「事務・事業の在り方に関する中間報告」の概要
―自主・自立の地域社会をめざしてー

平成14年6月17日
地方分権改革推進会議

はじめに


T 地方分権改革についての基本的考え方等


1.       基本的考え方(P3〜P6)

    これからの分権改革は、国と地方における財政の危機的状況の一層の深刻化、地方公共団体における新たな試みを展開する気運の高まり、少子・高齢化の急速な進行等の新たな環境変化を前提とすることが必要。

 

    国と地方の役割分担を明確にし、地方公共団体が地域住民のニーズに応えて自主的、自律的かつ効率的に行政運営を行いうるよう、自己決定・自己責任の原則に基づいた自立的な行政システムの構築を目指すべき。

 

    分権型行政システムは、国と地方における行政改革や行政のスリム化にも資するもの。また、国主導の右肩上がりの「成長」を前提とした行政システムから、「持続可能な」システムへの転換を図るもの。

 

    「国土の均衡ある発展」の名の下に国の関与や規制が正当化されるべきではなく、自立できる条件の下で、それぞれの地方公共団体が、知恵と工夫を競い合う生産的な競争を通して、地域の個性と活力を発揮し、質の高い社会の形成に資するシステムを構築すべき。

 

2.       改革の方向(P7〜P11)

    「補完性の原理」に基づき、事務の性質に応じて担い手としてふさわしいレベルの地方公共団体や国へ事務権限を配分する、すなわち国と地方の役割分担を適正化すべき。

 

    我が国は既に多くの分野でナショナル・ミニマムを達成しているとの前提に立ち、追求すべき行政上の目標は、国が設定するナショナル・ミニマムの達成から、地域住民のニーズに応えて、地域が選択する、地域ごとの最適状態を意味するローカル・オプティマムの実現へと転換すべき。

 

    地方公共団体が、地域住民のニーズに応じて最適な組合せで総合的かつ柔軟に政策を立案し、事業を実施していくためには、省庁ごとに存在している国の関与・規制を縮減し、国の縦割り行政から解放することにより、地域における行政の総合化を推進すべき。

 

    地方公共団体が、地域住民の意向を汲んで創意工夫に富んだ政策を立案し、施策を選択、実施できるシステムを形成すべきであり、それを阻害する国の関与・規制は不断の見直しが必要。それぞれの地域が、知恵とアイディアの地域間競争を行うことにより、国全体としての活力も向上。

 

    地方において、受益と負担の関係を明確化することによって、地域で住民が負担との関係で歳出水準に合理的な判断を行い、資源の適正配分が図られるシステムを構築していくことが必要。こうした観点から、まず、国の関与を縮小し、地方の権限と責任を大幅に拡大する。これを踏まえ、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で検討すべき。

 

    国と地方が「対等協力」の関係にあることを前提として、国が地方に関わる制度の創設、計画の策定、負担の決定等を行う場合、また地方の個別事務事業に関わる決定等を行う場合には、透明で公正な手続きに従って行われるとともに、地方に発言の機会ができる限り確保されるべき。

 

3.       事務事業の見直しに当たっての一般的な指針(P11〜P13)

    事務事業の見直しに当たっての一般的な指針は以下のとおり。

    現在の社会経済状況にふさわしいものへの見直し等新たな変化への対応

    社会資本整備における国と地方の役割分担の見直し

    国の関与・規制の廃止、事前から事後への転換等

    同種の事務事業の統合化等

    補助金等の廃止、一層の統合化等

    新たな規制や負担の決定における地方の参画の確保

 

U 事務事業の分野別の基本的な見直し方針

 

1.       社会保障:地域主義、地域福祉の一層の推進に向けて

    これまでの分権改革の流れの中で、社会保障関係の事務事業の多くは既に地方に移管され、「地域主義」(住民に身近な地域において必要なサービスをきめ細かく提供できる体制作り)の推進も図られている。しかし、実施は地方に委ねられていても、地方の裁量の余地は限られたもの。(P14)

 

