取組状況の報告

コメンテーター
岩手県立大学総合政策学部教授
天 野  巡 一  氏

金沢市のまちづくりと条例
金沢市建設部担当部長兼都市計画課長
中 島  正 人  氏

横須賀市における地方分権型条例整備の取り組み
横須賀市総務部参事兼行政管理課長
齊 藤  一 郎  氏

彩の国さいたま人づくり広域連合の取組
彩の国さいたま人づくり広域連合事務局専門調査員
清 水  久 仁 彦  氏


天野巡一氏 【天野】ただ今ご紹介いただきました、岩手県立大学総合政策学部の天野でございます。私のほうから進行させていただきたいと思います。時間は1時間10分ほどですが、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、自治体の運営と法務ですが、統治・集権から自治分権への移行が図られたことにより、今後、自己決定・自己責任の原則を踏まえ、自治体自らが政策主体となるのみならず、住民にとって身近な、地域の調整主体としての政府として、今後、自治体の政治行政は、地域のニーズに沿った政策の展開、さらには開発が求められることになってきました。このことは、とりも直さず、地域に根差した個性を持つ自治体が基本となってきたということを意味しているのではないでしょうか。従来までの、国からみますと国主導、自治体からみますと国依存の自治体運営では対応できず、今後は自己決定・自己責任に基づく政策の展開が求められてきたことはご承知のとおりだと思います。

 その意味で、政府としての中核条件に自治体法務というのを位置付けるべきではないかと考えています。自治体法務といいましても、その範囲は明確ではありませんが、これは私なりの分類ですが、大きく分けて技術領域に属する法務領域と構想法務領域があって、さらに広くとらえていきますと、そこにもう1つ訴訟を対応しなければいけないという意味で、訴訟法務という領域があるのではなかろうか。本日は、この訴訟についてはテーマになっていませんので省きまして、技術法務領域あるいは構想法務領域ということで、実際の自治体政策と条例について考えることにします。

 技術法務領域における自治体法務というのは、日常法務事務を中心として成り立っているのではなかろうか。日常法規事務には、自治体の事務、すなわち既成の自治体課題に基づいた法制執務と、当面している事実を背景にした法律適用があるというふうに私は考えています。今までは、ともしますと、法制執務を中心とした技術法務領域をとらえて「自治体法務」といっていたのではなかろうかというふうに思います。

 構想法務は、自治体が主体となって基本構想・基本計画に基づいて政策の展開を図る手段・手続としての法務、すなわち自治体における法務の手法、考え方を政策的にとらえていくという領域の法務ではなかろうかと思います。

 自治体政策は自治体総合計画が基本となるということは、地方自治法に書かれてあるとおりですが、その上で、基本計画、実施計画があり、その実現をめぐって個別法、あるいは、今話題になっている自治体基本条例などが組み合わされて運営されてくることになります。そこには、法令など国が示した基準と条例などの自治体が定めた基準の検索を含む技術法務領域における法制執務、あるいは法律をどう適用していくのかというのを前提としつつ、自治体が独自の新しい政策の展開をいかに図るか、その手段・手続としての自治体の自治立法に根差した条例制定という位置付けが必要になってくるのではなかろうか。自治体の政治・行政を法的視点から総合的に行う自治体法務、これを構想法務と私は分類していますが、自治体政策を法務の視点から創造的に展開する領域を、今後とも模索していかなければいけないのではなかろうかと思います。

 今までは、ともすると、いわゆる法制執務を中心とした日常法規事務、すなわち法律の当てはめを図る技術のみを指して自治体法務と捉えていましたが、今後は、自治体の自己決定・自己責任の視点から、自治体政策の展開を図る上での法令解釈、自治立法という、自治体からの法務政策という位置付けが求められているのではなかろうか。

 基本構想・基本計画に基づく地域における政策主体、調整主体となるべき今日の自治体の政治行政は、自治体による法務行政、すなわち自治体による法令解釈を基に自治立法を図った上で政策の独自な展開に結びつけていかなければならない。こういう視点が、今日の自治体の法務政策にとっては必要不可欠な要素ではなかろうか。ここにきて、ようやく、自治体においては、公共課題を解決する手法・手続をめぐっての法務をとらえて、政策・制度の開発に取り組む自治体法務論が盛んになって、このようにたくさんの方が会場へお越しいただいているのも、その証拠ではなかろうかと思います。自治体の法務政策の担い手は、もちろん自治体の職員です。その自治体の法務に対する意識改革が望まれているところです。今までの総務管理型の法務から今後は企画構想型の法務、すなわち守りの法務あるいは受けの法務から積極的で構想的な法務が、今求められてきているのではないでしょうか。

 そこで、今日は、自治体が主体となって基本構想・基本計画に基づいて政策の展開を図るという、手段・手続としての条例をつくり、独自のまちづくりを展開している金沢市の例をご報告いただきまして、続いて、今回の機関委任事務廃止に伴って条例制定の範囲が拡大されましたが、これに対する自治立法の取組みと、さらに住民自治について条例制定によって政策の展開を図る取組みについて、横須賀市からご報告いただき、最後に、自治体の法務政策の担い手としての職員の意識改革、人材開発について、広域連合を活用しながら独自の取組みをしている埼玉県の例をご報告いただきます。少ない時間ですが、自治体政策と条例について考えていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは早速、報告に移らせていただきたいと思います。まず、最初に、金沢市建設担当部長の中島さんより、「金沢市のまちづくりと条例」の概要とその取組みについてご報告いただきたいと思います。中島さん、よろしくお願いいたします。

金沢市のまちづくりと条例

【中島】金沢市の中島でございます、どうぞよろしくお願いいたします。

 金沢市といいますと、東京からですとなかなか行く機会もないかも知れませんが、本日お話しする内容については、セミナー資料の19〜27ページに文章を書いております。それと、資料といたしまして、「金沢市まちづくり条例」というパンフレットを皆様にお配りしております。今日は、パワーポイントも用意しておりますので、最初に簡単に金沢市の状況といいますか、説明をさせていただいて、あとはパワーポイントで説明させていただこうと思います。

中島正人氏  金沢市ですが、皆様ご承知のとおり、と思いたいのですが、江戸時代には前田利家を藩祖とする加賀前田家100 万石という徳川家に次ぐ石高の藩の中心都市であった市であります。現在は、人口45万6,000人で、市の特徴としては、江戸時代から400 年間、大きな地震もなく、第二次大戦のときも空襲を受けなかったということで、古いまちなみがそのまま残っております。

