条例と法令の関係をめぐる検討の経過

(1) 地方分権推進委員会第1次勧告(平成8年12月20日)
○ 地方公共団体の事務に関する法律と条例との関係
  地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができる。(憲法第94条)。この意味において、地方公共団体の条例制定権には限界があるが、具体的な条例の規定が法律に違反するかどうかは、「両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない」(最判昭和50年9月10日、徳島市公安条例事件)ものであり、地方公共団体の事務につい て、法律との関係において条例制定が制約されるかどうかは、個別の法律の規定によるほか、法律の趣旨、目的などにより判断されることとなるものである。
  こうした法律と条例の関係についての考え方は、国と地方の新しい関係の下においても維持されるものであるが、具体的な法律と条例の関係に係る判断を迅速かつ的確に行わせる仕組みを検討する必要がある。(第1章、T、2(3))

○ 条例制定権(第1章、V、3(1))
  自治事務(仮称)については、法令に反しない限りすべての事項に関して、条例を制定することができる。この場合において、各事項について条例の制定が制限されるかどうかは、法律又はこれに基づく政令の明示的な規定又は趣旨、目的などによる。
  法定受託事務(仮称)については、法律又はこれに基づく政令により明確に事務の範囲を制定した上で、地方公共団体に委託されるものであるので、国の法律又はこれに基づく政令により事務を処理することが原則である。法定受託事務(仮称)の処理について、地方公共団体の条例に委ねる必要がある場合には、法律又はこれに基づく政令により、明示的に委任する必要があるものとする。

(2) 地方分権推進計画(平成10年5月29日閣議決定)
○ 条例・規則制定権(第2、3(2)ア)
  地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて地方公共団体の事務に関し、条例を制定することができる。
  なお、法定受託事務については、国の法律又はこれに基づく政令により事務を処理することが原則であるので、地方公共団体の条例にゆだねる必要がある場合には、法律又はこれに基づく政令により明示的に委任する必要があるものと解される。
  地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。

(3) 第145回国会衆議院行政改革に関する特別委員会(平成11年5月26日)
   改正後の地方自治法に規定する「法定受託事務」に関する条例制定について、野田毅自治大臣は、衆議院行政改革に関する特別委員会において、次のように答弁している。
○ 野田(毅)国務大臣 今回の法案におきまして従来ございました機関委任事務制度が廃止されることになる、そして地方団体で処理する事務は、この結果、いわゆる自治事務と法定受託事務と二つに分類をされるというのは、そのとおりです。
  そこで、今回の改正案の結果、地方自治法第14条第1項の規定で、法令に違反しない限りにおいて、自治事務であると法定受託事務であるとを問わず、条例制定権の対象になるということなんですね。この場合、条例制定の制約となるのは、その条例が規定する内容に関係する個別の法律の規定及びその解釈ということによるわけですが、いずれにせよ、したがって、法定受託事務につきましても、法令の明示的な委任を要さないで条例を制定できるようになったということであります。
  ただ、実際には、法定受託事務については、法律や政令などでその処理の基準が定められている場合が多いわけでありまして、結果的に、条例を制定しなければならない余地というのは少なくなるであろうということは想像されます。

(4) 地方分権推進委員会意見(平成12年8月8日)
○ 法令における条例・規則への委任のあり方(第2章)
  法令において、その具体的な内容等の一部を地方公共団体の規則等に委任しているものがあるが、機関委任事務制度の廃止に伴い、規則等に委任することの合理性を改めて検討すべきことを、当委員会より政府に対して問題提起したところ。
  問題提起を踏まえ、政府は、個別の法令により権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方公共団体の法規に委任する場合にも、規則等ではなく条例に委任することを原則とし、例外を限定的とするとの考え方をとりまとめた。
  これらの基本的な考え方に基づいて、政府は平成13年の通常国会に所要の法律案を提出することを基本として改正作業に取り組まれたい。