    社会保障制度の根幹にかかる部分は国が負うべきものとしても、人々の日々の暮らしに密着した行政は住民に身近な行政主体である地方が担うべきものであることから、地域の実情や特性、地域住民の判断と選択を踏まえた実施が可能となるよう、多くの権限と責任を国から地方へ委ねていくべき。(P15)

 

    このような観点から、地域の実情に応じた総合行政を進めていく上で障害となっている国の関与を積極的に見直すべきであり、幼保一元化問題についても、幼稚園教諭と保育士の資格の一元化等を検討すべき。(P16〜P17)

 

    また、必置規制に代表される組織や人員に関する国による義務付けは極力廃止、縮減に努めるべきであり、保健所長の医師資格要件については、これを廃止すべき。(P19)

 

    さらに、国が地方に義務付けている「最低限の基準」については、その必要性を経常的に見直していくべき。例えば、保育所の調理施設設置の国による義務付けはこれを見直し、地方の判断に委ねるべき。(P20)

 

2.       教育・文化:地域の教育力発揮のために

    教育・文化の分野における今後の分権改革は、各地域における学校教育の在り方まで包含した上での「地域の教育力」を十全に発揮できるようにするために、国と地方の役割分担と地方の事務に対する国の関与はいかにあるべきかという問題意識の下に進められるべき。(P24)

 

    国の関与の見直しの中心は、初等中等教育、中でも義務教育分野。学習指導要領の大綱化や学級編制の弾力化等を通じた国の関与の縮減を一層進めるとともに、かかる国の関与の縮減に伴い、国と地方の経費負担の在り方についても見直すべき。(P25〜P26)

 

    具体的には、教員配置等に関する地方の自主的判断を可能とする観点から、義務教育費国庫負担制度の見直しを検討すべきことを提言。例えば、教員の給与ではなく何らかの客観的指標に基づく交付金制度への移行等につき検討を進めるべき。(P27)

 

    更に、将来的な課題として、義務教育に対する国の関与の在り方の見直しにおいて、国の関与を極力なくし基本的に地方に委ねてよいというのであれば、経費負担の問題にも十分留意し、義務教育費国庫負担金の一般財源化をも念頭に置きつつ検討を行っていくべき。(P27)

 

    今般の大学改革で国立大学が法人化されるに伴い、準拠すべき国立学校教育職俸給表が無くなるため、教育職地方公務員の給与体系の見直しが必要となっているが、給与体系の見直しに当たっては、より弾力的、機動的な教員の人事や処遇が可能となるような人事・給与体系とすべき。(P28)

 

    生涯学習、社会教育の分野に関しては、地方に対する国の関与は抜本的に見直すべき。国は国の施設の運営・管理や調査研究、情報提供等に役割を特化すべきであり、地方公共団体や民間への支援を通じた国の関与は全て見直し対象とし、順次縮減していくべき。(P31)

 

3.       公共事業:社会経済情勢の変化を踏まえた公共事業の見直し

(1)総括的事項(P33〜P41)

    公共事業を巡る環境は、この10年間に激変。今後の公共事業に係る国と地方の役割分担を考えるに当たっては、社会資本整備水準の大幅な向上財政状況の著しい悪化長期的な人口の減少傾向及び公共事業に対する国民の不信感の増大という環境変化を十分認識すべき。(P33〜P34)

 

    国民から見て透明性が高く公正で信頼できる公共事業の仕組みとするためには、事業主体が明確な基準により定められていることが必要。河川及び道路についての法令上の基準は、次期道路整備五箇年計画及び次期治水事業五箇年計画の策定過程において必要な作業を行い、制定されるべき。(P34〜P35)

 

    国が公共事業関係長期計画の在り方を検討する際には、補助事業は地方が事業主体となって実施するものであることを考慮に入れた対応を、また地方が事業主体となる事業については既存施設の維持更新投資の見込み等をできる限り明らかにしていく方向で検討すべき。(P35〜P36)

 

