地方分権推進本部報告

地方分権時代における条例制定の可能性と課題
−「地方分権時代の条例に関する調査研究」の中間まとめから−

地方六団体地方分権推進本部事務局長
吉 田  敏 治

吉田敏治


 皆さん、こんにちは。地方六団体が共同設置しております地方分権推進本部の事務局長の吉田と申します、よろしくお願いします。本日のセミナーに多数のお申し込みをいただきまして、誠にありがとうございました。全国の自治体の皆様の熱意を感じ、また、私も感動しております。

 早速ですが、この時間帯の目標が2つございます。1つは、いまお手元に午前中から活用されております「中間まとめ」がございます。これに親しんで引き慣れてもらうということを1つ考えております。もう1つは、予めご質問をいただいておりますので、質問への対応をさせていただきます。その2点を、この時間帯でやります。

 「中間まとめ」は、お伝えすべきことを一通り盛り込んだつもりでございますが、そうしたらこんな大作になってしまいました。もちろん、私どもとしては通読をいただきたいということになりますが、皆さん、仕事に戻られるとなかなか難しいかもしれません。斎藤先生の基調講演でも「中間まとめ」が何度も引用されていましたから、全体の構成ですとか勘所といったものはご理解いただけたのではないかと思いますが、後半の資料編はいったい何かということもあります。この時間帯では、別の紙にどんどんメモすることは要りません。そうではなく、「中間まとめ」のどこに何があるかということのチェックをしてもらうような時間帯にして、それで概要をつかんでもらいたいと思っております。

 この「中間まとめ」は、それぞれの自治体の公用分は別に送ります。それから、残念ながら本日出席してもらえなかった方の分も送りますから、それはご心配要りませんので、お手元のは自分用だということで名前も書いてしまって、これにどんどん印を付けていただいて汚して、この時間帯で自分のものにしていただければいいなと思っております。

 もう1点は、セミナーに寄せられた質問にお答えしていきます。それとともに、今後のご疑問への、私どものホームページ上での対応について触れていきますので参考にしていただきたいと思います。この時間帯はそんなに長くとっていませんから直接の質問は受けかねるのですが、ホームページにどんどん気楽に書いてください。お答えしていきます。

 それでは早速ですが、レジュメで言いますと11ページからですが、「1 分権改革の流れの中で」とありますが、ここは「中間まとめ」をめくりながら説明を聞いていただければ結構でございます。

 まず、「分権型社会の創造に向けて」ということで、いろいろと言わなければいけないことはありますが、まず「中間まとめ」の1ページ、「1 はじめに」と題して書いていますが、いま地方分権の流れを詳しく述べる時間がございません。それで、午前にも引用いただきました「地方分権推進委員会の最終報告」、これはいいです。いいですと言うと悪いのですが、地方分権のこれまでの流れを概観しているし、今後の姿についても展望しているということがありますので、私は地方分権ということに関して現時点でのスタンダードな資料であるというふうに思っております。

 さて、その委員会ですが、本年7月で任期満了解散となりました。ですが、引き続き内閣府に地方分権改革推進会議が設置されております。地方分権の一層の推進を図る観点から幅広い調査・審議が行われております。また、政府が作成した地方分権推進計画に基づく施策の実施状況等の監視活動もしていただいております。そういった活動と連携して、私ども地方分権推進本部は、地方の立場、実情が適切に反映された形で地方分権が進展するよう努力しています。そうしたことの一環として、条例への対応もしています。

 「中間まとめ」の3ページから、主な改正点を掲げております。ざっと見ても、見出しだけで結構ですが、3ページ(ア)で「自治体と国との役割分担」、4ページ(イ)で「機関委任事務制度の廃止」、6ページ(ウ)で「国等の関与及び係争処理」というふうに、非常に幅広い改革がなされており、言ってみれば、基本的な在り方、事務の類型、手続、といった面でそれぞれ大きく変化しております。いずれの点からも、自治体の仕事の進め方、職員の対応というものは、どうしても変化を迫られるわけです。その点を予め踏まえることとして、9ページ以降にまとめておりますので、後でご覧ください。このような変化があるだろうということですが、そうした変化が最もはっきりした形で出るのが条例制定の分野であろうというふうに思っております。