 これは昔の絵図と、現在の香林坊という市の中心部です。下のほうに見えますのが、室生犀星の「犀」という字を書きますが、犀川という川で、右上のほうに緑に残っているのが、11月の上旬まで「緑化フェア」をやっておりまして、昔の金沢城を一部復元した金沢城址公園です。昔は金沢大学があったわけですが、今は移転してしまってありません。市の中心部は再開発等で近代化されているという状況にあるということでございます。

 まず、金沢の歴史的特徴です。左下にございますが、これは兼六園で、日本三名園の一つです。水戸の偕楽園、岡山の後楽園、金沢の兼六園で三名園です。有名な徽軫灯籠(ことじどうろう)という灯籠ですとか、雪吊りといって、北陸の雪は湿っておりますから、木の枝が折れてしまわないように吊っているものがあるのが兼六園です。

 それと、右上は「東の茶屋街」といいまして、東山というところですが、今、伝統的建造物群に指定されております。その右下が長町の武家屋敷ということです。実は、来年「利家とまつ」というNHK大河ドラマがあり、おそらく金沢はその舞台になると思いますが、そういった歴史的なものがいっぱい残されているというところです。

 金沢の地形ですが、市内の中心部で、一番左の下のほうにあるのが金沢駅で、明治時代に駅をつくる位置を選定したわけですが、中心部は通さずに外れのほうにつくられています。明治時代の頃に繁栄していた街はどこもそうしていたようですが、その金沢駅から真ん中の方に向かうお城みたいなところが金沢城址で、そのちょっと上にあるのが兼六園です。小立野台、卯辰山、野田山という3つの台地、それと犀川、浅野川という2つの川。浅野川のほうは泉鏡花という文豪がその近くにいたということでも有名ですが、そういった歴史的にもいろいろなものが残っていまして、自然的にもどちらかというと細かな地形ということで緑が多く残っている街です。

 金沢の街並みですが、こちらは1668年の街並みと現在の街並みを比べたものですが、右上が浅野川、左下が犀川ということで、中心部に金沢城があるわけですが、その周辺の兼六園や町割りが、ほとんど昔のパターンで残っているというのがわかっていただけるかと思います。

 金沢市では、いろいろな条例をつくっておりまして、昭和43年に、当時は高度経済成長期だったわけですが、「伝統環境保存条例」をつくりました。その後、伝統環境を保存するだけではだめだということで、「伝統環境の保存および美しい景観の形成に関する条例」をつくりまして、細かな内容は後でセミナーの資料を読んでいただければと思いますが、こちらのほうは、近代的景観の創出という区域も伝統環境の保存に加えております。

 このエリアといたしまして、伝統環境保存区域は、当初、緑のところであったわけですが、これにグレーのところが加わっております。平成元年に加わったのは、主に河岸段丘、先ほどの、3つの台地があるということで、そこのエッジのところに緑が非常に残っているわけです。逆に、崖なので緑が残ってしまったといってもいいのですが、そこのところを保存するということです。それと、都心軸という考え方を導入しまして、赤いところ、これは、香林坊から武蔵が辻、金沢駅さらに駅の西のほうにつながるところを近代的都市景観創出区域というふうに決めまして、こちらのほうはどちらかというと、新しい建物を建てようという区域を定めたわけです。

 その後、平成6年ぐらいから連続して新しい条例をつくったわけですが、まず、「金沢市こまちなみ保存条例」です。「こまちなみ」というのはどういうことかといいますと、「こ」というのは「小さい」と「古い」という意味の、2つのかけことばのようになっているのですが、小さなちょっとした街並みを保存しましょうということです。大きな街並みは、先ほどの伝統環境保存条例のほうで守られていたわけです。こちらのほうが主計町(かずえまち)といいます。大蔵省主計局の「主計」と書きます。こちらの旧町名は、町名変更の法律でなくなったものを一昨年復活させました。この主計町も茶屋街で、こういったところを守っていきましょうという条例をつくりました。

 「金沢市用水保存条例」については、金沢というのは水に非常に恵まれていまして、市内の至る所に用水が流れています。これは、香林坊の裏のところの鞍月用水ですが、昔は、ここの前の、今、水が流れているところが全部暗渠で、その上を駐車場みたいにして、その前のお店が利用していたのですが、それをいろいろと地元の方を説得し、ご納得いただきまして、オープンにして開渠にしました。そういった用水の保存という取組みをやっています。

 それと、「斜面緑地保全条例」については、先ほど申し上げた河岸段丘、これは、真ん中の小立野台地の斜面を卯辰山というところから見ているわけですが、こういった緑のところを残そう、この斜面にいろいろなものをつくるのを規制しようという条例でございます。

 そして、屋外広告物条例です。金沢というのは、非常に景観ということにも繊細でございまして、例えば、ここは日産のデザインの例ですが、通常であれば上のようなデザインになるわけですが、これを、「ちょっと色を落ち着いた色にして下さい」ということで、下のように変更していただいたりしています。

 このようないろいろな条例を積み重ねて、その中で、金沢市は着実に都市づくりを進めてきました。

 これからご説明させていただくのは「まちづくり条例」ということでございまして、このパンフレットを見ていただくのがわかりやすいかと思います。これは、平成12年3月に成立して7月から施行されています。実は、私、昨日も夜7時半から9時半ぐらいまで地元説明会で条例について説明したところです。「まちづくり条例」については、住民自らが、自分たちの住む地域の目標とする将来像を描いて、まちづくりのルールを決めて実現していく仕組みを定めたものです。

 条例の中心的な部分については、このセミナー資料の20〜22ページに、住民参画型の「まちづくり条例」について説明があります。細かいところは、後ろの29〜33ページのあたりのいろいろなパンフレットの内容でありますとか、36ページ以降に実際の条例の全文が入っておりますので、時間があれば見ていただければと思います。

 実は、「まちづくり条例」という名称の条例はございません。パンフレットを開いたところの下のあたりにありますが、市街化区域内、こちらについては、「金沢市における市民参画によるまちづくりの推進に関する条例」というのがございまして、市街化区域外、つまり、市街化調整区域と都市計画区域外、こちらについては「金沢市における土地利用の適正化に関する条例」というのがございます。この2つをあわせて、わかりやすく「まちづくり条例」と総称しているわけです。

