第10回地方分権時代の条例研究会の概要



1 産業廃棄物処理施設と住民参加について
(1)自治体での取組み状況
  ア 産廃処理場の設置推進

  ○ 産業廃棄物処理施設は、本来民間業者が設置するものであるが、なかなかできないこともあって、県が事業主体にかなり関わって設置を進めている。地元との事前調整は、手続きは民間事業者の場合と同様であるが、県が関わるということで、事前の説明などは丁寧にでき、変更も容易にできる利点がある。計画策定段階での事前調整としての住民参加をそれなりの実績を作りながらやっている。

  イ 施設の位置決定の現状

  ○ 民間事業者による施設設置では位置決定への住民参加がない。位置が決定して、施設についての周りに及ぼす環境、取付道路とかについて参加、調整していくのが実情。このため、地域では、絶対最初から嫌だという人と、条件的にこういうところまでという人がいて、住民説明会を開いても、二分化されていく。
  ○ 一般廃棄物の埋立施設でさえも、位置を決めるところが一番問題になる。住民同士の中でどっちだということになる可能性が大。迷惑施設の位置については、今までに住民参加で決めたことは少なかった。
  ○ 市内に空き地がなく、市役所の隣りに、ごみ焼却場を造った例があるが、これは、徹底して、最初から情報公開、パブリック・コメントの手法で全部情報を提供して、住民と位置まで決めた。住民参加で位置を決める局面もある。
  ○ 公共関与型の産廃処理場の位置決定の問題は、住民参加手続を経て、行政が決めるが、廃掃法自体が許容している本来型の業者が土地を持っている場合には、位置の決定というところに住民参加はありえない。その場合には、事前規制、紛争予防などに関しての住民参加の仕組みを作ることになる。

  ウ その他

  ○ 県が主体となって産廃処理施設を造るとした場合、設置予定地の市としても、基本構想とか、マスタープランがあり、住民に対する福祉の増進ということもあるので、県に対して、どう内部調整をして、どのような意見を付すべきかという問題がある。

(2)紛争予防調整条例の意義・課題

  ○ 事前規制としては、紛争予防調整条例のような住民と事業者との事前調整にも合理性はあるが、設置許可の要件の中に住民参加を規定する(トラブルが生じたら裁判所の判断を仰ぐ)方法との二通りあって、方法的には後者の方が理想型と思われるが、実際の紛争解決では、前者にも、行政がうまく紛争解決のあっせんをしていることもあり、かなり機能する部分がある。
  ○ 事前規制としての規制条例、紛争予防調整条例のほか、設置についての適正手続を担保する条例の3つの方向がある。最終的には何らかの施設が必要であるから、この3つを組み合わせた条例ができないかと考える。
  ○ 国レベルでの法律の規定、規制水準で大丈夫だと言われても、住民の参加がないと、なかなか納得が得られない。紛争が起きると仲介者として行政が出てきやすいような仕組みをつくるという形がある。もう一つは、合意までいかなくても、何か手続きを踏めば、国の方で実体的な審査・議論をやっているから大丈夫だと言い続けるよりは納得性がある。
  ○ 住民参加は、権限があるところ、裁量が多いところで使われてこそ意義がある。民間事業者が申請してきたものに対して覊束的な許可処分をする場合での住民参加は難しいが、事前手続ということならば、住民参加をやることに意義がある。
  ○ 紛争予防調整条例は、事業者と住民を対立軸に置くことで、行政を中立化させている。そうしないと行政はどちらにつくのかを迫られるが、それでは調整にならない。住民参加について、行政がどういう立場をとるのかで、条例の制度設計が相当変わる。
  ○ 自治体には、手続きにおいて地域の事情を考慮した要綱や条例のノウハウがあるから、うまく法定受託事務において、法執行条例が作れればいい。考え方としては、法律に則って逆に条例を作るということもある。

(3)住民間で意見対立があった場合の行政のあり方
  ア 住民参加

  ○ 住民参加は手続きであって、位置決定は、行政が専門的な観点から責任を持って決定することにならざるを得ない。それぞれの立地候補地におけるいろいろな条件を意見集約した中で、どちらが適当なのというのは行政が責任を持って決めることになる。
  ○ 行政がある決定をすると、当然いろいろ紛争が起きてくる。それをある程度回避しながら、住民の意見を聴きながら、時間をかけて形を整えていかないといけない。
  ○ 大事なのは、行政が公益的、専門的観点から、地元住民の意見とは反対の決定をしなければならない場合があるということ。この決定を住民自治、民主主義の中で認知させていく手法として、行政が前面に出て説得するという手法と、行政に賛同する立場の住民を動員して、他の住民を同心円的に説得していく手法がある。
  ○ 動員なり参加なりの手法として、こういう手続きであるということをあらかじめ住民に知らせておく必要がある。それだと説得力がある。