 そういうわけで、条例制定支援事業の説明ということになりますが、当本部としては一括法施行直後の平成12年度から支援事業をやってまいりました。1つは、独自の政策を推進するための条例。「自治体政策と条例」と書いておりますが、そういったタイプの条例の制定状況も調べて情報提供をしております。もう1つは、そういった条例制定の基盤となる法制の実務というものも大事だろう。「政策法務」という言い方をされる方が多いのですが、普通名詞で言えば「法制の実務」でしょう。そういう条例制定の推進体制の整備の問題もこれは含めなければいけない。

 私どもの地方六団体というのは小さな団体もお客様でございますので、先進的なところがやっている状況ばかり追うというわけにもいきません。推進の体制も大事だということも含めて、これは有識者の助言を得ながら研究会をしていこう。そして、本日のような研修会等もやっていこう。それから、自治体からの相談を受け付けていこうという中味でやっているわけです。

 それは細かく言いますよりも、本日のレジュメの冒頭に挨拶文「開催に当たって」というのがありますが、その下のところに当本部のホームページの「分権ネット」、ここにおいでの方はもうご覧になった人は多いと思いますが、ホームページアドレスを挙げております。「分権ネット」の中に「条例研究室」というコーナーを持っておりますから、そこをご覧いただいて全体像をご理解いただきたいというふうに思っております。

 「地方分権時代の条例研究会」は、斎藤先生が座長ですし、後でコメンテーターをお務めいただく天野先生も委員でいらっしゃいます。「中間まとめ」の171 ページに設置要綱がありますから、これでご覧ください。そして、172 ページに委員の名簿を掲げてございます。

 研究会の運営に当たって気をつけていることを2点ほど申し上げます。皆さんの自治体で有識者の方と連携していかなければいけないということがこれから非常に多いと思いますが、その上で参考になるかと思います。

 1つは、学問の世界と自治体の現場とのあいだのバランスをとった研究会ということです。何を言っているかというと、いま見てもらった名簿で言いますと、3番目に事務局職員と遠慮して書いておりますが、実は2番目のグループの方々と並んで皆自治体の職員でございます。要するに、せっかく学者の方々から貴重な意見をいただいても、黙って拝聴していたのではいい研究になりません。多くの自治体の職員が予習をした上で、学者の方々を取り囲んで、遠慮せずに「現場ではこういうことがありますよ」ということを言うことで、学者の方もまた思い直しがあるし、初めて議論になるということがあると思います。ですから、そこは慣れた者が先生のところへ行って伺ってくるというのではなく、プロジェクト的にやっておかないといけない。人手が足りない中でも、何かやるときはプロジェクトというのがいいと思います。

 もう1つ研究会で気をつけたのは、研究会への提出資料、それから、研究会で出された意見というのはその都度「分権ネット」に掲載しております。まあ、掲載したときが役に立つ時期です。私どもとしても、普通の研究活動のように年度末にまとめの報告書を出していったほうが役人の仕事としては楽ですが、それだと、2月、3月の議会に向けて皆さん方は大抵の場合苦労なさっているのに、2月、3月の議会に間に合わなければしようがないことです。そこで、なんでも節目が秋に来ます。秋に始めたし、秋に研修会をやっているというのもそのような事情でございます。そういうことで、その都度「分権ネット」に載せていくというやり方をとっているというのが特徴です。

 そんなことで、レジュメで言うと12ページになりますが、「条例の規定内容をめぐって」というところの話をさせていただきます。ここでは、「中間まとめ」の11ページに、「自治体の条例制定の動向」という説明がありますが、それと75ページの資料2「最近、自治体において制定されている条例」という2箇所を対照して読ませていただきます。それから、86ページから資料3がございますが、これは虫眼鏡で見るような資料が付いていますが、「自治体における条例制定状況」です。資料2と同じ分類で、自治体からお寄せいただいた条例を悉皆的に並べております。合計1,132 本あります。これは、条例制定のきっかけの区分も自己申告ベースで付けてあるので便利かと思います。例えば、皆さんのところで、先行して制定している団体に問い合わせるということのきっかけになると思います。そういう索引として利用いただければいいのではないかと思っております。

 それで、レジュメに「一括法施行に伴い必要とされた部分、その他の部分」と書きましたが、皆さん共通に参考になるであろう情報ということで言いますと、「一括法施行に対応して何をやったか」ということが1つ共通の契機になりますから、これをまず言いたいと思います。

