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足立区高齢社会対策基本条例(平成12年3月31日条例第36号)

 二十一世紀は「高齢者の世紀」といわれ、高齢者像への問い直しが始まろうとしている。高齢化を人生の「機会の倍増」ととらえ、すべての区民がその機会を十分に生かす地域社会の形成が望まれる。
 しかし、高齢化の進展の速度に比べ、高齢社会に対応する環境や市場等の社会仕組みづくりは大幅に立ち後れている。特に介護は、すべての区民が共通に負う「高齢社会のリスク」として、緊急の課題となっている。
 新たに始まる介護保険制度は、自治体が保険者となり、介護を要する高齢者を世代を超えて支えるしくみとして創設される。区は、区民とともに、地域における最適なサービスの確保に向け努力しなければならない。
 また、高齢者を、社会的弱者としてではなく、高齢社会を支える一員として捉えることにより、高齢者の就業や様々な社会参加の条件整備、及びその潜在能力を社会に生かすしくみづくりを進める必要がある。さらに、高齢者を含めすべての世代がもてる力を出しあい、ともに支え合う地域社会の形成が必要である。
 ここに、足立区における高齢社会対策の基本理念を明らかにして、その方向を示し、区と区民が協働で高齢社会対策を総合的に推進していくため、この条例を制定する。

   第一章 総則

 (目的)
第一条 この条例は、足立区民一人一人が生涯にわたって真に幸福を享受できる高齢社会を築きあげていくために、高齢化の進展に適切に対処するための施策(以下「高齢社会対策」という。)に関し、基本理念を定め、並びに区及び事業者の責務等の方向を明らかにするとともに、高齢社会対策の基本となる事項を定めること等により、高齢社会対策を総合的に推進し、もって足立区の区民生活の安定向上及び経済社会の健全な発展を図ることを目的とする。

 (基本理念)
第二条 高齢社会対策は、次の各号に掲げる地域社会が構築されることを基本理念として行われなければならない。
 一 区民が生涯にわたって就業その他の多様な社会活動に参加する機会が確保される公正で活力ある地域社会
 二 区民が生涯にわたって地域社会を構成する重要な一員として尊重され、自立と連帯の精神に立脚して形成される地域社会
 三 区民が生涯にわたって健やかで充実した生活を営むことができる「健康寿命」を延伸させる地域社会
 四 区民が住み慣れた地域で安心して暮らし、必要に応じた適切な医療及び介護サービスが提供される地域社会
 五 高齢社会対策の推進が、持続的に成長する内需を作り出し、雇用と産業を活性化していく地域社会

 (区の責務)
第三条 区は、前条の基本理念に基づき、足立区における高齢社会対策を総合的に策定し、実施する責務を有する。
2 区は、次の各号に掲げる原則に基づき、前項の責務を果たさなければならない。
 一 低所得の高齢者等に留まらず、すべての高齢者を対象とすること。
 二 高齢者の自立の可能性に向けて支援すること。
 三 高齢者の選択と自己決定を尊重すること。
 四 高齢社会対策の実施にあたっては、原則として民間及び市場の活力を活用すること。
 五 経済的事情等で援助を必要とする高齢者に対して適正な援助を行うこと。
2 区は、高齢社会対策に関する調査及び研究を行うとともに、区民の意見を反映させて、基本的かつ総合的な計画を策定し、これを実施しなければならない。

 (区民の努力)
第四条 区民は、この条例の定めるところにより、高齢社会対策に係るサービスを等しく受ける権利を有するとともに、それに伴う適正な負担をしなければならない。
2 区民は、自ら健康を保持し、自己の能力の活用に努めるとともに、地域社会の一員として、豊かな地域社会の実現に努めなければならない。

 (事業者の責務)
第五条 高齢社会対策関連の事業活動を行う者(以下「事業者」という。)は、事業活動が地域社会と適切な関係を築くよう次の各号に掲げる責務を果たさなければならない。
 一 区民の選択と自己決定を尊重し、その尊厳とプライバシーを守ること。
 二 サービス提供のための事業者相互の連携強化等により、区民の総合的な満足度の向上に努めること。
 三 区民が的確にサービスを選択できるよう、自らのサービス事業の内容を公開すること。
 四 社会的に認められた市場ルールを遵守し、適正な競争を通じて、経営の健全化に努めること。

 (地域社会の努力)
第六条 区、区民及び事業者は、第二条に掲げた地域社会を構築するため、地域社会の構成員として互いに連携し、対等の立場で協働するものとする。
2 営利活動団体及び非営利活動団体は、地域社会におけるそれぞれの役割を認識することを通して、互いに連携し、協働するものとする。

 (国等との連携)
第七条 区長は、この条例の目的を達成するため、国、他の地方公共団体等(以下「国等」という。)との連携に努めるとともに、国等に対し、制度の改善その他必要な措置を講ずるよう要請するものとする。

