まちづくり条例と「協定」

 協定手法は、公害防止の分野で先行しており、その後、他の分野でも使われるようになっている。理論的蓄積も多くが公害防止の分野にあるため、これを参考に、まちづくり条例一般における協定手法について考えたい。
 なお、公害防止協定は、行政−事業者間又は私人(住民)−事業者間で、相互の合意に基づいて公害防止のために事業者がとるべき措置について取り決める合意を指すとされている。

1 協定が用いられる主な理由
 (1) 行政にとってのメリット

    条例による一律・画一的な規制に対し、協定によれば、事業者との交渉を通じて内容を決めることができるため、個別的状況に適合した措置を講ずることが可能となる。
   ・  法律で求められている義務よりもさらに厳しい要求を、必要に応じて個別的に課すことができる。
   ・  条例により公的規制をかけることができるかどうかについて争いがある場合にも、活用できる。
 (2) 事業者にとってのメリット
    公害防止・環境への配慮の意欲を内外に示して、地域住民に対し企業のイメージアップを図る効用をもつ。
 (3) 住民にとってのメリット
    行政指導に比べ、効果の点で安心度が高い(書面に事業主の義務を規定。不履行の場合には民事的執行の可能性)。

2 法的性質

  協定の法的性質については、法的に履行を強制されることがあるとする考え方(契約説)が多数説とされる。なお、法的に履行を強制されることはないとする考え方(紳士協定説)もある。
 ○ 協定全体を紳士協定あるいは契約と見るのではなく、条文ごとに法的性格を判断すべきであるとされる。
 ○ 事業者の経済的自由の制約をもたらすことになっても、その同意がある限りは、法令の上乗せ・横出し的内容の行為を求めても違法にならず、法的拘束力が発生する。
 ○ その前提としては、@合意の任意性、A協定の目的の合理性、B手段の合理性、C求められる行為の具体性、D強行法規への適合性などが必要である。
 ○ 法令の義務内容を緩和するというように、強行法規に違反することはできない。また、公序良俗に反する内容を規定することもできない。

3 協定について条例に規定する場合の留意点
  主に行政−事業者間の協定の場合について、次のようにいわれている。

 ○ 条例によって、相手方に協定の締結を強制したり、さらに進んで、条例により協定の内容を定型化し、これを押しつけるようなことは適切でない。
  ・ 定型的な規制であれば、条例でするのが常道である(協定方式には、実質的な義務の賦課を、条例によらずに協定に逃避させるという危険性があるという指摘がある。)。
  ・ 契約的性質をもつものである以上、事業者に締結を強制することはできない。
 ○ 協定の公正を期すためには、むしろその締結の過程(具体的には、資料の公開、反論の機会の付与、民意の聴取など)を公正なものとすることが肝要である。

4 協定の実効性確保

 ○ 根拠がその契約的性格にあるので、協定の実効性は、民事訴訟を通じて確保していくこととなる。
  ・ 義務内容の具体性があれば、民事執行法に基づく強制も可能である。(高知地判昭和56.12.23)
  ・ 協定に違約金を規定しておくことも可能である。
 ○ 協定の定める義務は、法令により命ぜられたものではないから、たとえ協定中に「命令」という文言が使われていても、行政代執行法によることはできないし、義務違反に対して刑事罰を科すこともできない。

参考文献
北村喜宣「自治体環境行政法」(良書普及会,1997年)
原田尚彦「環境法」(弘文堂、1994年)
芝池義一「行政法における要綱および協定」(「基本法学4」岩波書店,1983年)