    直轄事業について、国と地方の役割分担や受益と負担の関係をより透明なものとするため、国から地方公共団体への情報開示の基本的事項の制度的な明確化を行うとともに、直轄事業の実施に関し国と地方公共団体との事前協議制度の導入を検討すべき。(P36〜P37)

 

    国の関与する事業は限定し、地方の主体性を生かした社会資本整備に転換する観点から、国庫補助負担事業の廃止・縮減を実施に移すべき。また、国と地方の関係をより透明なものとするため、補助事業に係る公共事業再評価システムの位置付けや複数省庁が所管する公共事業の調整の在り方の明確化、統合補助金の運用・関与の改善等の諸課題について検討すべき。(P38〜P40)

 

    社会資本の管理に係る国の関与を縮小するとの観点から、特定重要港湾の入港料等について、国の関与の在り方の見直しを検討すべき。(P40〜P41)

 

(2)個別分野に係る事項(P41〜P48)

    全国総合開発計画等については、効果や影響が全国的、広域的な範囲に及ぶプロジェクト等を記述の対象の基本とするなどその簡素合理化を図るべき。

 

    総合保養地域整備法については、今後の進捗の見込みがなく実現性が乏しくなっている地域の同意基本構想の廃止等、制度の根本に立ち返った見直しを検討すべき。

 

    都市計画及び農地転用については、地方公共団体からの権限移譲要望等を踏まえ、制度改正から5年以内を目途にその定着状況を速やかにフォローアップを行うこととし、その結果に応じて見直しを検討すべき。

 

    砂防指定地及び地すべり防止区域の指定については、都道府県への権限移譲について検討すべき。

 

    道路の構造について、地域の実情に応じた道路整備を進める観点から、道路構造令等の基準を含め見直しを検討すべき。

 

    住宅建設計画法に基づく住宅建設計画の枠組みについて、都道府県計画に対する国の関与や内容を含め、現行五箇年計画の期間中の見直しを検討すべき。

 

    都市公園制度については、地域の実情に応じた公園整備を進める観点から、都市公園の設置基準等の見直し等を検討すべき。

 

    下水道については、維持管理の民間委託の促進方策下水道施設基準について早急に検討を進めるべき。

 

    農業生産基盤の整備については、今後とも国の役割を重点化する方向で検討すべき。

 

    民有林管理について、地域の実態を踏まえて地方公共団体がより自主性を発揮できるような方向性を検討すべき。

 

    廃棄物対策については、現在暫定的に法定受託事務とされているが、これを法定受託事務とするためには、最終処分場の確保や不法投棄対策に対する国の関与の強化、県域を越えた問題への対応するために必要な措置の実施など国の責任強化の方向の明確化が必要

 

    地方三公社の在り方については、特殊法人改革の動向等を踏まえ、引き続き検討

 

(3)21世紀の社会資本整備に関する提案(P49〜P51)

    社会資本整備水準の大幅な向上等環境が大きく変化したことを考えると、国と地方の税財政制度の基本的な改革の方向も展望に入れつつ、21世紀を見通した新たな時代の公共事業の在り方について、現時点でその根本からの見直しも視野に入れた検討を開始すべき。(P49)

 

    社会資本整備の在り方については、あるべき国土像等についての国民的なコンセンサス、財源の在り方、経済や財政制度等幅広い観点から政府において検討されるべきであるが、そうした前提の上で、今後の社会資本整備に係る国と地方の役割分担について、以下を提案するもの。(P49)

 

    現在の社会資本整備の仕組みは、国と地方の様々な資源を効率的に動員するため、地方公共団体が実施する補助事業等も国が全国的な計画の下にコントロールしており、このような仕組みからの脱却が必要。(P49〜P50)

 

    大規模な災害復旧事業等を除き、原則として国と地方がお互いに自立し、自らの責任分担分野における公共事業を自らの責任において執行する仕組み、すなわち国と地方が適切な役割分担をした上で、それぞれの財源によって建設、維持管理、更新を企画立案から実施まで一貫して行う仕組みを考えていくべき。(P50〜P51)

 