  イ 住民投票

  ○ 利害対立が反映するような住民参加ということなら、都道府県の権限に関わる事務について、ある市町村だけの範囲での住民投票ではなく、広い範囲での住民投票を仕組むことができないか検討すべき。

2 河川工事と住民参加について
(1)早い段階からの住民参加について(パブリックインボルブメントを中心に)
  ア 住民のインセンティブ

  ○ パブリックインボルブメント(以下、「PI」という。)は、参加というより動員のイメージが強い。構想段階のような早い段階からの住民参加について、住民側のインセンティブと行政側のインセンティブは何か。早い段階から情報を提供して住民の参加を求めても関心がなく、具体的な立地場所が決まってから、住民の関心が高まる。早めても住民が参加してくれなければ、具体的になった場合、もう一度同じことをしなければならず、今まで説明してきたのにということは通じない。
  ○ PIは、まだ、皆んなで議論してもらいましたよということを前面に出している試みの最初の段階だと思う。アカウンタビリティということもあるが、まず形を整えることが大事という発想で、最後は裁判で逃げ切ろうと思っているのではないか。今後、PIをどのように実際の課題解決に繋げていくかは、正にこれからと思う。
    PIの導入と根幹は同じと思うが、例えば、社会資本整備審議会河川分科会での議事の進行方法についても、今までは、事務局のシナリオ中心でその説明時間が全体の7割くらいを占めていたが、今年からは事務局が最初の10分間説明し、後は委員の自由発言になった。また、中間とりまとめについても、起草委員を3名くらい募って、それを基に議論するようになった。
  ○ 構想段階で住民参加を実施する場合、行政にとってのインセンティブは分かるが、住民にとってのインセンティブは余りないのではないか。住民が関心を持って参加しなければ、形式的な住民参加では意味がない。川では親水性や小動物が議論の対象となるときに、住民から反応が返ってくるといった状況ではないか。また、住民が関心があるようなものは、国の事業とはいえ、かなり自治体も関与している。
  ○ 事業の特性によって、住民参加の時期は、ここだというのがあるのではないか。例えば、道路の場合だと、それはルート決定ということになるのではないか。
  ○ 早い段階から住民の参加を求めることは、行政手続法の議論の中でも、計画策定段階での住民参加(手続的規制)の必要性が言われていたし、今後、重要となってくる。制度の仕組みとしては、早い段階から住民の参加を求めるべきであると思うが、住民がどの段階から関心を示して参加するかという問題(住民のインセンティブが働く時期)は、事業や行政分野でかなり異なるのではないか。一律の仕組みを作って、それがきちんと働くかどうかは、良く分からない。
  ○ 道路計画合意形成研究会提言には、構想段階や計画段階について提言されているが、当該道路の必要性の有無の段階からの住民参加や、道路の完成後の住民参加という発想が必要ではないか。どうやって作るかではなく、もっと前の段階からの住民参加を考えても良いのではないか。それは、基本計画とか基本構想とかの問題になるだろうが、基本条例の中で位置づけられるべきであろう。

  イ 行政のインセンティブ

  ○ 公共事業は、地元要望があることが前提となっている。市町村レベルでは、川辺川のケースでもダム建設促進協議会がつくられている。問題は、その協議会に代表されていない、意見が異なる住民がいることである。今までは、首長と議会、町内会長を押さえれば良かったが、それ以外の住民を押さえなければ、公共事業が進まないということが、行政側が早い段階からPIをするインセンティブではないか。
    従来型では、通常、市町村や町内会長を押さえることによって、事業化段階になっても、地域内の異なる意見を押さえ込むことができるという効果が期待できた。一方、住民委員会に参加した住民が原案を作成する手法では、当該参加者が参加しなかった人達も説得するという作用が期待できる場合に、行政側のインセンティブが成り立つということになるのではないか。