 一括法施行に伴い必要とされた部分は、大きく3つのグループに分けます。第1には、「条例制定権の範囲の拡大を直接に受けた条例」というのがあると思います。まず、11ページ@、「従前機関委任事務であった事務に関して定める条例」というグループが考えられます。77ページ上段に「公物管理・使用料」という分類がありますが、これは一括法により必要となった条例制定の代表分野です。対象事項別に、各1例のみ掲げているので大して目立ちませんが制定例はすごく多いです。資料で言うと、88〜90ページにズラッと並んでいますのであとでご覧ください。

 それから、「法律に基づく許認可等に関する条例」と11ページにも書いておりますが、これの例としては、83ページ下段、「保健衛生」の分野が多いです。1番目の○と2番目の○で食品衛生法、理容師法、美容師法などに基づいて各種基準を定めている話を掲げております。このほか、都市計画法の開発許可について定めるものもあるし、幅広い分野で制定されております。

 次に、興味深いものとして80ページ下段、「法施行条例」というふうにまとめておきました。これは何かというと、法律に特に委任規定のないものでございます。北海道砂利採取計画の認可に関する条例、横須賀市の、都市計画法の許可の手続きに関する条例、といったものが例として挙がってくるというのが、「従前機関委任事務であった事務に関して定める条例」のグループです。

 それから、11ページにないけれども、第1グループの「条例制定権の範囲の拡大を直接に受けた条例」には、補足的に類型があと2つあります。まず、「法定外目的税を創設する条例」があります。76ページの下段に「税」とあります。河口湖町遊漁税条例、あるいは、三重県産業廃棄物税条例、これはまだこれから施行予定ですが、そういったものが該当します。

 それから、午前中にも説明がありましたが36ページです。条例で過料を課することができるようになりました。この「過料を定める条例」も出てきております。これは資料2では掲げそびれましたが、市町村の下水道条例には設定例がだいぶ多いようです。背景としては、国土交通省のほうで過料を定める条例モデルが示されたということがあるようです。

 以上が、「条例制定権の範囲の拡大を直接に受けた条例」というグループというふうに思っております。

 第2に、11ページAのグループです。「規制的な内容の要綱等を条例化したもの」です。5ページ下の@にありますように、地方自治法第14条第2項が地方分権一括法で改正されているわけですが、これに対応するという意味で、広義の「一括法施行に対応した条例」だということにはなるでしょう。しかし、要綱と条例の関係は、うちの研究会でもちょっと苦労したのですが、よく考える必要がございます。詳しくは49ページ参照、と印を付けておいてください。これは一括法直接対応かというとそうも言えない。そういう問題がございます。

 さて、このタイプは幅広い分野で制定されています。77ページ下段の「通則その他」の最後の、岩手県の、公益法人の設立及び監督に関する条例などはその例です。それから、78ページの中段「青少年・子ども」のところで、石川県テレホンクラブ等営業の規制に関する条例などもそうです。それから79ページ下段「開発行為・建築等」の1番目の○の、八郷町緑豊かなまちづくり条例。同じ分類の一番下の○の、西宮市の、開発事業等に係る紛争調整に関する条例などは、すべて要綱を条例化したというきっかけのものでございます。

 11ページに戻りまして、Bのグループは、興味深い取り組みとして挙げていますが、一括法に対応するということではありません。そこで、第3のグループは14ページCのグループになります。すなわち、「事務処理の特例条例」です。これは41ページ下段で先ほども引用があって、説明がありました。この「事務処理の特例条例」については、規定されている内容が都道府県から市町村への権限移譲、という観点から大変重要でございます。そういうわけで、「分権ネット」に、「条例による事務処理の特例の状況一覧」を載せていますから、興味のある人はそれを見てもらったほうがいいです。

 これは前年同様に、法律に直接根拠がある事務について法律別の該当状況を掲げた星取り表みたいなものをつけているのですが、さらに今年はもう少し頑張りまして、各法律の根拠条項別に該当状況を全部つけましたら、ものすごい膨大になりました。しかも、都道府県ごとに1市町村しか該当がないのか、全市町村なのか、幾つか該当したのかという分類も入れてみました。ですから、この方式による権限移譲がどこまで進んだか、というのはだいぶわかりやすくなったつもりでおりますので、気をつけてご覧いただけたらいいなと思います。

