 既存の地方自治体の保護

1. 憲法又は法律が地方議会の停止若しくは解散又は地方の首長の停職若しくは失職を認める場合は、正当な法の手続きにより行われなければならない。これらの機能は、法律の定めるところにより可能な限り短期間で回復されなければならない。
2. 地方自治体の境界変更は、地域共同体又は関係する共同体の協議(法律により住民投票が認められる場合は、これを含む。)の後、法律に基づいてのみ行われる。

第5条 地方自治体の適正な行政機構

1. 地方自治体は、地域の需要に応ずるとともに効果的な運営を確保するため、その行政機構を自ら決定するものとする。
2. 地方自治体の職員の勤務条件及び研修の機会は、魅力ある専門職を可能とするものでなければならない。中央官庁又は上位の行政機関は、地方自治体への専門職制度及び能力給制度の導入を助長促進しなければならない。

第6条 地方選出議員の勤務条件

1. 地方選出議員の勤務条件は、職務の自由な遂行を保障するものでなければならない。
2. 職務条件として、適切な報酬及び社会保障制度が提供されなければならない。
3. 地方選出議員の職と相容れないすべての職務及び活動は、法律によってのみ定められなければならない。

第7条 地方自治体の活動の監督

1. 地方自治体の監督手続きは、憲法又は法律のみに規定される。
2. 地方自治体の監督は、通常、合法性の確保のみを目的としなければならない。

第8条 地方自治体の財源

1. 地方自治体は、他のレベルの政府から区別された十分な自主財源を賦与されなければならず、その権限の範囲内において、その収入を自由に使用できなければならない。
2. 地方自治体への財源配分は、その職務に応じた合理的なものでなければならない。この財源は、公共サービスを中断させず、適切な財政計画を可能にするため、規則的かつ持続的なものでなければならない。すべての新たな事務の移譲には、その遂行に必要な財源が伴わなければならない。
3. 地方自治体の財源の相当な割合は、自ら率を決定する権限を有する地方税、手数料又は料金によらなければならない。
4. 地方自治体が賦課する権限を有する税、又は割当てを保証された税は、その責務に応じたものとなるよう、十分に一般性、伸張性及び弾力性を備えたものでなければならない。
5. 財政的に弱い地方自治体は、財政調整の制度を必要とする。
6. 地方自治体が、財源の再配分を定めるルールを決定する過程へ適切な方法により参加する権利は、特に認められなければならない。
7. 特定の事業やサービスの資金調達に充当されない包括的補助金の制度は、促進されなければならない。補助金の交付は、地方自治体が権限の範囲内で遂行する政策へのいかなる干渉も正当化するものではない。

第9条 地方自治体の連合組織

1. 地方自治体は、権限の行使に際し、共通の利益を擁護し促進するほか、構成団体に特定のサービスを提供するため、連合組織を形成する権能を有しなければならない。
2. 他のレベルの政府は、地方自治体に影響を及ぼす法律を可決するときは、地方自治体の連合組織に意見を求めなければならない。

第10条 国際的な連携

1. 地方自治体が連合する権利には、地方自治体の国際組織に加盟する権利を含む。
2. 地方自治体はまた、交流、協力及び国際理解の推進のため、他国の対等な地方自治体と連携することができる。

第11条 地方自治体及びその自治の法的保護

 地方自治体は、その自治を保障するため、また、地方自治体の任務を決定し利益を擁護する法律の遵守を保障するため、司法による救済に訴える権利を有しなければならない。

 

(翻訳資料)
IULAのホームページ(http://www.iula.org:8888/websites/iula/IULA2ndWebSite.nsf/All+Pages/URL/IULA-EFrame?OpenDocument)より「IULA WORLD WIDE DECLARATION OF LOCAL SELF-GOVERNMENT adopted by the IULA Council,Toronto, June 1993」を当本部にて訳出(仮訳文に不適切な箇所がありましたら、当本部までお知らせください。)

(参考文献)
東京都企画審議室『ヨーロッパ地方自治憲章とEC統合』平成4年3月、東京都企画審議室調査部、66〜70頁

 

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