 この条例の仕組みは、今までは、どちらかというと、行政側でいろいろと審議会などで先生方の意見、市民の代表の方の意見も聞きながら、例えば、用水の保全や伝統的な街並みを保全するといった取組みをずっとやっていたわけですが、市民の側からそういったアプローチをするということがなかったということで、いろいろなところのまちづくりや、土地利用に関する条例がありますので、それらを研究してつくりました。この「まちづくり条例」の新しい点というのは、まちづくりの協定を住民がつくることができるということです。さらにパンフレットを開いてほしいのですが、真ん中のところにございますが、「市民の皆様へ」ということで、「まちづくり条例によって、たとえば次のようなルールを地区独自に定めることができます」とありますが、用途のルールですとか容積率ですとか、いろいろなものについて自分たちで決めることができます。「決めることができる」と言われても具体的なイメージが湧かないと思いますが、セミナー資料の32・33ページを見ていただきますと、湯涌地区という、湯涌温泉という温泉街がありまして、先ほどお話していましたら、天野先生も行かれたことがあるというふうに伺いましたが、そちらの土地利用基準です。ここは、どちらかというと落ち着きのある温泉街、ちょっとのんびりするのにいいような温泉街を目指そうということで、例えば用途の制限で、カラオケボックスやレンタルビデオといったようなものはやめましょうとか、建築物などで、イメージとして右側の絵を見ていただくとわかりますが、どちらかというと日本家屋風の街並みをつくりましょうという土地利用基準です。こういった基準を住民の方にルールとして結んでいただいて、それを市長と協定、調印したということになります。

 それでは、どういうときにこういう協定を結ぶことができるかといいますと、地区の住民の方の80%以上の方が賛意を示していただくと、その計画に対して市長と協定を結ぶことができるということになっています。

 これが「湯涌地区まちづくり協定」の締結風景で、右側にいるのが市長と建設部長、左側が地区の住民代表の方になります。「土地利用協定書」は、地元の町会長さんに入っていただきまして、市長と協定を結びます。そうすると何がいいことがあるかというと、普通、自分たちで地区のまちづくりの計画をつくるのはいいのですが、自分たちでつくっても、誰も計画をチェックする人がいません。一方、協定を結びますと、市役所のほうで自動的に、その地区で建築などの行為が行われるときに、先ほどの土地利用基準に従って、敷地面積や用途などが計画に合っているかどうかということについて、市のほうでチェックをするという体制になっています。

 「まちづくり協定」の締結区域については、この湯涌地区、東山内灘線沿道地区、英町商店街地区、湯湧板ケ谷地区、にし茶屋街地区と、今、5か所があります。それぞれの地区が、それぞれの地区に合ったまちづくりをするということで、湯涌地区というのは、落ち着いた街並みを守りましょうということです。そして、東山内灘線沿道地区というのは、金沢東インターのほうから能登有料道路というのがありまして、そちらに伸びている地区ですが、そういったところの沿道の利用について、沿道にビシッと家がはり付いてしまうと、そこの基盤整備がまだなされていない、4mぐらいの農道しかないということで、将来的に基盤整備ができなくなります。そこで、セットバックですとか、景観に配慮したような街並みをつくろうということです。

 英町(はなふさちょう)商店街地区は、駅の近くの商店街です。歩道の上にアーケードがありまして、実はここの軒の部分がずっとあったのですが、これはどうも暗いイメージだから全部取ろうということになりました。このあたりは市役所の商業サイドと一緒に共同してやっているわけですが、暖簾のまちづくりということで、それぞれの店で暖簾を出してにぎわいを出していこうということを決めました。

 湯涌板ケ谷地区は、山里の閑静な住宅環境を守ろうということです。にし茶屋街地区は、先ほど東山というところがありましたが、東と西という茶屋街が金沢にあります。昔からのこういった茶屋が、昔は何十軒もあったものが、今はかなり減ってきていて、代替わりのときにビルが建ってしまうかもしれないということで、昔からの風情をなんとか守っていこうということです。

 このようなことで、いろいろな地区でまちづくり協定を結んでいます。

 まちづくり条例には、実は、こういった協定のほかに、開発の関係があります。資料の22ページにあるわけですが、パンフレットでいうと、見開きの一番右側になります。事業者が市街化区域内で3,000 u以上、区域外で1,500 u以上、あるいは高さ10m以上の開発をしようというときには、事前に看板のようなものを出しまして、それについて問い合わせがあれば、地元に説明をしていただくということを事業者の方にお願いしています。

 協定は市内のごく一部の地区しかかかっていないので、協定を結んでいる地区以外のところでいろいろな開発が行われるわけですが、こちらの規定でかなりのものがかかってきます。昨日行ったのも、住民の方から「近くにマンションが建つのですが」という話がありまして、条例の内容を説明に行ったわけです。そういった従来の住環境とちょっと違うものが出てくるということに対して対応しています。これが開発事業の協議手続です。これは市内全域にかかっています。また、この条例の中では開発事業を広くとっておりまして、区画形式の変更などでも届け出ていただくことにしておりまして、廃棄物の処理場なども含めていろいろと協議をさせていただいているという状況です。

 それから、「定住促進条例」を金沢市ではつくっております。これは、中心市街地の活性化の一環です。25ページになりますが、中心市街地の活性化というのは、どちらの都市でもやっていらっしゃると思いますが、この「まちなかにおける定住の促進に関する条例」では、金沢の中心部で、住宅の建替えをする場合、補助をするというものです。一戸建ての住宅ですとか共同住宅の建築の促進というようなものについて支援しています。具体的に言うと、一戸建ての住宅ですと、新築、購入するときに黒色系の日本瓦やこう配屋根を有するなど条件にあっていますと、借入金の1割200 万円を上限に奨励金を差し上げます。高耐震、二世帯住宅ですとさらに割り増しもあります。また、市内中心部であるまちなか地区に共同住宅を建設するとき、一戸当たり100 万円を補助します。まちなか住宅奨励金のイメージは、このような感じで、金沢は黒瓦の家並みが伝統的にあるわけですが、それにあうような住宅を奨励するということです。今年9月の段階で、まちなか住宅奨励金は41件、共同住宅の建設が6件出てまいりまして、予算については、9月に補正させていただいたという状況で、予想以上に利用して頂いています。また、まちなか住宅建築奨励金では、こういった茶色の壁、黒瓦、それと和室を必ずつくってくださいということです。こういったものは、最近、職人の技術を使う機会が少ないということで、そういった活躍の場にもしていただいて、いいストックをつくっていくということでやっております。これは、共同住宅の事例です。

 非常に駆け足でしたが、金沢では歴史的な特性がはっきりしていますので、市民の意識もはっきりしています。市がPRしなくても、とにかく「変なものはだめだよ」という考えが市民の皆さん共通の認識としてあるということを背景に、保存と開発が調和した世界に通じる都市づくりを現在進めております。以上です。

【天野】ありがとうございました。

 金沢の取組みにつきましては、自治体のまちづくりに対する基本的なコンセプトを、市民と共に明確にして運営をしている。その上で、まちづくりは「市民」という視点から取り組んでいるということ。さらには、開発事業の協議手続などを整備して、また、中心市街地活性化を図る定住促進条例などを行って、それも歴史的な特徴を生かしつつ行っているということが特徴になっているのではないでしょうか。