 ここでは関連して、都道府県からの権限移譲に対応した市町村条例を紹介します。法律改正により移譲された事務について言いますと、83ページ下段、「保健衛生」の一番下の○に、熊本市墓地等の設置等に関する条例とございます。これは中核市への権限移譲に対応したものです。そうではなく、県独自の対応から出てきた話としては、77ページ「公物管理」の二つ目の○に、野田市法定外公共物管理条例とありますが、これは県の事務処理特例条例で移譲されてきた事務について制定したということで、新たな流れかなというふうに思います。

 以上、一括法施行に対応した条例を紹介しました。このようなグループになります。逆に言いますと、「その他の部分」というのが扱いが軽いようで恐縮ですが、そうではなくて、資料2にあるのだけれどもいま引用していないような条例のグループは、制定のきっかけ自体が独自なのです。参考になるのではないかというものだけを挙げてございますので、そういう目でご覧ください。

 次に、レジュメの2番目の○の「条例の多様化」について、制定動向から言えることを言おうというわけですが、いま眺めてもらった資料2で、多様化の動向はだいぶイメージが見えてきたのではないでしょうか。ところで、この分厚い資料は、基本的に本年5月時点に調査した結果です。各自治体にお願いしてやってもらったのですが、ここでは、その調査時点以降も制定が進んでいるという分野を特にピックアップして言いたいと思います。

 第1に、75ページ一番上の「基本条例・理念条例」といったもの、それから3番目の「住民参加」の分野、76ページ上の「行政手続」の分野。こういった複合的な領域で条例の制定例が増えています。キーワードで言うと、「住民参加と行政手続」みたいなものが増えています。そういう分野を横断するパブリックコメント手続条例については、横須賀市さんが全国初の条例の制定例ということになります。

 第2に、78ページ2番目、「男女共同参画」の推進も多いです。年度当初から、検討しないといけないと言っていた団体が多かったですが、いまは急速に広がっています。それで、最近制定されている条例では、ドメスティック・バイオレンスの問題、あるいはストーカー行為を取り扱うものが話題になっているという動向がございます。新しい観点から、男女共同参画の条例が組み立てられているようです。

 第3に、78ページ一番下、「住民生活の安全・安定」の中で、いわゆる「ぼったくり防止条例」が出ています。ここでは東京都の例を挙げておりますが、調査時点以降、方々で制定団体は広がっていますから、興味のある人は、当本部に尋ねてください。6月18日の「官庁速報」に、東京都の条例は効果を上げている旨の記事もありましたが、そのように注目を浴びております。

 第4に、84ページ一番下、「農林漁業・農山漁村振興条例」と言うべきものが昨年から制定されてきています。7月には福岡県でも施行されました。この分野は、議員提案のものがあることも特徴です。84ページのところで例に挙げた宮城県、それから、資料に載っていませんが福島県もそうです。議員提案の1つのジャンルになってきているということがあります。

 以上、条例の多様化について紹介いたしました。ここから再び「中間まとめ」をめくりながら説明を聞いていただければ結構です。

 12ページで、「条例制定をめぐる主な課題」を書いています。Bのところで、午前中のお話にも出てきましたし質問にもありましたが、「自治体の理念や住民活動・住民参加について定める条例」というのは重要な条例分野なのですが、本「中間まとめ」では分析をしていないということをお断りしております。

 次に13ページから44ページまで、「権利義務規制条例」がございます。これはもう基調講演で一番大事なところをお話しいただきました。必ずしも研究会の中でも、みんなして同じ方向で「そうだ、そうだ」というふうになるのではないという、大事なだけに微妙な問題を含んでいます。各自治体での判断も、また対応も違ってくるのもしようがない。そこが地方分権の時代なのです。

 いずれにしても、この「権利義務規制条例」が「中間まとめ」の中核部分であり、主に都市計画分野、大店立地分野を例にして考察した結果を、それらの行政分野の法律との関係で各論としてまとめて、それを一般に通じる横断的なテーマとしてもまとめて、(1)法令との抵触、(2)条例の実効性の問題及び(3)都道府県条例と市町村条例に整理してあります。この分野では、後ほど天野先生に総括いただく「取組状況の報告」がありますが、その中で、金沢市さんから紹介をいただく取組が参考になるのではないかと思っております。