    今後、関係省庁との協議を行いながら、21世紀の公共事業の姿を目指して引き続き審議公共事業の改革は、広範囲に大きな影響をもたらすとともに、息の長い取り組みが必要なものであり、慎重な検討が必要。(P51)

 

4.       産業振興:地域の創意工夫を活かした産業づくりと地域の活性化

    産業政策においては、国は真に戦略的に考えるべき分野に集中する一方、地域が自己決定権をもって自主的な判断の下に行う地域の特色ある産業づくり、地域の活性化等に関する国の関与は縮小し、できる限り地域間の競争に委ねていくことが、地域産業の活性化のためにも必要。(P52)

 

    農林水産業振興施策、農村、山村、漁村振興施策については、農業者等の自主性に委ねる分野、地方が責任を持ち国が関与しない分野、国が関与し責任を持つ分野の棲み分けを可能な限り予見可能な形で明確化する努力が必要。(P53)

 

    農業改良普及制度については、改良普及員の必置規制農業改良普及手当に関する規定の在り方一般財源化を含め、協同農業普及事業交付金の交付の在り方等について検討すべき。(P54)

 

    農業委員会については、農地面積の小さい市町村においては廃止を含めた見直しを進めるとともに、広域連携を積極的に推進すべき。さらに、市町村合併の進展を踏まえた必置基準等の見直しの検討と併せ、一般財源化含め、農業委員会交付金の交付の在り方等について検討を行うべき。(P54〜P55)

 

    BSE問題に関連し、今後、食品の安全性に関わる法律について所要の改正が行われることとなっているが、法の施行を行う地方公共団体の現場で食品安全行政が自主的・総合的に実施できるような仕組みを検討することが必要。(P55)

 

    中小企業政策についても、今後とも国と地方の役割分担を明確化していくとともに、全国レベルの高度な技術力を有する中小企業への技術開発支援、全国的規模・視点で行われることが必要な施策、中小企業の競争条件の整備等に国の役割を重点化していくことが必要。(P55〜P56)

 

5.       治安その他

    警察官の政令定数制度については、実数で定める現在の制度が必要であるか、緩和の余地がないか等、様々な論議があったが、現時点で、今後の在り方について見直しの具体的方向性を示すような状況にはない。今後、税財政制度の在り方の検討に際しては、引き続きその在り方に留意していくことが必要。(P58)

 

    都道府県警察の組織に関する関与については、各都道府県が組織をより機動的に整備できるよう、内部組織の基準をより柔軟なものとすることについて積極的に検討を進めるべき。(P58)

 

    交通安全対策特別交付金制度については、税財政制度の在り方の一環として、引き続き検討。(P58)

 

    消防制度については、市町村消防の原則に則って運営。今後も、地域の状況に応じて、自らの地域を自らの手で守るという消防・防災の趣旨、地方分権推進の観点も踏まえ、市町村消防の原則を基本的に維持していくべき。(P58〜P59)

 

    常備消防の設置義務市町村を政令で指定する制度及び救急の実施義務市町村を政令で定める制度は、地方分権の趣旨や常備化等が相当程度進捗していること等にかんがみ、市町村の判断によることを基本に抜本的な見直しを検討すべき。(P59)

 

    「消防力の基準」については、各市町村で消防力の確保を図るための指針としての性格を踏まえつつ、消防行政を取り巻く状況の変化に応じた見直しを行うとともに、さらに、分かりやすく簡素化を図る等の見直しを検討すべき。(P59)

 

    市町村消防を補完する大規模・特殊災害時等の都道府県を越える支援(緊急消防援助隊等)に対する国の役割分担について、法令上その位置付けを明確化し、充実することを検討。(P60)

 

V おわりに

 

    事務事業の在り方の見直しについては、今後関係省庁との協議を行い、意見を取りまとめ。それを踏まえ税財源配分の在り方について検討するとともに、地方行政体制整備についても検討。(P61)

 

    分権型社会の実現のためには、多くの課題が残されており、その実現は容易ではないが、あるべき姿に近づくことができるよう、引き続き最大限の努力を傾注。(P62)


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