 続きまして、横須賀市行政管理担当、総務部参事の齊藤さんより、横須賀市における分権型条例整備の取組みと横須賀市民パブリック・コメント手続条例について、また、まちづくり基本条例の制定目的あるいは背景、電子行政手続に関する条例など、ちょっと広範囲にわたって申しわけないのですが、よろしくご報告をお願いします。

横須賀市における地方分権型条例整備の取組み

【齊藤】横須賀市役所行政管理課長の齊藤でございます。よろしくお願いいたします。本題に入る前に、今日は全国各地から皆さんがお集まりということですので、若干時間をいただきまして、横須賀市の宣伝をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

齊藤一郎氏  横須賀市は、平成13年4月1日で28番目の中核市となりました。これから中核市として、横須賀なりの条例なり施策を進めていきたいという考え方を持っております。横須賀市は、金沢市さんのように歴史的な資産や文化伝統はありません。ただ、今、国民食といわれているカレーライスは横須賀が発祥の地だということを、皆さんのご記憶にとどめていただきたいと思います。これは言った者勝ちという形になるのでしょうけれども、ご存じのとおり、カレーライスというのはインドが元祖ですが、日本のカレーは英国経由で入ってきたと言えます。日本海軍は英国スタイルを取り入れたわけですが、その当時、英国海軍の常食であったシチュー風のカレー、これを海軍が取り入れました。そして、そのカレーに手を加えてカレーライスとしました。海上自衛隊では、毎週金曜日のお昼にはそのカレーライスを食しているそうです。そうしたわけで、日本海軍でカレー食を食べた兵士の方々が、それぞれ自分の故郷に帰ってカレーづくりに挑戦して、カレーが全国に広まっていったということです。その日本海軍発祥の地が横須賀であるということで、横須賀はカレーの発祥の地であると称しています。今、横須賀は「カレーのまち横須賀」ということで全国にアピールしております。皆さん、カレーの発祥は横須賀だということで、戻られて何かの折りにお話しいただければ幸いと思います。よろしくお願いいたします。これから本題に入らせていただきます。

 資料の45ページをお開きいただきたいと存じます。横須賀市における地方分権型条例整備の取組みです。まず、表題に出てくる「地方分権型条例」という言葉、ちょっと耳慣れない、横須賀市だけが使っているのかわかりませんが、横須賀市では、住民自治の視点という形で市民参画・市民協働の仕組みを取り入れて地域の実情に則して制定する条例、いわゆる市独自の条例を指して言っています。分権時代にふさわしい市の独自の条例、いわゆる自治条例とか政策条例といわれている条例を、私どもでは「地方分権型条例」と呼んでおります。これから「地方分権型条例」と出てきたら、自主条例、政策条例ということで、ご理解いただければと思います。

 以降、レジュメに従って説明をさせていただきます。それぞれレジュメの順番で資料が綴ってあります。46ページをご覧いただきたいと存じます。

 横須賀市では、地方分権型条例の整備に向けて、一気にではなくホップ・ステップ・ジャンプということで、第1段階、第2段階、第3段階と段階的に整備を進めていこうと考え取り組んでいます。平成11年7月に地方分権一括法が公布され、その時点では市の職員は、どうしても通達とか準則に頼っていた状況であり、なかなか条例の整備という意識は持っていませんでした。一気に自主条例を制定するまで意識を高めるのは難しいであろうということで、段階的に進めていくことを考えました。

 まず、第1段階(ホップ)は、地方分権一括法の施行(平成12年4月1日)前までの取組み。これは、まず職員に対しての意識付けというようなことで、地方分権推進に向けての取組指針を策定し、各職員に周知しました。これから分権型時代が来る、私たち自らが分権の理念である自己決定・自己責任を踏まえ条例をつくっていかなければならないのだということをアピール、啓発しました。啓発をする中で、実際に私たちはどのような形で条例を整備すればいいのかということがあり、具体的な取組み方針として「地方分権に伴う条例等の整備方針」を策定しまして、その整備方針に基づいて条例を整備していくのだということとしました。そして、地方分権一括法施行の平成12年4月1日までに、「〜ねばならない規則条項等」の整備を行い、61条例を整備いたしました。

 第2段階(ステップ)は、先ほど申しましたように、横須賀市は、平成13年4月1日に中核市へ移行したわけですが、中核市移行に伴って、多くの権限が横須賀市に下りてきます。その権限に対応すべく、条例を整備しなければいけないものがあり、これを第2ステップとしました。

 そして、第3段階(ジャンプ)は、第1段階、第2段階を経て、職員の分権意識が高まってくる。そうした中で、本来の地方分権が要求する政策条例、地方分権型条例の制定に取り組んでいこうということで、これについては、平成13年4月1日以降、中長期的に取り組んでいくという流れをつくって進めていく、としました。

 いま、述べましたホップとステップ、第1段階と第2段階は条例の形式的整備、そして、第3段階が条例の実質的整備への取組になります。それでは、順次、時系列的に説明させていただきます。

 47ページの「地方分権推進に向けての取組指針」ですが、この指針は平成11年5月20日に策定いたしました。助役名をもって各部長に通知しました。意図するところはそれぞれの職員の意識啓発をするとともに、地方分権への取組みの推進体制をまずつくろうということです。あわせて、各課に地方分権推進主任者を配置し、各課が責任を持って分権を進めていくことと、庁内の役割分担を決めています。

 48ページです。平成12年7月16日に地方分権一括法が公布されて、自治省、今の総務省のほうから分権の制度説明があり、県のほうからもありました。そうした中で、横須賀市としての具体的な条例等の整備方針を立てなければ、なかなか庁内対応できないであろうということで、平成11年9月1日、「地方分権に伴う条例等の整備方針」を策定し、これを庁内に周知するとともに、各課の地方分権推進主任者あてに、これに基づいて条例等の整備をするように通知しました。

 そして、この整備方針の主な内容ですが、「1」は「本市の基本姿勢」です。@の「地方分権一括法が要請する事項への対応」、これは、どこの自治体も同様に対応あるいは取り組むべき事項で、地方自治法第14条第2項の権利義務に係るものの条例化です。これは、「〜ねばならないもの」「規則条項等の条例化」です。そして、Aの「わかりやすい条例、規則体系等の整備」、これは、本市が独自に取り組む事項の条例化ということで、第14条第1項の法令に違反しない限りにおいて条例が制定できるという条文を積極的に活用し、条例整備を進めていこうという姿勢を示したものです。