 ところで、「中間まとめ」でケース・スタディーに用いた、いわば「土地利用調整」という分野は、判例や学説の宝庫ですが、先ほど制定動向で申し上げたような、ストーカー行為やぼったくりとか、そういう一過性のイベント、一過性の事実行為というものを規制する場合に、同じ議論の筋になるかどうかは私どもは自信がないわけです。同じ権利義務規制の中でもかなり異質な議論の筋がありそうだとは思います。そこはまさに、せっかくこうして条例も増えてきましたから、実務の蓄積を見ながら、皆さんと共に研究をしていくというスタンスでいきたいと思っております。

 次にいきますが、45ページから52ページまでは「指導要綱の条例化」です。基調講演でご理解が進んでいれば有り難いのですが、私からも付け加えます。各自治体の指導要綱は、若い職員の方には空気のような当然の存在になってしまっているかもしれません。しかし、46ページを見てもらうと年表があります。これはなかなか面白い表を作ったつもりなのですが、ここで押さえてほしいのは、指導要綱というのは土地利用の分野を中心に、昭和40年代に必要に迫られて拡大した経緯があります。しかし、そういう指導要綱の基盤である環境というのが、左側の欄、右側の欄を見てもらうとわかりますが、変化してきているということを押さえてほしいのです。そういう事情があるということも踏まえた上で、どうしたらいいかということがあると思います。

 また、要綱による取扱が残る以上、それぞれの担当者は、例えば122 ページにもズラッと裁判例がございます。結構難しいですが、そういう裁判例などで、微妙なケースまで頭の中を整理しないと仕事ができないのです。そういう事情があります。私ども六団体として、条例の数を増やす運動をしているわけではありませんが、条例よりも要綱のほうが実務は楽だろうということをお考えの方がいらっしゃるとしたら、そういうものでもありません。勉強してみて改めて思いますが、これからの実務としても、要綱なら楽とは言えないというのが1つあります。

 それから、レジュメの13ページ、「体制整備について」の議論の部分です。「中間まとめ」の53ページから71ページまで、「政策条例化のための体制整備」です。これは「中間まとめ」のもう1つの目玉で、いろいろと調査させてもらった結果を事務局で苦労してどうにかまとめました。53ページからの課題に掲げたように、人の面でも組織の面でも、皆さんご存じのとおり苦労が多いです。特に55ページで訴訟や訟務への対応というのが出てきますが、小さい団体はなかなか容易ではありません。そんな簡単にできるわけはないと思います。そこで、課題への対応もいろいろだろうということで、56ページから、単独で何ができるか。それはなるべく頑張ってもらうこととして、66ページから、外部の組織や人材を活用しないといけないだろうと。それから、もう1つの視点は、69ページから、自治体間の連携・協力が大事だろうと、それぞれ書いております。

 こういった対応方策について、138 ページから資料12のほうに、もっと詳しい資料があります。本文のほうは、資料12のガイダンスをする形で書いていますから、自分の団体の悩みのジャンルに応じて読んでください。

 レジュメには、各団体に共通するであろう留意点を書きました。1つは、「政策条例化の企画力を自前で確保すべし」ということですが、これは実は、68ページに現物がございます。68ページ最後の行に書いた言葉を、もう一度レジュメで強調しました。どこの団体でも、限られた予算の中でいろいろな手段の組み合わせで条例制定の推進の体制をやっていくしかないのは当たり前のことです。その際、ギリギリ守るべきことを、お守りのようにまず考えて、その範囲ならいいよというふうに割り切るしかない。政策条例化の企画力は自前で維持していると。自分の団体にとって必要であれば、その企画力を向上させるということであって、そのほかのことはメリハリつけてやっていくしかないということの、改めての確認です。皆さんも現場でそう思っていらっしゃるでしょう。

 もう1つは、レジュメに「外部組織、有識者、共同組織と連携を」と強調して書きましたが、なにせ遠慮すると損です。例えば、66ページの全国研修機関への派遣ということを書いておきましたが、154 ページの下に詳細なカリキュラムを挙げておりますとおり、市町村アカデミーさんの法令実務研修は、いわゆる政策法務対応になっています。それから、ここに載せていませんが、自治大学校も平成15年度の立川移転から大きく変わっていくようです。第二部の課程というと指定都市を除く一般の市町村の職員が対象ですが、この課程に選択制を導入し、政策法務重点コースを設けると聞いています。そんなことで、全般に政策法務対応のカリキュラム見直しが進んでおります。