(2)個別課題(個別計画)への住民参加について

  ○ 住民から意見が出やすいのは、各論(個別課題)段階なので、各論段階で出された具体的な住民意見をもって総論に戻って、また各論にいく、そういった手戻りがあり得ることが、重要ではないか。大枠から入って、段々と絞っていくことは、一見合理的なようであるが、人間の感覚からは非合理的で、個別から全体の方が、プロセスとしては住民の波動に合う。
  ○ 計画行政は、最初に構想をつくる段階で、住民参加によって、具体的な個別論を全部積み上げている。
  ○ 住民は個別のことでないと意見が出てこない。マスタープランの素案づくりの前に、全世帯向けの市政だよりに葉書を折り込んで、行政が実施して欲しいことを一言でも良いから書いてくださいという意見募集を行った。結構集まったが、個別の話しが中心である。それを集約することにより、結果的に、住民の意向を汲んで素案をつくったということである。問題が起これば、計画段階から住民意見を聴かなかったのかといわれるが、実際に計画段階から住民の参加機会を設けても、どの程度意見がでるのかなという疑問はある。もしかすると、何も意見がでない可能性もある。
  ○ 問題になったときに、計画段階まで戻る余裕があるかが重要ではないか。個別事業者が絡むと絶対戻れなくなってしまう。そこがネックとなって、紛争を悪化させる要因ともなる。
  ○ どこまで戻して良いかという問題もあって、やると決めたらやるということも、法的安定性の観点から大切となってくる。
  ○ 地元同意の問題だけでなく、専門性についても、行政より住民団体等の方に情報がある場合もあり得る。貴重な植物群があるとか、河川改修の手法にしても、過去の洪水での経験とかあり得る。そうすれば、抜本的な手戻りをしなくてすむことはあり得る。ただし、計画の段階でどれくらいの住民の参加が見込めるかという問題はある。

(3)河川をめぐる住民参加について
  ア 河川の特異性

  ○ 法律では、河川整備基本方針を策定し、社会資本整備審議会に諮り、その後に河川整備計画を策定するという、上下関係が読みとれるが、白川水系(検討事例の1−イの4頁参照)を例にとると、まず、河川整備計画の方が河川整備基本方針より先行して5年間くらい議論していて、それが大体まとまりそうになった段階で、地元の河川の専門家の意見を聴きながら、河川整備基本方針を国として策定した。河川の特性、個性があり、地域抜きにした急激なことはできない。
  ○ 川には、流域文化が成り立っており、地域特性をもっともっと大事にしなければいけない。

  イ 鶴見川での取組み

  ○ 鶴見川は全国の河川のモデルである。国が、流域住民や流域自治体を巻き込んで、先進的な取組をしている。鶴見川は、総合治水の発祥の川でもあるが、今度は環境の問題も含めてマスタープランづくりをしている。
  ○ 神戸市の住民参加で良く言われるのが、真野ショウウインドウなのか、真野モデルなのかという問題がある。住民参加で神戸市の真野は先進的であるという場合に、真野をモデルに神戸市全体に更に展開していく話しと、真野はショウウインドウであって、ここでは住民参加をするが、他では開発一本槍という、2つの見解がある。河川において、鶴見川はモデルになっているのか、ショウウインドウになっているのか。吉野川のように、揉めて一旦白紙に戻して今後の方針をどうするかといったところで、モデルとして使えるかどうかが、現場としては関心がある。
  ○ 基本的には、モデルだと思う。全国的に広げていくべきものである。
    吉野川は自然河川だから、都市型河川とは違う。流域自治体で決定すべきで、流域ごとに、広域連合をつくって、国も入って河川の管理をするようなことを検討する必要があると思う。

  ウ 下水道と河川の連携

  ○ 都市型水害をどうやって回避するかについて、下水道と河川を連携させる話がある。これは河川の整備が遅れている場合、降雨時に下水道の排水施設のポンプを止め、川に水を出さないことにより、洪水を防ぐという手法である。排水ポンプを止めるのは自治体の下水道管理者の権限であり、実際に流域住民が下水道管理者に排水を止めて欲しいと要請している事例がある。排水ポンプを止める基準や河川管理者と下水道管理者の連携方法が課題となっている。