   第二章 老人保健福祉計画

 (老人保健福祉計画の策定)
第八条 区長は、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)及び老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)に基づき、第三条第三項に規定する計画として高齢社会対策に関する総合的な計画(以下「老人保健福祉計画」という。)を策定しなければならない。
2 老人保健福祉計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
 一 高齢社会対策の基本方針及び基本目標
 二 施策の体系、達成すべき目標値等、前号の実現の方策
 三 前二号に掲げるもののほか、高齢社会対策に係る重要な事項

 (老人保健福祉計画の策定手続き)
第九条 区長は、老人保健福祉計画を策定しようとするときは、あらかじめ、別に定める足立区地域保健福祉推進協議会の意見を聴かければならない。
2 区長は、老人保健福祉計画の策定にあたっては、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に規定する介護保険事業計画との調和を図らなければならない。
3 区長は、老人保健福祉計画を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。
4 前三項の規定は、老人保健福祉計画の重要な変更について準用する。
5 区長は、老人保健福祉計画の進捗状況を足立区地域保健福祉推進協議会に報告し、点検、評価を受けなければならない。

   第三章 基本的施策

 (健康及び福祉)
第十条 区は、高齢期の健全で安らかな生活を確保するため、区民が生涯にわたって自らの健康の保持増進に努めることができるよう総合的な施策を講ずるものとする。
2 区は、高齢者の保健、医療及び福利に関する多様な需要に的確に対応するために、地域における保健、医療及び福祉の相互の有機的な連携を図りつつ、適正な保健医療サービス及び福祉サービスを総合的に提供する体制の整備を図り、並びにサービスを提供するそれぞれの事業者がその特性を生かし地域に貢献できるよう必要な施策を講ずるものとする。
3 区は、介護を必要とする高齢者が住み慣れた地域において、自立した日常生活を営むことができるようにするため、適切なサービスを受けることができる基盤の整備を推進しなければならない。
4 区は、家族介護の軽減を図るために、介護関連サービスについて介護保険サービス、介護保険外一般施策サービス、その他のサービス(以下「高齢者福祉サービス」という。)の最適な組み合わせが可能となるよう基盤整備その他の調整を図るものとする。
5 区は、介護保険外一般施策サービスについては、第四条第一項の規定により、区民に対し介護保険法に定める受益者負担率を基本とし、自己負担能力等を勘案して均衡のとれた負担を求めなければならない。

 (産業及び就業)
第十一条 区は、高齢社会の進展が地域社会の活性化につながるよう、高齢社会関連市場(以下「高齢者市場」という。)の形成を促進する。
2 区は、介護・医療業界のみならず、広く、建設、製造、商業等の各種業界に対して、情報を提供するとともに、異分野業界の交流を促進していくものとする。
3 区は、事業者による公正な市場ルールからの逸脱を防止するとともに、高齢者市場と地域社会の調整を図る。
4 区は、高齢者がその意欲と能力に応じて就業することができる多様な機会を確保するとともに、勤労者が長期にわたる職業生活を通じて職業能力を開発し、高齢期までその能力を発揮することができるよう、国等と協力して必要な施策を講ずるものとする。

 (学習及び社会参加)
第十二条 区は、高齢者が生きがいを持って豊かな生活を営むことができるようにするため、生涯学習の機会を確保するよう必要な施策を講ずるものとする。
2 区は、活力ある地域社会の形成を図るため、高齢者の社会的活動への参加を促進するとともに、ボランティア、非営利活動団体等の活動を支援するため、必要な施策を講ずるものとする。

 (生活環境)
第十三条 区は、高齢者が自立した生活を営むことができるようにするため、高齢者に適した住宅等の整備を促進するとともに、高齢者に配慮した公共的施設の整備を促進するものとする。
2 区は、高齢者が不安のない生活を営むことができるようにするため、高齢者の交通の安全及び利便性を確保するとともに、高齢者を犯罪、災害等から保護する体制を整備するよう必要な施策を講ずるものとする。

   第四章 顧客満足度向上支援

 (顧客満足度の向上)
第十四条 区は、高齢者福祉サービスについて受益者である区民の当該サービスに対する満足の度合(以下「顧客満足度」という。)の向上を支援するために、受益者である区民及びその家族等の組織化、標準契約約款の策定及び採用の勧奨、苦情等解決機関の設置、サービスの評価基準の策定・適用・公表、その他必要な施策を講ずる。
2 区は、顧客満足度を向上させるため、高齢者福祉サービスに関して足立区地域保健福祉推進協議会の点検及び評価を受けなければならない。
3 事業者は、顧客満足度を向上させるため、提供した高齢者福祉サービスを自ら評価し、又は事業者で組織する団体等による評価に基づき、必要な改善を行なわなければならない。

   第五章 雑則

 (説明等)
第十五条 区長は、この条例を施行するため、必要があると認めたときは、区民及び事業者等に対し説明若しくは報告を求め、又は必要な指導を行うことができる。

 (委任)
第十六条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、区長が別に定める。

   付 則
 この条例は、平成十二年四月一日から施行する。

(注) 原文は、縦書きである。