 それから、67ページに戻りまして、大学や研究者との連携ということがありますが、大学の先生に話を聞きに行くのもなかなか気持ちが緊張していけないかもしれませんが、最近はとにかく、大学が地域貢献に力を入れていらっしゃいます。それと、条例はもはや行政法や行政学の研究者にとってメインの研究領域になったと思えます。そういう状況がありますから、基本的に先方からも歓迎されるというふうに見て、どんどん訪ねていく。その際には、単に1人派遣するのではなく、プロジェクトで取り囲んだほうがいいというのは、先ほど言ったとおりです。

 自治体間の連携・協力ということに関して言いますと、このあと「彩の国さいたま人づくり広域連合」の取組状況の報告の中でご紹介いただくところでございます。

 以上で、「中間まとめ」のここをこのように読む、というのを終わりまして、もう1つのこの時間帯のテーマである、質問・相談についてです。レジュメで「セミナーにあらかじめ寄せられた質問について」と題しました。参加申込のときに23件質問が来ました。順次、お答えできるものはお答えします。

 まず、条例の規定内容に関わるものが13件ございました。

 質問1番は、「分権社会における自己決定・自己責任を果たしていく先進事例を」ということですが、先ほどからの資料2などを見てください。

 質問2番は、「都道府県条例で市町村に関して規定することの可否、規定できる事項等について」ということでございますが、午前中のお話にもありましたし、基本的な条文で言いますと6ページ以降のところに戻りますが、国の関与について制度説明をしています。そして、これは国の話だけに見えてしまったかもしれませんが、6ページの中ごろに書いたように、都道府県と市町村の関係もほぼ同様になっています。条文を見ていただくとわかりますが、例えば、このページの下から4行目に掲げた「法定主義の原則」、地方自治法第245 条の2などは、都道府県と市町村の関係にも完全に適用されております。そこで、そういった条文を手がかりにしてもらいますが、第245条の本文に、関与のルールの適用除外があることは注意してください。つまり、「自治体が固有の立場でなくて、民間と同じ立場で対象となる行為」などは除外されております。

 それから、先ほど来、「事務処理の特例」の説明をしているわけですが、逆に言うと、「事務処理の特例」という形以外で、法令の根拠なしに市町村の事務を都道府県条例で規定して義務づけるということはできないというふうに解されております。この点も留意してください。

 質問3番は、「ある政策のために県が独自に条例を制定して、すぐに事務処理特例条例で市町村に権限移譲することはいいか」ということです。午前中に斎藤先生のほうから、だいたいOKだという返事が出ましたので省略しますが、ただ、県が条例で創設した事務のすべてを県内の全市町村に移譲するということは、制度として予定されていないと言われておりますので、そこは気をつけてください。その他の問題は、具体的な形で相談コーナーに寄せてもらったほうがいいです。

 質問4、5番は、「条例の制定過程への住民参加」についてのお尋ねでした。これは64ページでニセコ町の取組を紹介しております。具体的な疑問があれば、相談コーナーに寄せてもらったほうがいいと思います。

 質問6、7番は、「パブリックコメント手続条例」と「電子行政手続条例」です。いずれも、この後の、横須賀市の取組状況報告の中でご紹介をいただきます。

 質問8番は、「保育所民営化のために条例整備は必要か」というお尋ねがございました。一般論としては、「公設民営」の場合は、公立保育所は公の施設なわけですから、設置及び管理に関する事項は条例で定めなければなりません。あとで地方自治法を読んでください、そう書いてあります。

 ただ、民間事業者に対して「管理」に当たらない業務を委託するというようなことはあり得るのですが、その場合はどうなのか。これは条例事項にならないわけです。何が管理に当たるかが問題になりますが、PFI事業に関する政府の通知文書でたまたま出てきた表現を借りますと、例えば、自治体が管理責任や処分権限を留保した上で、あらかじめ何か基準を定めて、それに従って定型的な行為を事業者に任せる場合。あるいは、全くの事実上の行為ですと言えるものが保育所の業務についてあるのなら、それはPFIの事業であろうがなかろうが条例の対象外ということになるのでしょう。そういう場合に当たるかというのは、よくご判断いただきたいというふうに思っております。