 この、Aの内容については、「3 条例等の整備に当たってのポイント」をご覧ください。枠囲いの@ですが、「従来規則等で定めていた事項の条例化を積極的に進める」。機関委任事務ということで規則で対応していた事項について、権利義務事項については、条例化しなければなりません。ただ、1口に権利義務事項の条例化といっても、なかなか分けにくい。例えば1つ届出においても、義務のものであれば条例化、行政処分の付款であれば規則でよいということになります。市民にとっては、同じ届出でありながら片や条例、片や規則という、なかなかわかりにくい状況になるという視点があります。これについては、市民に手続を求めるものは極力条例化していこうということとしました。Aですが、手数料も条例化しなければならないということになり、一覧性に優れた、わかりやすい一括手数料条例を制定するという方針です。「わかりやすい条例、規則体系の整備」ということは、第14条第1項の視点から、市民本位の条例をつくっていこうという姿勢を、整備方針として打ち出しました。

 この整備方針に基づいて、平成12年4月1日までに整備した条例が49ページ上段、「地方分権一括法の制定に伴い整備した条例数」に掲げたものです。そして、平成13年4月1日の中核市移行までに整備した条例が11です。

 次に、50ページの「地方分権一括法の制定に伴い本市が独自に整備した条例等の事例」及び51ページの「地方分権一括法に対応する条例整備における積極規定」の例につきましては、条例整備方針に基づいて、横須賀市として独自に規定を設けて整備した条例の例の資料です。後ほどお読みいただければと思います。

 そして、52ページの「地方分権型条例を制定へ」です。ホップ・ステップ・ジャンプのジャンプの段階、実質的条例の整備として掲げている7つの項目です。この資料は、平成13年2月の記者発表資料です。言ってしまったら「後退はできない」「やらなければならない」ということで、横須賀市としての地方分権に対する姿勢を見せるということで、記者発表しました。そして、この資料にありますように、地方分権型条例について書いています。「見えにくい地方分権改革を『見える分権』にしていかなければならない。そのためには、自治体の知恵と工夫によって、全国一律であった行政の手法を変えていく必要があると考えます。本市では、市民の参画・協働の仕組みを導入し、地域の実情に合った条例の制定を目指して積極的に以下の取組みを行っていきます」ということで、7項目を掲げております。

 1番目の「まちづくりに関する条例の体系的整備」、今考えているのは、「まちづくりに関する基本条例」、その基本条例を受けて、その下に、「土地利用に係るまちづくりの推進に関する条例」、「特定定商業施設の立地に係る周辺地域の生活環境の保持に関する条例」、「開発行為に係る調整及び紛争調整に関する条例」を整備し、体系的にまちづくりを進めていこうとするものです。ここには書いておりませんが、屋外広告物条例や都市景観に関する条例も含めて体系的にやっていこうと考えています。ただ今、金沢市さんからまちづくり条例に関しいろいろ説明がありましたが、横須賀市にはまちづくりに対する羅針盤的なものがありません。明確に「こうしたまちづくりをしていこう」という指針がなく、それぞれの個別の条例の中で対応しています。

 まちづくり条例については、ニセコ町のまちづくり条例に代表されるように、自治基本条例的なものがあります。また、各分野別における基本条例というような形で、まちづくりに関する基本条例とか、環境基本条例とか、各分野別の条例がありますが、横須賀市のまちづくりに関する条例の体系は、個別分野の基本条例というような形で整備していこうと考えています。この整備しようとする背景ですが、まずは、一番下にあります「開発行為等に係る調整及び紛争調整に関する条例」の整備を目指していました。開発に関しては開発行為指導要綱により行政指導をしていましたが、行政指導では、相手側の任意協力がなければということで、なかなか効果的なまちづくりができない。機関委任事務制度がなくなり、条例が制定できるということで、開発指導要綱の条例化を進めていました。こうした中で、開発行為だけではなく、それぞれ全体的にまちづくりの基本理念とか方向性を示す基本的な条例が必要ではないか。その1つとしては、基本構想・総合計画がありますが、計画だけでは、なかなか実効性は伴わない。あくまでも計画である。その実効性を伴うためには、条例を制定してきちんと対応をしていかなければならないということとなりました。

 そして、現在、開発行為等に係る調整及び紛争調整に係る条例について、平成13年度の制定に向けて検討しているところでございます。本来は、基本条例が先で、それを受けて個別条例ということになりますが、現状で早急に求められている対応を先にしていこうという考え方で進めております。

 2番目に、資料は「仮称」になっておりますが、「市民協働推進条例」は、平成13年7月1日から施行しております。この条例の制定に先立ち、市民協働型まちづくり指針、市民活動促進指針が策定されており、この指針をもとに、市民と協働によりこの条例を制定しました。一般に市民との協働により条例を策定する場合には、行政側がたたき台を示すということが多いのですが、今回、横須賀市としては初めての試みとして、何も示さず、全く白紙の状態から、市民と協働で条例素案をつくり上げました。いろいろと試行錯誤がありました。当初は、市民協働推進条例ということではなく市民活動促進条例として検討していました。そうして議論を重ねていく中で、やはりこれからは「市民協働」を前面に出していく必要があるのではないかということで軌道修正し、前文付きの条例ができました。これは、本市として、まさに市民協働を実践した価値ある市民協働推進条例かなという感じをもっております。

 3番目に、「パブリック・コメント手続条例」ですが、平成13年9月20日に公布いたしまして、平成14年4月1日から施行します。ただ、施行前であっても、可能なものについては、できる限りこの条例に則してパブリック・コメントをかけるということを附則に規定しております。パブリック・コメント条例の内容が、右のページに書いてあります。従前の市民参画については、一番上の枠にありますように、個別の市民参画という形で審議会への市民公募や市民アンケートによっていました。今回、横須賀市としても、滋賀県、北海道、岩手県というような先進自治体と同じように、パブリック・コメント手続、真ん中の枠の部分、これを行政の責務という形で組み込みました。パブリック・コメント手続の予告、そして政策等の案の公表、政策等の案に対する市民からの意見の提出、提出された市民の意見等の考慮、そして、提出された意見に対する市の考え方の公表と修正した政策案の公表。これを行政の責務として、条例として義務化いたしました。

 これから分権時代、条例時代においては、自治体の意思決定は議会の議決を経た意思決定が住民自治の視点から大切であるとして条例化いたしました。また、条例をパブリック・コメントをかけるのにその手続規定が要綱はどうかという視点もありまして、条例として制定いたしました。制定に際しては、庁内各部から1名ずつ委員に出てもらい、庁中検討委員会をつくり、本市分権推進専門委員となっていただいております上智大学の北村教授のアドバイス等も得ながら、この条例を制定しました。このパブリック・コメント手続条例については、この手続条例の手続に従って、パブリック・コメントを実施いたしました。