(4)住民投票について

  ○ 河川の場合には、上流と下流の問題があって、上流ではダムは不要かもしれないが、下流では必要かもしれない。住民参加、住民投票をするのであれば、流域全体で実施しないとおかしい。その段階では、多額の経費を投入して治水能力の高いダムを造るのか、もっと小規模のダムを造って、たまには浸水するかもしれないという究極な選択になるので、その意味では、住民投票に馴染むところもあるかもしれない。
    道路の場合、高速道路であれば通り過ぎるだけなので、高速道路があって得するだけとは限らない。一方で、道路は繋がっていることに意味があって、全体の道路計画の中で自分のところは要らないという話しではないから、住民投票に本当に馴染むのか馴染まないのかということはある。
  ○ 住民投票はイエスかノーかであり、馴染むか馴染まないかという問題があるので、住民投票の実施を決定する手続をどうするかが重要である。例えば、議会との関係において、提案権を首長だけとするのか、議員提案もあるのかとか、実施の決定に際して議会の議決を必要とするのか、首長単独で決定できるようにするのかなど、様々な組合せが可能あり、個別性があると思う。
  ○ 国直轄事業の広域(複数自治体)に関わるものについて、現在では、特に事業に反対の市町村が、良い意味でも、悪い意味でも、政治的に利用している例が多い。そのような場合に、都道府県レベルでの住民投票を考えるとか、あるいは、国が都道府県レベルで判断できるような仕組みを持たせることについては、どう考えるべきか。分野によっては効くのか、むしろ対立が激化するのか。
  ○ 広域に関わるものの住民投票の問題は、住民投票プロパーの問題か、政府間関係の問題一般なのか、仕分けが難しいと思う。例えば、河川について、どの範囲で住民投票を実施すれば良いかということは、住民投票の問題ではあるが、住民投票をしない場合であっても、流域で住民投票すべきだという考え方があるとすると、当該流域で広域連合をつくって、決めるしかないということになる。住民投票プロパーの問題以前の意思決定の単位の問題として、間接民主主義でも、実は同じ問題があるのではないか。
    米軍基地のような、例外的なものだけ、拒否権が認められず、強行されるのが実際の運用ではないか。一方、河川の場合は、地元自治体が反対したら、強行されないのではないか。

3 自治事務(総合計画策定)への住民参加について
(1)総合計画策定への住民参加の状況(自治体事例)

  ○ 三鷹市(検討事例@): 市民会議が「市民プラン」を作成し、市に提言、市はパートナーシップ協定に基づき、市民提言を最大限、基本構想・基本計画に盛り込んだ。
    三鷹市の「みたか市民プラン21会議」の事例が報告されているが、歴史的経緯により可能となったもので、他市でモデルにすることが可能かという心配はある。まず、三鷹市には、コミュニティセンターを6住区つくっていて、当該センターは住民が管理運営を行っている。住民の自主的な組織が20年以上運営してきた成果がある。また、今から10年以上前にICUが中核となった「まちづくり市民委員会」でICUと当該6住区とで検討を行っており、その上で「みたか市民プラン21会議」を発足させたという歴史的経緯が背景としてある。
   ※ 市民提案による策定の成果:行政の発想では出てこないような提案が基本計画において事業化されている。
  ○ 文京区(検討事例A): 十数回にわたる総合計画審議会審議を経て審議会自体が基本構想素案策定を行っている。また、実施段階において、基本構想推進会議が計画実施の進行管理等を行っている。
  ○ 横須賀市: 市民の意見を聞くため、「一万人アンケート調査」、「総合計画の出前トーク」(町内会単位)、「あすの横須賀円卓会議」(公募審議)という3つの方法をとり、その後、基本構想については総合計画審議会に諮問する形をとっている。
  ○ 福岡市: 全世帯アンケートを実施、その結果を基に素案策定し、総合計画審議会に諮問、その原案をパブリック・コメントにかけ策定している。
  ○ 神奈川県: 総合計画審議会、パブリック・コメント等は一般的な制度として実施している。
  ○ 日常の行政窓口でのトラブル、苦情、意見等を集約して、計画に反映させていくことも住民参加の一つの手法である。
    また、計画策定時だけではなく、毎年、同時期に同項目でのアンケート調査を実施し、住民の意見の経年変化を見ていくという方法もある。
 

(2)実施段階への参加、評価への住民参加の状況(自治体事例)

  ○ 横須賀市: 試行的に行政評価制度を導入したところであり、事業評価は行政で実施、政策評価は市民委員も入れて実施していく予定である。
  ○ 神奈川県: 総合計画に位置づけられた個別計画の進捗状況をHP等で公開し、それに対する県民の意見を毎年まとめるという作業は行なっている。

(3)現状と課題

  ○ 市区町村の基本構想の策定は地方自治法2条4項により議決を経る自治体計画であるが、基本計画、実施計画については、首長側に執行が委任されることになる。
  ○ 総合計画の構造(3層制、2層制など)、住民参加の手法等については、複数の標準的なスタイルはあるものの、比較的アドホックに実施されている。
  ○ 自治体計画は3層構造、2層構造などまちまちであり、策定手続等、計画過程において、どこに住民参加を入れたらよいかも異なる。



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