 いまのは「公設民営」のケースですが、もう一方で「民設民営」ということがあり得ます。民設民営の保育所については、設置者との関係で補助金交付要綱などの問題の対応はあるでしょうけれども、特に条例事項はないと考えられます。ただ、当たり前の話ですが、ある保育所を公設から民設へ移行するということになれば、「公の施設の廃止」という意味での条例事項が出てくるということですのでご注意ください。

 質問9番が、PFIの導入についてことですが、PFIはいろいろな方式があり得ますから、具体的な疑問点を相談コーナーに持ってきてください。

 質問10番は、「自治基本条例の考え方と必要性」ですが、先ほど言いましたように、自治体の理念条例のグループは今回取り扱っていないので、このあとの横須賀市の取組状況の中で、まちづくりに関する基本条例制定を目指す目的や背景のご紹介をいただくということで、ご勘弁いただきます。

 質問11番は、「違法広告看板に対する自治体の強い姿勢を示したい」というもので、1点だけを規制することになる条例制定はどうかという質問です。一般論で言いますと、目的に則した合理的な方法で規制が行われるということであれば、結果として規制の対象が限定されても差し支えないと思います。しかし、目的に則した合理的な方法かどうかということを検討するためには、具体的な状況を明らかにしてもらって質問してもらったほうがいいです。

 質問12番は、「社会福祉協議会を個人情報保護条例の実施機関に含めてよいか」、また、「住民票などの個人データを社協と共有してよいか」というお尋ねでした。一般論としては、社会福祉協議会は独立の法人ですから、実施機関に含めるのではなくて、個人情報保護のため必要な措置を講ずべき旨の努力義務を課すにとどめるということが妥当だと思っております。それと、個人データの共有については、個人情報保護条例に一般的に定められております「収集の制限」だとか、「目的外利用・提供の制限」に該当し、これに対する例外とするだけの合理的な理由もないでしょうから、適当でないというふうに申し上げておきます。

 質問13番は、「法定外公共物の管理条例、普通河川条例、認定外道路に関する条例制定の注意点」ということです。この分野はいろいろな関係図書が出ていますので、それをご覧いただくとともに、先ほど言いましたように法定外公共物はもはや条例の宝庫になってしまったので、これはお互いに相談し合ってやってみてもらえませんでしょうか。

 以上が条例の内容に関するものですが、残りの10件が、条例制定の体制整備のお悩みです。

 質問14番が、条例のデータベース化やホームページの掲載状況、条例審査や訴訟対応体制の状況、そのようなことのデータが欲しいということでしたが、「中間まとめ」の124 ページ以降の資料10と、132 ページ以降の資料10−2にまとめてありますから後ほどご覧ください。

 質問15、16番になりますが、条例制定能力を向上させる方法一般について教えてほしいというのが2件ですが、これは、56ページ以降の「自治体単独での対応」の「人材の育成・確保」というところを参考にしてください。お尋ねの趣旨からは特に、56ページ下の横須賀市の事例や、58ページ上の北海道と熊本市の事例、59ページ上の福岡市の事例などが参考になるでしょう。

 それから、質問の17〜19番が、組織体制の在り方一般に関するものが3件です。これは60ページ以降の、「法務に関する組織」のところを参考にしてください。お尋ねの趣旨からは特に、60ページ下から2つ目の埼玉県の事例や、61ページ中段の横須賀市の事例、62ページ一番上の富山県の事例、63ページ下の福岡市と岸和田市の事例などが参考になるでしょう。

 質問20番は、政策法務を研究している大学との交流や、政策アドバイザーの指導を受けたいということですが、66ページ以降の「外部組織・人材の活用」を参考にしてください。お尋ねの趣旨からは特に、67ページ上のにいがたまちづくり学会と木更津市の事例、それから、同じページ下の三郷市と茅野市の事例が参考になりそうです。

 質問最後の3件は議会関係です。全国議長団体3団体から資料を提供いただきまして、その情報をベースにお答えいたします。

 質問21番が、「議員による政策立案に際しての議会事務局の役割はどうか」と、基本からお尋ねがございました。これは、全国市議会議長会さんの都市行政問題研究会が、平成10年2月に報告書をまとめています。「地方分権と市議会の活性化」に関する調査研究報告書です。これを読みますと、「議案の修正、議員提案、法令等の解釈などについて、議員に適切な助言ができるような調査体制等の整備が今後ますます重要」というふうに指摘をしていらっしゃいます。その具体的な方策としては、専門の課や室を整備する。あるいは、担当職員を育成するということも大事ですし、また、議会事務局が独自の調査テーマを持って、定期的にレポートを出していくということなどを提案しておられます。今回の「中間まとめ」で言うと、60ページの一番下に三重県議会事務局の事例をつけていまして、これも参考にしていただけるのではないでしょうか。