 特徴といたしましては、これを条例化したということ。パブリック・コメント手続の予告制度を入れたということ。インターネットが普及してきたとはいえ、まだすべての家庭で、誰しもがインターネットが使えるわけではないということで、全家庭に配布される「広報よこすか」でパブリック・コメントの予告をいたします。そして、実効性確保策を設けたこと。各部の副部長を実施責任者とする予定です。庁内の説明会の中では、このパブリック・コメント手続をかけないとすると条例違反となり、地方公務員法違反に問われるというケースもありうるなどの冗談も言いました。そして、実施状況を第三者機関に報告するということ。横須賀市の行政手続審議会にその状況を報告する規定を設けております。これがパブリック・コメントの内容で、条例の本文については、次ページから57ページにかけて記載のとおりでございます。

 そして、4番目が「(仮称)男女共同参画推進条例」です。これは12月議会に向けて現在検討しているところであります。この男女共同参画推進条例素案についても、パブリック・コメント手続にかけました。

 5番目が「情報公開条例」です。これは、それぞれの自治体で改正がなされておられると存じます。本市では、これまで公文書公開条例ということで、対象は有形文書だけでした。これに審議会等会議の無形情報も対象に加えて、総合的な情報公開の推進を打ち出しました。

 6番目が、「『行政手続条例』の改正」です。従前は、市の行政指導に関する監視機関、行政指導に対して不服があった場合についての救済機関として行政指導審査会を設けていたわけですが、これからは行政指導に特化する事項のみならず行政手続全般に対象を広めて、市の行う行政手続に対して建議もできるというよう、行政手続審議会に改組しました。

 7番目の「電子行政手続に関する条例」です。本市では、本年10月10日から全国に先駆けて電子入札を始めました。当面は試行期間という形で、契約規則等の整備はまだ行っておりません。その中で現在入札試行対象としているのは土木と建築の業務それぞれの一部で、物件調達、業務委託等については、今後の対応としています。電子手続に関する条例については、手続を文書で行うという規定や、本人確認をどのように行うのかなどの問題を含めてこれから検討していくということで、現在検討段階でございます。

 以上、時間の関係で大変早口で申しわけございませんでしたが、「横須賀市の地方分権型条例整備の取組み」とさせていただきます。ありがとうございました。

【天野】ありがとうございました。

 ご承知のとおり、地方自治には団体自治と住民自治とがあるわけですが、今回の制度改正によって団体自治が明確になってきたのですが、横須賀市の分権型条例整備の取組みについては、この団体自治に伴う条例整備を図ったものと、もう一方、パブリック・コメント手続条例に見られるように、住民自治の視点からの条例制定ということで、独自の取組みがなされているという事例を発表していただきました。

 最後になりますが、自治体の法務政策の担い手としての職員の意識改革、人材開発について広域連合制度を活用して、埼玉県を中心として市町村とで自治体の法務についての独自の取組みをしている事例として、彩の国さいたま人づくり広域連合事務局専門調査員の清水さんよりご報告をお願いします。

彩の国さいたま人づくり広域連合の取組

【清水】彩の国さいたま人づくり広域連合の清水と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 まずは、私ども彩の国さいたま人づくり広域連合の紹介をさせていただきたいと思います。お手元のパンフレット、「ヒト財産、築きます」というパンフレットをお願いできますでしょうか。まず、設立の趣旨をご説明させていただきます。

清水久仁彦氏  お開きいただきまして、右ページ上にありますが、地方分権の進展に伴いまして自治体の役割と責任が増大する中で、そこに働く人材の開発と確保がすべての施策の基礎として大変重要な課題であるという認識のもとに、この自治体共通の課題に埼玉県と埼玉県内全市町村で共同して取り組むため、私ども広域連合は設立されたものでございます。

 下に沿革がございます。平成2年以降の検討を経まして、平成11年5月14日に設立許可をいただきまして、同年7月1日から業務を開始しております。現在70を超える広域連合が全国にあるとお聞きいたしておりますが、私どもの広域連合は自治体職員の人づくりを専門にしていること、それから、埼玉県と県内すべての市町村が参画していること、という特色を持っております。このため、事業展開に際しましては、人づくりに関して県や県内全市町村、90の市町村になりますが、これらの持っているノウハウ、ネットワークを活用すること、それから、構成団体が91というスケールメリットを生かして事業を実施すること、を可能としております。

 私どもの事業ですが、人材開発事業、人材交流事業、人材確保事業の3つを柱としております。パンフレットをおめくりいただきまして、人材開発事業ですが、この事業は広域連合の組織の1つであります自治人材開発センターにおきまして、県と市町村の職員研修と政策研究を行っているものです。自治人材開発センターは、かつての埼玉県自治研修センターが広域連合発足時に広域連合の組織となったものです。

 この自治人材開発センターで今年度実際に行っている研修につきましては、本日の資料62・63ページに「自治人材開発センター人材開発体系」という資料がございます。中ほどに研修の名称がございまして、県職員研修は左から線が引かれているもの、市町村職員研修は右から線が引かれているもの、そして、両方から線が引かれているものが県と市町村の職員の共同研修でございます。市町村職員と県職員との共同研修、これが18コースありますが、市町村は、その18コースを含めまして全部で50コースの中から、それぞれ主体的に選択して職員を参加させています。

 広域連合となってからの研修の特徴を市町村職員研修を中心にみますと、まず、研修のコース・内容の充実とともに市町村職員の研修機会、すなわち受講枠の拡大を図っているということが挙げられます。それまでは、市町村における研修体制の充実を支援するということから、講師、研修スタッフの育成に重点が置かれていましたが、広域連合となってからは、62ページの体系の一番上の右側にありますように、市町村の新規採用職員、係長、課長といった階層別の職員研修を直接行いますなど、研修のコース・内容の多様化を図っておりまして、受講生も、広域連合設立前の平成10年度は約1,000 人でしたが、平成13年度は約5,000人の市町村職員が受講を予定しています。

 2点目としましては、市町村職員と県職員の共同研修を大幅に増やしているということが挙げられます。従来、例えば平成10年度は、市町村・県の職員をあわせて200人程度の規模でしたが、広域連合となりましてからは、今年度の予定が市町村と県をあわせて約2,400人というように飛躍的に拡大しております。このように、市町村と県の職員が共に学び、意見交換をするということによって、視野の拡大、相互啓発、相互理解も図られるものと考えております。