 質問22番が、「地方自治法第96条第2項に基づく議決事件の追加の状況はどうか」ということです。議決事件の追加について、都道府県については、平成11年7月1日現在で23団体で行われています。都市については平成9年末現在で68団体で行われています。68団体で総件数は149 件ありました。1市当たり2件余りです。都市分の内容を見ますと、「職員の定数・分限」とか「人事・公平委員会等の証人実費弁償」とかの組織関係のものが多いのですが、そのほか、「姉妹都市提携」7%、「市民憲章」6%などとなっています。町村全体のデータはなかったのですが、一例として言いますと、市町村の「基本構想」は地方自治法の第2条第2項に基づく議決事件になっていますが。それだけではなく、そこから下におりて「基本構想」に基づく「基本計画」も議決事項に追加したところがあります。これは福島県の月館町など4町村で追加していると聞いております。そういえば、三重県でも今年3月、県行政に関わる基本的な計画を議決事件とする条例が議員提案で制定されたところです。

 最後の質問23番は、「議会主導による条例の制定状況はどうか」。議員提案の条例についてのデータを申し上げますが、都道府県全体のデータはありません。都市についてですが、平成8年の1年間に、38団体で58件が制定されております。また、町村では平成11年度に審議された条例案について、町村長提案が1町村当たり21.5件あったのに対して、議員提案は1町村当たり0.7 件という形でございました。

 それで、議員提案条例の大半は、委員会条例だとか、そのような議会内部に関する条例ですが、それ以外の内容で成立した条例について見ますと、都道府県では平成11年の上半期で20件ありました。宮城県、三重県、鳥取県で4件ずつありましたから必要でしたら聞いてみてください。それから、都市のほうでは平成8年に4件あります。先ほど引用した報告書では、「ダイオキシンを少なくし所沢にきれいな空気を取り戻すための条例」の制定経過が紹介されていましたからご覧ください。

 以上、質問の交通整理をさせていただきましたが、レジュメでは、「分権ネット」の「条例研究室」の中の「相談コーナー」に来てくださいと書いております。このセミナーの前に寄せられた質問でお答えした相談は13件しかなかったのですが、今回の質問で一挙に増えていますからこれからいっぱい来るのでしょう。

 このコーナーでの対応方針だけ言っておきますと、いま申し上げた質問の交通整理と同じです。つまり、条例制定・改正の相談を持ってきてもらっていいのですが、法規の文理そのものから言えることや、判例、通説から導かれる事実を発見したときは、それをお伝えします。しかし、自治体として詰めるべき政策が詰まっていないゆえのお悩みで持ってこられることもあります。そのときは、申し訳ないけれども、この事業は当方から政策判断の善し悪しを言うという場ではございません。ですから、原則として、「この点を詰めて判断してください」ということでお返しするというやり方になります。そうではあっても、たまたま当本部が承知している参考文献があれば提供しますから、それで検討が進むことも多いようですが。基本的には、せっかく今回の資料3で詳細な条例集をつくりましたので、制定団体に問い合わせるなりの対応をしていただいたほうが早いかなと思います。

 本日は初めてのセミナーでございましたが、逆にここまでの話で問題が解決したというよりも、どちらかと言うと、さらに新たな疑問が派生して湧いてきたかも知れません。どんどん相談コーナーをご利用ください。

これまでの相談事例にはなかったことですけれども、条例制定上の具体的な問題について、事務局から聞くというよりも行政法分野、行政学分野の研究者の識見を得たいものだという場合もあると思います。その場合には、その旨をおっしゃっていただければ、私どもの研究会所属の先生が都合がつくようでしたらお取り次ぎいたします。

 さて、時間となりました。本日のテーマである「自治体政策と条例―いま何ができるか」については、午前中の基調講演でも感じられたと思うし、これからの取組状況の報告でも感じられると思いますが、各自治体が判断するところが多いです。頑張ってください。以上です。

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