 本日の話題に関する研修としましては、市町村職員研修では、一番上の階層別研修の中に主事・技師級研修がありますが、この中に6時間の法制執務のカリキュラムを設けていましたり、選択研修では、ご覧いただいているような各種の法律コースの研修がございます。それから、下のほうに政策形成コースがありますが、こちらに政策法務研修を設けております。そして、63ページ中ほどの講師養成研修・スタッフ育成に、法制執務などに関しまして講師養成研修、講師研究会がございます。

 次に、人材交流事業と人材確保事業についてご説明いたします。この2つの事業は市町村だけを対象としております。パンフレットにお戻りいただきますと、真ん中に人材交流事業がございます。この事業は、職員が専門知識を習得したり、幅広い視野の養成を図るため、市町村間の職員交流、市町村職員の民間企業派遣、あるいは大学院への派遣を促進しているものです。その中の市町村間職員交流について申し上げますと、先ほど申し上げたとおり、埼玉県には90の市町村がありますが、平成13年度は画面にありますように、50の市町村で市町村間の職員交流が実施されております。この中には、ある町の職員がある市に2年間派遣されて法規審査を勉強している、といった事例もございます。

 次に、人材確保事業です。パンフレットの右側にありますが、市町村単独の取組みでは採用が難しい専門技術職員や多彩な人材の確保を支援しているものでございます。次年度に採用を予定している市町村が一堂に会して説明会をしましたり、現在は、採用が困難な専門技術職員として、保健婦・保健士の採用交流セミナーをしたり、ホームページ等によりまして県内全市町村の採用情報の発信を行っているところでございます。

 これからご説明いたします市町村法制執務バックアップ事業は、この事業の一環としまして、市町村において法制執務に専門性のある人材を確保するための支援という観点の検討から生まれたものでございます。

 パンフレットをめくっていただくと、組織の図がございますが、私どもも1つの自治体としてこのような組織を持っております。職員は、埼玉県又は県内市町村から派遣されている者だけでして、全部で38名おります。事務局において人材交流事業と人材確保事業を担当いたしまして、自治人材開発センターにおいて人材開発事業を担当しております。

 それでは、市町村法制執務バックアップ事業についてご説明をさせていただきます。セミナー資料の65ページをご覧ください。この事業は、埼玉県内市町村の法制執務能力の向上を図るため、法制執務に関する課題の解決や人材の育成を支援するものです。「政策法務アドバイザー制度」と「法制執務インターネット会議室」で構成しております。政策法務アドバイザー制度は本年4月から、法制執務インターネット会議室はそれに先立ちまして本年3月から開始しております。現在も、試行錯誤しながらこの事業に取り組んでいるところでございます。

 政策法務アドバイザー制度は、左半分にありますように、政策法務の実務指導や職員研修の講師として、政策法務の知識・経験が豊かな人材をご紹介するものです。現在、アドバイザーには、6人の埼玉県職員OBの方々に登録をいただいております。6人は、皆さん、県の文書課で法規審査を担当されておりまして、その後、総務部長、環境部長といった県の要職を歴任された方々です。広域連合では、市町村の依頼に応じてアドバイザーをご紹介いたします。アドバイザーは、Dにありますような指導を原則として、その市町村において行うものでございます。

 この制度によって、先に実施された事例がこちらです。依頼のあった市に赴きまして、法制執務研修をかつて受講されてから日が経っている係長級の方々を対象に、研修を行ったものです。演習事例も、その市の意向に基づきまして、「ポイ捨て禁止条例」を取り上げています。この研修には25人の方々が参加されましたが、政策法務アドバイザーの講義について、「経験に基づく豊富な話題でよかった」とか、「研修がとてもタイムリーだった」というような感想をいただいております。アドバイザーは、自治体職員として様々な試練を上司、同僚、部下と共に乗り越えてきた先輩ですから、アドバイザーが行う研修では、経験の浅い若手職員の方から研修の機会が少なくなっている管理職の方々の研修まで、幅広い対象に応じて、内容についても、その市町村の意向や実情に応じて設計いたしまして、わかりやすく説得力のある指導が期待できるものと考えております。現在、何件かのご要望をいただいておりまして、調整に当たっているところでございます。今後、さらに、いろいろな活用のされ方、指導の事例を積み重ねていくことができるものと思っております。

 法制執務インターネット会議室ですが、右側をご覧ください。私どものホームページにつくったものでして、法制執務に関する疑問点などの相談や意見交換ができる場を設けていましたり、法制執務に関する情報の発信を行っております。この会議室における相談や意見交換は、主として構成団体の職員によって行うこととしまして、構成団体で協力し合い、切磋琢磨しながら職員のレベルアップを図ることを目指しております。ですから、@の法制執務担当者の会議室にありますように、相談や意見交換は掲示板方式の会議室に発信していただきまして、この会議室を開けばどなたでもそれをご覧いただけ、意見や助言を返信できるようになっております。また、こうした相談等に対しまして、広域連合では、Aの法制執務相談室にありますように、会議室での検討内容を踏まえ、関係機関の協力をいただいて、考え方等の補足を必要に応じて行うこととしております。

 最後に、情報発信ということで、法制執務に関する情報発信を行っております。実際に、ここで会議室をご覧いただきたいと思います。資料では66・67ページにございます。

 現在は、法制執務担当者の会議室、法制執務相談室、政策法務アドバイザー室、資料集で構成しております。画面でご覧いただいているように、出していただくとこういった形でご相談が示されます。ご相談の提示は、埼玉県内の市町村職員だけに限っておりますが、それに対するご助言は、特に限定しておりませんので、是非皆様にもときどきご覧をいただいて、ご助言等いただけたらと思います。

 それから、政策法務アドバイザー室では、制度の概要や要綱の紹介をしておりますほか、指導事例を掲げております。資料集としましては、当広域連合の自治人材開発センターの研修テキストでありますとか、埼玉県の協力をいただいて、県の文書課が発行された法制執務事例集、それからメールマガジンであります「分権時代の政策法務」を掲載しております。

 事業の概要は以上のとおりですが、私ども、この事業の検討を開始する際には、各市町村にお願いして調査をいたしました。今市町村はどのような人材を必要としているかを知るためですが、その中で、「法制執務の知識・経験が豊かな人材に指導が受けられるシステムができたら、利用したいと思いますか」という問いに対しまして、72%の市町村から「利用したい」という答えをいただきました。これを分権時代の要請と受け止めて事業化した経緯がございます。しかし、今のところは、各市町村から大いに活用されているというところまでは至っておりません。中身の性格上、そう気軽に利用できないと思われていましたり、インターネット会議室については、インターネットを使いやすい環境にいる職員はまだ多くないといったことがあろうかと思いますが、私どもとしては、試行錯誤の中で、少しずつでも実績を積み重ねながら、市町村の期待に添うものとなりますよう、活用の幅が広げられるよう、引き続きこの事業に取り組んでいきたいと考えております。

 私ども彩の国さいたま人づくり広域連合は、お話してまいりましたように、設立からまだ3年度目というところですが、埼玉県内自治体職員の人づくりに、市町村や県と共に汗をかき、貢献できますよう努力と工夫を重ねてまいります。皆様のご指導、ご協力をお願いいたします。私からの報告は以上でございます。

【天野】ありがとうございました。

 広域連合制度は、広域行政を行うという趣旨から、最近では、ご承知のとおり、介護保険制度で行う例が増えてきましたが、今のご報告の中で、人間、情報源、2つの「ゲン」といっていますが、これを県と市町村とが広域連合で行っているという事例は、多分全国でもまだ珍しいし、初めての事例ではなかろうかということで、ご紹介をいただきました。

 以上、報告していただきましたが、ここで、最後にご報告があった、これからの法務の担い手としての自治体職員の人材養成というものも緊急課題になってきます。もう少し時間をいただいて、横須賀市と金沢市の人材育成の例をお話いただけたらというふうに思います。まず、横須賀市からお願いします。

人材育成について

【齊藤】それでは、横須賀市の関係で、セミナー資料58ページと「中間まとめ」の56ページをあわせて見ていただきたいと思います。

 まず、「中間まとめ」56ページの下の枠囲いのところにありますように、横須賀市の政策法務能力を拡充するための研修体系というのがございます。横須賀市としては、これから分権時代を担うのは、最終的には職員であり、職員の能力をいかに高めていくかが一番大切であろうと考えています。そのためにどうするかということで、研修体系を構築しました。1つは、この枠囲いに出ておりますが、希望制の研修です。ここでも横須賀市は3つのステップを考えています。まず第1段階としては法制執務研修。法を理解してもらう。どのような構造になっているか、どのような解釈をしていくのか。「及び」「又は」とか、言葉1つでもやはり解釈は違ってきますので、まず最初に法令執務研修を行います。

 第2段階としましては、政策形成研修で、実際に課題認識をし、政策としていくこと、個々の課題を抽象化し政策を形成するまでの能力を身につける研修。

 第3段階は、法制執務、政策形成研修を経た段階で、その政策を実現するための法令解釈、条例化能力を身につけるという政策法務研修を行います。

 このように段階的な取り組みにより、政策法務能力向上のための体系的研修を実施しております。第1段階の研修については庁内の講師での対応とします。第3段階の政策法務研修については、庁内の講師ですと、どうしても旧来の法令解釈となり、なかなか幅広い解釈ができないということがありますので、外部講師を頼んで研修しております。

 あと、ここには書いてありませんが、階層別研修の中に法制執務研修を組み込んでいます。それぞれ職員が主査になり、主幹に昇任したところで、階層研修を受けます。この階層研修の中にも法制執務の研修を取り込んでいます。これが、本市の研修体系です。

取組状況報告  もう1つとしましては、これからの分権時代においては、原局・原課が条例素案まで作成できるのが望ましい姿ですが、なかなかそこまではいっていません。その対応ができるまでの間、セミナー資料58ページにありますように、「政策法務委員会」というものを設置いたしました。この政策法務委員会の役割としましては、概要にありますように、「分権型条例制定指針」 ─どのようなものを条例とするのか、これは規則でよいのか─ 本市としての指針を示すものとして、分権型条例の制定指針を作ること。そのほか5つの項目を掲げております。

 そして、委員会は10名の委員で構成します。組織委員としては、法規担当の行政管理課が入ります。基本構想・総合計画の観点から企画調整課の職員が入ります。財源を伴うものもあるだろうということで、財政課の職員も組織委員として入ります。指名委員としては、政策推進・法制執務の経験者ということで市長が指名する者2名が入ります。そして、公募委員としては、庁内から意欲のある者を公募し、選考して4名が入ります。合計10名で政策法務委員会が構成されています。委員の身分は、全員行政管理課の併任となります。併任することによって、単なるプロジェクトチームの委員と違って、本人たちも行政管理課の職員として、責任を持って仕事をやってもらうこととしています。

 このような形で、横須賀市としては職員の能力アップを図っていこうと考えております。以上、報告させていだきます。

【中島】金沢市でございます。市全体といたしましては、政策研究所というところを設けまして、職員研修所と連携した中でゼミナールということで、大学の先生を中心にして、そこに数名単位で市の職員と一緒にテーマを決めて研究をする、そういった活動を行っていますし、いろいろな研修会にも積極的に参加するようにしています。

 条例関係ということになりますと、どうしても、条例をつくるというより運用の立場に実際当たることが多いわけですが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングに近い形を重視しています。どうしても経験の蓄積、そういったものを常に皆で共有していないといけませんので、いろいろな外部への説明をする機会、地元との話合いの場などに若い担当者も連れていって、責任を持った仕事をしてもらっています。実際自分の仕事になると、皆さん一番真剣に取り組みますので、できるだけ年齢層が重ならないような形で担当してもらい、それぞれに責任を持っていただいて仕事をしてもらう。そういったことによって問題意識を高めるということをやっています。

【天野】ありがとうございました。いわゆる、今までの私の主張している総務管理型の法務から企画構想型の法務へ、いくつか模索している事例を挙げていただきました。 以上で報告は終わりましたが、まだ多少時間がありますので、ここで会場からのご質問の時間を設けたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。ないようでしたら、具体的にはあとで相談コーナーのほうにいただければと思います。

 それでは、取りまとめに入らせていただきます。自治体において、地域個別的な政策課題について、現状を踏まえて、自己決定、自己責任のもとで、市民にとって身近な政府としての責任を果たすべく政策を展開する事例が増えてきたということは、今のご報告でもおわかりいただけたと思います。

 自治体の政治・行政における自治体法務は、政策の具体特定をめぐって、まず自治解釈が前提となり、次に自治立法の分野が構成されてくるというふうに私は考えております。また、これにの作業の軸には、先ほども横須賀市の事例発表にもありましたように、自治体総合計画があって、その計画に沿い条例の制定あるいは個別法の検討を行い、さらには、そこで条例化を行って予算化の上、政策が展開されるというのがフローであろうかというふうに思います。

 社会変化という政治の要請から自治解釈を踏まえ、また、事務としての法制執務の日常法規事務と密接に関連しながら、政策展開の手段、手続として、「法令に違反しない限り」の解釈をめぐり、今後とも自治立法としての条例制定について、取組みあるいは模索をしていかなければならないのではないでしょうか。

 本日は、今最も自治体にとって重要かつ緊急な課題となっています「自治体政策と条例」について考えてきました。短い時間ですが、お付き合いをいただきましてありがとうございました。以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

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